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サタンの誤算

117    サタンの誤算



「がっ!!?な、何だこれ……」


俺の意識の中に何かが介入してくるような感覚に襲われ始めてた俺は必死に頭を押さえながら苦痛を和らげようとした。しかし、悶えば悶うほど痛みは増し……内の中から直接話しかけてきた。


《 成功しましたねえ。これが悪魔の力です。悪魔の中でも上位に君臨する者は死んでも新たなる依り代を得ることで復活するのです。もちろん外見などは依り代本人と変わらず、ただ意識だけを私のものにしたのです。 》


「よ、依り代だと?ふざけるな……っ!!今すぐ俺の中から出ろ!!」


《 ここまで耐えるのは初めてですが、徐々に主導権を握るのは私ですよ。でも安心してください。あなたは死ぬわけではないのです。例えるとしたら多重人格になると言ったところですかね?あなたという人格は確かに残りますが、私が譲らない限りあなたは何もすることもできません。 》


「ぐっ!?があぁぁぁぁぁ!!!?」


サタンの言う通り痛みがどんどん増し、体を十分に体を動かすこともできなくなってしまった。意識を乗っ取られているということは俺の意識で体を動かすこともできなくなってしまう。つまり、サタンの言う通り俺という人格はサタンが譲らない限り何も出来ないと言うことだろう。


「仮に俺の体を乗っ取ったとしてもノワールが絶対にお前を殺す。これで勝ったと思わないことだな」


最後の最後で負け惜しみのことを言い、心の中でノワールたちが救ってくれることを祈りながら俺の意識は完璧に支配され完全にサタンに乗っ取られてしまった。


「……なるほど。これは聊か見くびっていましたね。まさかここまで素晴らしい体とは」


ハルトの体を完全に乗っ取ったサタンは感覚を確かめるために右手を握ったり開いたりしていた。そして両手広げながら空を見上げ、大きな声で笑いを上げた。





※※※




「ハタストム。本当にハルトで大丈夫なのか?」


「愚問だな。俺が認めた数少ない友だぞ?貴様も心してかからなければ殺されるぞ?」


ハルトが言った後の草原はとても静かだった。ルナの治療を終えたルインは腕を組みながらノワールに問いかけ、ノワールはそんなルイン問いかけに対してとても自信が溢れている顔をしながら答えた。


「お前がそう言うなら信じるが、俺は万が一のことを考えておく。戦いに絶対が存在しないのは分かっているだろう?」


「そんなことは百も承知だ。それに……この自信もその考えを認めたくないための建前だからな」


ルインの言葉に今度は声を震わせながら答えたノワール。そんなやり取りを繰り返していると、二人の目の前に【ゲート】が現れてそこからハルトが出てきた。


「あれ?ルインもノワールも何してるんだ?」


【ゲート】から出てきたハルトは首を傾げながら二人を見つめ、ゆっくりと駆け寄った。ノワールはハルトの帰還に喜びの顔を見えるが、一瞬で駆け寄ってくるハルトに警戒態勢をとった。


「貴様は何者だ?少なくともハルトではないな。まさかとは思うが……サタンという悪魔か?」


冷たい声で駆け寄ってくるハルトにそう言ったノワール。その言葉を聞いたハルトは一度立ち止まり、俯いたまま笑い出した。


「ふふふ……。まさかこんなに早く気が付かれるとは思いませんでした。最強のアンデッドという二つ名は嘘ではないようですね」


「色々聞きたいことはあるが、ハルトをどうした?殺したのか?」


俯いた顔を上げてノワールの問いかけに答えたサタンは右の人差し指で頭を叩き、「ここですよ」と答える。まるで挑発するような口調で説明したサタンはさらに挑発するような口調で話を進める。


「一応彼はこの中に入っていますよ。それにしてもこの体は素晴らしいですよ!!こんなに早く気が付かれるとは思っていなかったですが、この姿の私を殺せるというなら殺して見てください」


ハルトの皮を被ったサタンが剣を抜き、ノワールに駆け寄りながら剣を振りかざす。サタンとしてはノワールを動揺させるために言った言葉だろうが、ノワールはそんな言葉で動揺するような玉ではない。振りかざしてきた適当な一太刀を最小限の動きで回避し、がら空きとなっているボディーにパンチを食らわせる。


