次の目的地
皆さんお久しぶりでございます!!
久しぶりの投稿ですが、正直に言うと文字数がいつもより少ないかもしれません………。
そこについては申し訳ございません。次回はこれよりもがんばりますのでよろしくお願いします。
11 次の目的地
「グギャ………クシャァァ………」
村にようやくたどり着いた俺とノワールだったが、そこの住民に魔獣の討伐を頼まれてしまったので村から少し離れた洞窟へと向かった(頼まれたのはノワール)。
そこにいたのは黒毛狼よりもデカイ獣だった。解析をした結果、レベル30というこの森では珍しい強い個体らしいが、レベル700を超えているノワールの敵ではない。
その証拠に、この魔獣の攻撃に全く動じずたった一発で倒してしまった。遠くから見ているだけの俺にとってはここまでしかいえないけど、ノワールが感謝されているのはよく分かっている。
「ヴァンさん!やっぱりすごいですね」
「よかったぜ。あいつのせいで、最近は狩りにすら行けないからな」
一緒に討伐に向かった村の男たちにちやほやされているが、これっぽっちも羨ましくない。
………あれが女性だったら嫉妬していたかもしれないが、男にちやほやされて興奮するほど俺の性癖は曲がっていない………多分。
………とりあえず、魔獣の討伐も終わったから村に滞在すことはないんだっけか?ノワールの言うことだから、「まだ村に残るぞ!」とか言いそうだけど………。
「失礼ですが皆さん。私はそろそろ次の町に行かないといけません。せっかくのお誘いですが、それは次の機会に」
おっと、どうやら心配するようなことはなかったらしい。
自分で自分の性癖を見直しているときに、ノワールは宴にでも誘われたみたいだが、意外にもそれを断ったらしい。
………そんなに急ぐことってあるのか?俺は早く人間の体に乗り移るといつ目的があるけど、ノワールって目的あんのか?
「しょうがねえ!じゃあ、村の皆もお礼が言いてえだろうか、もう一度寄ってくれ」
一人の男がノワールの背中をバシバシと叩くと、ノワールは首を縦に振ったあと一緒に村へと戻った。
村に戻ろうとした瞬間、俺に『あの魔獣を食べろ』というプレッシャーのかかった合図をされたので、急いで屍状態の魔獣に近づく。
………この体、嗅覚と味覚がないことに感謝した方がいいかもしれない。
嗅覚があったら獣臭、味覚があったら生肉の味を体験しないといけない。そもそもこの魔獣は食用ではないので、かなり不味いだろう。
(………いただきます。)
一応、食への感謝を忘れないようにいただきますを言ったが、こんなデカイ獣を丸ごと食べるとか、どこのフードファイターだよ。
何か特性に大食漢とかあったから、食べれるとは思うけど………やっぱり食べたいとは思わねえな。
………ガブリ………バキバキ……グチャネチャ……バキバキ……。
生々しい骨と肉を噛む音が口のなかで響くけど、味覚がないから全く味がしない。
生肉独特の食感と、骨を噛み砕く音はいつになっても慣れない………というか慣れたくない。早く人間の体に乗り移って美味い物を食べたいものだ。特性大食漢というもののお陰で巨大な魔獣を丸ごと食べる何てことは余裕だが、食事がこんなにも辛いものになるとは思っていなかった。
………バキベキ………ゴクン。
《 レベルが15に上がりました。ステータスの向上と、新たなるスキル習得、さらに特性の習得を報告致します。そして、スキル【解析】のレベルが上がりました。
レベル5→15
攻撃力120→300
防御力50→180
魔力200→500
NS 透視・浮遊・保護色・テレパシー・解析・魔力撃
→解析2・硬化
特製 大食漢・鋭歯・言語理解
→夜目 》
やっぱりやってきたレベル上がりだったが、想像よりもレベルが上がってしまった。いきなりレベルが10上がるとか、どっかに出てくるメタルスラ〇ムみたいなのを倒したような気分だ。
自分より高いレベルの奴を食ったから、レベルが上がることは予想してたけど………こんな簡単に上がっていいのか?
ノワールと比べたらまだまだ低いけどさ、こんな簡単に上がったらモンスターの強さバランスがすぐ崩れるような気がするんだけど………。
《 個体名ノワールからテレパシーを使用してのメッセージが届きました。メッセージを確認致します。 》
おっと、このタイミングですかいノワールさん。
ノワールからメッセージが届いたってことは、既にお別れは終わっていることだろう。不本意ながらも、ノワールは二回もあの村の人々を救ったことになる。
村の女の子を助けたのと、今回魔獣の討伐で二回だ。そういうイベントは俺に起こってほしかったという願望はあるものの、あの魔獣と対峙して勝てるわけもない。人間の体に乗り移ったら絶対人助けしてやる。
それで絶対見返してやる―――
《 メッセージの確認が終了致しました。これよりメッセージをお伝え致します。 》
―――タイミング悪すぎるだろ!!
