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いまやるべきこと

111     いまやるべきこと



「うがぁぁぁぁぁぁ!!!!」


断末魔のような叫びを上げるとともにノワールが自分自身の力を全て外に放出する。放出されたのは超強力な【天滅】で回避しないと一瞬でこの世から消し去ってしまう。せっかく全回復した魔力もノワールの【天滅】を回避するためだけに消費するとは思っていなかった。

 出来ることならこちらからも攻撃していきたいところだが、下手に近づいたらすぐに【天滅】の餌食となってしまいそうでとても怖いのだ。


「このくそノワール!!一体どうしたんだよ!!」


何度も何度も叫んでいるけどその叫びがノワールに届くことは無かった。むしろ叫べば叫ぶほどノワールを刺激してしまっているようで、適当な方向に放たれていた【天滅】が全て俺に集中する。しかし理性を失って本能で放っているせいか、狙いは割と雑だ。一度当たったらゲームオーバーもいいところだけど狙いが雑になっている【天滅】を回避することなんて容易い。


次々と【天滅】を回避しながらノワールとの距離を詰めていく……


「喰らえノワール!!!」


――距離を詰めて攻撃を仕掛ける。【天滅】を使いたいところだけどそれではノワールが消滅してしまうので、【肉体保護解除リミット・オフ】を発動させスキル【掌底】を繰り出す。【掌底】に【魔力撃】と【魔力破】を乗せて放った一撃。

 【肉体保護解除リミット・オフ】で身体能力を飛躍させ、【掌底】でその飛躍させた身体能力を余すことなく使い果たす。【魔力撃】と【魔力破】で威力自体を底上げし、さらにダメージを増やせばかなりのダメージになるはずだ。


「ぐはっ!!?……ハ、ハルトか?」


「やっと目覚めたのか。お前が何か狂ったように暴れてから、止めるのめちゃくちゃ大変だったんだぞ!!」


俺が渾身の一撃を食らわすとようやく正気になったノワール。ノワールも被害者であることは確かなのだろうが、今は俺の方が被害者なので正気になって直ぐのノワールに文句を言った。


「それについては素直に謝るとしよう。我も呪いの類には耐性がないのだ」


「呪い?何でお前が呪いなんてかかったんだ?」


俺がそう聞くと顎に手を当てながら説明してくれたノワール。倒すべき魔王が刻印を持っていたことや、その魔王が望んで魔王になっていないこと……そして、呪いがかかった時に見たもの。


「呪いの内容は“絶望を見せる”ことだった。この呪いにかかった者は解除されるまで永遠に自分の中の絶望を見せられる。

 それに対して抗うことが出来る者もいるがどうが、我のように理性を失って暴れる者の方が多いことだろう」


「“絶望を見せる”か……」


その言葉を聞いた俺は呪いにかかっていた時にノワールが言っていたことを思い出そうとしていた。ノワールが言っていた言葉は確か『俺はこんなこと望んでいなかった』だったか?確かそんな感じの言葉だったはずだ。

 その言葉がノワールの絶望につながることが分かったとしても、俺ではノワールを絶望から助けることができない。仮に助けられる存在が居るとすればルナさんくらいだろう。呪いにかかっていた時の言葉を思いかえせば、ルナさんが死んでしまった時のことが絶望となっているのだろう。


呪いの効果によって見るもの全てが別のものに見えてしまったのかもしれない。いずれにしても、これからはその刻印についても警戒する必要があるようだ。


「そう言えばノワール。モンとかコアトルちゃんはどうしたんだ?」


「知るわけないだろう。我は絶望の淵のなかにいたのだぞ?」


「堂々と言うことじゃねえよ。……まあ、それもそうか」


ノワールがいたる方向に放った【天滅】を食らっていたとしたら一大事だけど、モンとコアトルちゃんのことだから生きているだろう。根拠と言えば微量の魔力が感じられることだ。……いや、これは生きているということを伝えようとするために感じさせる魔力のようだ。


「モーン!!コアトルちゃーん!!もうノワール大丈夫だぞ~」


上を見上げながら叫ぶと元々後ろで感じていた微量の魔力がどんどん強くなった。


「うう……。すまないでござるノワール殿」


後ろを振り勝ってみるとスキル【人間体】を使い、モンが泣き目の状態で出てきた。そんなモンの頭をよしよしと撫でながらコアトルちゃんが後ろから追いかけるように登場する。以前はモンの方がコアトルちゃんよりお姉さんのような立場だったけど、今この光景を目の当たりにするとコアトルちゃんの方がモンよりお姉さんにしか見えない。

 そこをツッコミたかった俺だけどモンに何か言われそうだったので何も言わないことにした。


「なぜ貴様が謝るのだ?謝る方は我の方だと思うのだが」


「ノワール殿がいち早く戻ってきて空に残っていた魔族を一瞬で消し去ったときでござる……」


あー。何か魔族一体も残ってねえなって思ってたけどやっぱりノワールが全部ぶっ倒したのか。軽く見積もっても5万とか8万くらいは残ってたはずだけど、ノワールはそれを一瞬にして消し飛ばしたのか。理性を失っているからこそ今まで無意識のうちに制御していた力を全て開放したのだろう。


……まあ、俺にとっては理性が無い方が知性もないから戦う時は楽だったけど。




「――それで、その時なにかあったのか?」


「吾輩はその時……ノワール殿の冷酷で狂った目を見た瞬間“化け物”と言ってしまったのでござる。……本当に申し訳なかったでござる」


深々と頭を下げるモン。俺も口には出さなかったけど理性を失ったノワールを見て化け物だと思った。しかし、それは自然の感情としか思っていない。それにいつものノワールを見ても毎回毎回化け物思うところが結構ある。


「フハハハハ!!安心するがいいモンよ!我はその程度では怒ったりしない!むしろ我のあの姿を見て化け物と思わない方が珍しいだろう。……それにしても、何故ハルトが戻って来ていてルインや魔女が戻ってきていないのだ?」


「それは俺を馬鹿にしてるのか?あの二人なら女神様たちの所に行ったんじゃないのか?【テレパシー】で来た内容を思い出すと、多分既にこの世界に戻ってると思うけど」


俺がそう言うとノワールはすぐさま指を鳴らした。その刹那、黒い霧が俺たちを包んで視界を奪う。20万という魔族の軍勢と5人の魔王は、たった6人によって消失された魔族。もともと魔族がどれだけ居るのかは分からないけど、5人の魔王を倒したのは大きいだろう。


しかしまだ本命である“アスモデウス”が残っている。

 奴を倒さない限り戦争は終わらない。……また、気持ちを入れなおす必要があるのかもしれない。

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