「がっ!!?」


「どうした?素晴らしい体を見つけたのだろう?ならばその体を使って我に勝つがいい」


「お前……何で平気で攻撃出来るんだ!!普通は攻撃なんてできるわけないだろ!!」


サタンは外見がハルトであることを利用してノワールに攻撃をさせにくい状況を作ったと思い込んでいたが、そんなサタンの狙い通りにいくほどノワールは甘くない。手加減の無い全力のパンチをボディーに放つと、サタンは殴られた場所を押さえながら鋭い目でノワールを睨む。紳士のような口調も止め、本当の自分をさらけ出したサタンはよろよろと立ち上がりながらノワールに剣を向ける。


「そうか、お前は仲間が死んでも何も思わないのか。その心の強さも最強の証ということか」


剣を向けながらノワールにそう言ったサタン。



―――その言葉一つで自分に死を招くとは思いもせず。



「!!?」


瞬間移動の如くサタンの目の前に移動したノワールはそのままサタンの首を握りつぶすように掴んでそのまま持ち上げる。


「がっ!!?お、お前……この体は本人と同じなのだぞ?し、死んでもいいのか?」


「死んでいいわけがないだろう。それに貴様は何を勘違いしている?我がいつ貴様を殺すと言った?我が知っている知識で一致するものと言えばそれは【憑依】だろう?だとすれば答えは簡単だ」


手を離し、せき込みながら苦しむサタンを見下しながらさらに言葉を続けるノワール。サタンはノワールを見る目がどんどん変わって行く。


「憑依ということは痛みを感じるのは貴様だけということだ。つまり我は殺さない程度で貴様に痛みを与えればいいだけだ。貴様がどこまで耐えきるのか試せばいいだけだ」


そう言ったノワールはまず最初に首を押さえながら痛みを訴えるサタンに手を翳し、何かを発動させる。しかし外見的な変化を見せないスキルらしくサタンも首を傾げる。

 しかし、スキルの効果は直ぐに現れた。ハルトは【自己再生】という特性を持っており毎秒一定のペースで傷を治すことが出来る。ノワールに捕まれた首も【自己再生】で治り始めていたのだが、ノワールがサタンに手を翳した瞬間首の傷が癒えることはなかった。


「ようやく気が付いたか?我が発動させたスキルは【封印】だ。ハルトが得た特性を全てをその名の通り封印した。つまり、貴様の傷はもう癒えることは無く今まできかなかった属性もきくようになってしまうということだ」


「そ、そんなことが可能なわけ」


ノワールの言うことを認めたくないサタンは痛みを我慢しながら構える。そんなサタンの反応を見たノワールは「試してみるか?」と冷たい声で言いながら再びサタンに手を翳す。指を鳴らし、そこから放たれたのは黒い炎で作られた竜で、その竜は目の前のサタンに真っすぐ向かっていく。


―――ドゴォォォォォ!!!


爆発音が轟ぎ、辺り一面を緑だった草原が丸焦げとなった証にノワールの鼻には焦げ臭いにおいが突き抜ける。黒い炎によって舞い上がった黒い煙が晴れると、腕で必死に顔を守って立ち尽くすサタンの姿があった。


「フハハハハ!!さすがは悪魔だな!!我の【黒炎竜】を耐えきるとは!!」


「これは……誤算ですね」


再び紳士のような口調になったサタンは両手を合わせ、何かを発動させるために力を込める。――そして出来たのは黒い球体で、サタンは自身満々な顔をしながらその黒い球体をノワールに放つ。タンポポの綿毛のようにフワフワと移動していく黒い球体は、ノワールの頭の上で静止しその力を発揮する。


「ぐっ!!?こ、これは……“重力”か!!?」


ノワールを超重力が遅い、強制的に地面に這いつくばってしまうノワール。


「そうですよ。私たち悪魔が生み出す現象です。重力に逆らうことはできませんよね?」


「いや、そうでもないぞ」


「なにっ!?」


超重力がノワールを襲っているというのにノワールは何食わぬ顔をしながら立ち上がり、サタンに駆け寄って行った。指を鳴らして黒い球体を消失させ、焦りが見えるサタンの体に触れながら


「貴様はもうおしまいだ。貴様の敗北は()()を甘く見すぎたことだ」


冷酷な表情でそう呟き、触れている手から何かを発動させる。悪魔が使うような黒の力ではなく、黒を打ち消す光の力だった。


「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁ!!?なぜだ!!なぜアンデッドであるはずのお前が神と同じ力を持っている!?」


「我が最強だからだ」


「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


神の力……唯一悪魔に対抗できる力と言っていい物をノワールが使い、サタンはその力に成す術なく消失していった―――

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