ツッコミを入れたいのは山々だが、早くしないと頭の中にメッセージが流れてきてしまう。二つのことを同時に熟せるほど器用でもない俺は、頭に言葉が流れてくる前に準備しなくてはならない。
(フハハハハ!!!ハルトよ!貴様は今頃、あの魔獣を食って多少なり強くなったところだろう。人が倒した魔獣を食らってレベルを上げるなど、ごく潰しもいいところであるな!!フハハハハ!!!
……さて、本題だが、次の目的地はこの森を抜けたところにある町だ。その町はこの大陸で最も巫女の数が多い町らしいぞ!
我は問題ないが、貴様は直ぐに浄化されてしまうであろう!フハハハハハ!!! )
………………終わりかよ!!
最後の最後まで高笑いで終われせやがって………。最も巫女の数が多いとか、軽く自殺しにいくようなもんじゃねえか。いざとなったら守ってくれそうだけどさ、それでもそこまで危ない綱渡りをする必要はねえだろ。
最強のチートヴァンパイアと違って、俺は最弱のアンデッド族のゴーストなんですけど。地球ですら見なくなった古典的な幽霊の姿なんですけど。
そろそろ頭のヒラヒラが冷たくなってきたんですけど(事実)。
とりあえず………村に向かいますか。
ノワールに追いつくために、俺は再び村に戻ることにした。元々そんなに足が速くない(というか足がない)ので、早くしないとノワールに怒られてしまうような気がする。
※※※※
「そうか……もう行っちまうのか」
村ではノワールとの別れを認めたくない者が多かった。知り合ってまだそんなに経っていないというのに、なぜ皆そんなにも悲しむかというと、それはノワール―――いや、ヴァンという一人の好青年のカリスマ性の高さから来るものだろう。
「本当にお世話になりました。私も、とても楽しかったです。こんなに賑やかなのは久しぶりでした。でも私は、早く次の町に向かわないといけません」
ヴァンもまた、かなり粋っているようだった。ハルトと話しているような口調は一切せず、メチャクチャカッコつけていた。
「次の町でもっと多くの人を助けるのか……あんたみたいな人がまだ残っていたとはな。ここの近くを通ったら、是非またここに寄ってくれ」
「ええ。その時には是非寄らせてもらいます。では………」
ヴァンが軽く村の住民に別れの挨拶を済ませ、村を後にした―――
※※※
「ほう………中々どうして強くなっているな」
(あのさ。何かもう少し言うことあるんじゃないの?)
村の住民から応援とお礼の声を受けながら出てきたノワールは、俺のことを見つけると顔がいきなり笑顔になって、いつものノワールに戻ってしまった。
「貴様に何か言うことがあるだと?……別に何もないだろう。貴様の成長速度の速さは目を見張るものがあるが、それ以上のことはないであろう?」
(いやいや。俺の認識阻害の同調を切って、俺を浄化しようとしただろ!!いくら何でも、いきなり認識阻害の同調を切ることないだろ!!危うく死ぬところだったよ!!)
「死んでいないからいいであろう。そのお陰で我の評価が上がったから構わないだろう」
(俺の評価がウナギ下がりなんだよ!!元々低かった………というか無かった俺の評価がメチャクチャ下がったんだよ!!)
「貴様……それはいいとして、大分強くなったな。正直に言うと、我が知る限りではそこまえ強いゴーストは存在しない。転死者だから特別な個体なのか………それともただの変異種なのか」
(ちょっと、話をはぐらかさないでくれます?俺が強くなったのは知ってるから、早く謝って!早く頭を下げて!ほら早く!!)
自分でも大人げないと思っているが、もう引き下げることはできない。駄々をこねる子供のようになっているのも承知済みだ。
でも、それでもこいつを許すことはできない!!
だって、だって………俺を浄化しようとしたし、危うく俺の霊生が終わるところだったし。
※霊生とは、幽霊の人生のこと。つまり幽霊の人生の略。
「我に頭を下げろと言った輩は貴様が初めてだが、全くどうして嬉しくないな。とりあえずハルトよ。次の町ではちゃんと認識阻害を同調をしてやるから、それで水に流せ」
(え~……。じゃあ、しょうがねえな。)
まるで勝ち誇ったかのような言い方だが、正直に言うと負けたのはこちらの方だ。今のはもはや脅迫に近いような脅しだろう。
だって今の………『許さないなら認識阻害の同調をかけねえぞ?』って意味だよね?
完璧自分が有利だと思い込んでたのに、こうも簡単に逆転されるとは思っていなかった。
「それより貴様……やはりレベルとステータスが比例していないと思うのだが」
(え?なに、俺ってそんなに強くなったの?あんまり自覚ないし、そもそも強さの基準が分かんないから強いのかすら分かんないんだけど。)
「そうか……思えば貴様にモンスターの危険度については話していなかったな。………よし!この際だから、完璧に説明してやろうではないか」
やけにニヤニヤしているノワールだったが、一応ちゃんと教えてくれることだろう。こうして、チートヴァンパイアによるモンスターの危険度についての説明が始まるのだった―――
読んでいただいてありがとうございました!!
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