名前はマクスウェル
本日で100話目ですね。
100目の記念で何かやろうかと思いましたが、悔しいことに何も思いつかないので多分何も出来ないと思います。
では皆さん楽しんで読んでください。
100 名前はマクスウェル
「フハハハ!!まさか貴様が悪魔張本人とは思わなかったぞ!!だが、これは逆に好機!!貴様を倒せば魔族側の戦力が激減するのだろう?なら倒さないという選択肢はない」
「お前が最強のアンデッドだと言うことはさっき確認できた。だが、その程度の実力じゃ俺たち悪魔には敵わない……。残念だが、この戦争の結末は決まっている」
傲慢と傲慢同士が言い合っているが、意見は永遠と平行線だった。しかし、さすがのノワールもこれが悪魔本人だったとは思っていなかったらしく、少し動揺している素振りを見せる。悪魔も悪魔でノワールの本当の恐ろしさを知らないため、傲慢な態度を一向に変えない。
「ノワール……確かにお前が言っていた通り、ここで悪魔を倒したら魔族の戦力は激減する。けど、こっちが負けたら激減どころか本当に戦争の負けが終了するぞ?」
「それは互い様だ。互いに引けない状況であるなら戦うしかないだろう」
腹は決まったという顔をしながら目の前の悪魔のことを真っすぐ見つめる。いつもは相手のこと何て見ること無いのに、今回はキチンと戦う悪魔の紫色の目を真っすぐ見つめている。悪魔も悪魔でそんなノワールのことを見つめ、何もない空間から紫色の何かを纏った剣を取り出した。
「この剣を使うことは滅多にねえ。俺はお前をそれほどの相手だと見込んで使うんだ。仮にこの俺を失望でもさせたら、一瞬で消し飛ばすからな
「随分余裕だな。『最強』という異名を持っている我を目の前にして、まだそんなことをほざけるのか」
「そこの人間は余ってる魔族とでも戦っとけ。俺はこいつを殺さねえといけねえからな」
最後の最後にこちらに視線を向けた悪魔は馬鹿にするような口調でそう呟き、遥か上空へ飛んでいってしまった。ノワールはそんな悪魔を追いかけるために飛んでいき、俺は悪魔が言った通り残った魔族と戦うことにした。
「ハア……何でこうなったのかねえ」
残った魔族というのは悪魔の分身と共に現れた3人で、それなりに強い力を持っていることは確認していた。しかし、悪魔の分身を一撃で倒した俺の敵でないことは一目瞭然である。
――悪魔が命令か何か出したのかは知らないが、悪魔とノワールが遥か上空に飛んでいった直後に3人のうちの1人が動き出した。
「ほいっ」
全くの無言で襲い掛かってきたが攻撃は単調そのものだったので、回避することなくただ相手が向かって来る以上のスピードを出して剣を振った。早すぎる太刀は剣に血も付かないものだが、さすがにそこまで鍛えられていないので少量の血が剣に付着してしまった。
「がっ……!!?」
「いやいや……さっき見ただろ。お前ら馬鹿なの?」
この剣には【腐食】と【風化】、そして【浸食】が付与されているので、耐性が無いとかすり傷一つつけられた終わりの代物である。最初に襲い掛かってきた魔族は単なる馬鹿だったらしく、残り二人の魔族は無言のまま右手を伸ばし、スキルを放つ。
(【縮地】!!)
――ドゴォォォォォ!!!
魔族二人が放ったのはかなりの質力の紫色の炎だった。今まで紅い炎と黒い炎は見たことあるが、紫色の炎を見たのは初めてだった。別に【魔結界】で受けてもよかったのだが、万が一天属性の攻撃だった時に対処できないのでスキル【縮地】を発動して魔族二人の死角へと移動した。
死角に移動した故に俺の姿に気づいていないので、俺はその無防備の背中を容赦なく斬った。
―――これにて残った魔族は全滅と思ったけど、悪魔の血を飲んで魔族化したマッドのことを想い出したので転がっている死体を完全に消すために【天滅】を放った。範囲は絞ったので、消え去ったのは一面に広がっていた芝生と転がっていた魔族の死体で草原のある一部が一瞬にして更地となってしまった。
「さて、ノワールのところに行くか」
後処理を済ました俺はこの戦争を巻き起こした元凶である悪魔と対峙しているノワールの元に行くことにした。スキル【浮遊】を発動したいところだが、【浮遊】はあくまでも宙に浮くスキルなので空を飛ぶために作られたスキルではない。
「―――そうだ!」
少し考え、いい案が思いついた俺は早速実行に移った。しかしそれは実に単純なことで、スキル【身体強化】で脚力を上げる。思い切り跳躍し、やがて跳躍力が無くなり重力に従って地面に向かっていくところで足元に【魔結界】を張って同じことを繰り返す。
※※※
―――遥か上空。酸素も少なくなっているため、酸素を必要とする生物は活動がしにくいことだろう。そんな上空だと言うのに、まるで地上と変わらない動きで戦いを繰り広げられていた。
「フハハハハハ!!いいぞ!!正直、名前だけの存在で実力は大したことがないと思っていたのだが、想像以上だ!!」
「それはこっちのセリフだ。この【獄炎】を纏わせた剣でも消し炭にならない物は初めてだ。最強と言う二つ名がついていることにも納得する」
「そうか……では、そろそろ加減の辞め時であるな」
傲慢同士の争いは、互いにプライドにかけて一歩の引かなかった。そんななか、ノワールがある言葉を呟きながら着ていたマントを脱ぎ捨てた。その瞬間、悪魔の顔いろが変わりブルブルと体を震わせている。
「お、お前……あれで本気じゃなかったのか?」
「本気だと?貴様、まさかあの程度の力で本気だと思っていたのか?」
馬鹿にしている口調ではなくノワールはただ純粋に悪魔に問いかけた。しかし、悪魔はノワールが言葉を重ねる度に身を震わせ、圧倒的な力を持つノワールを目の当たりにして恐怖を抱いているようだ。
――それは仕方のないことである。ノワールが着ていたマントは自らが持つ膨大で強力な力を封じるためにあったのだ。そして、ノワールは今そのマントを脱いで本来の力を取り戻したと言っていいだろう。
「くそ!!くっそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「確か貴様の名前は『マクスウェル』だったな。我にマントを脱がせた者の一人として、その名を覚えておくとしよう」
恐怖で一歩も動けなくなってもいいというのに、悪魔――マクスウェルはただガムシャラにノワールに突っ込んでいった。そんな悪魔の最後の力を振り絞った攻撃を、ノワールは何の防御もせず痛感すら感じていないような顔をしてマクスウェルの腕を掴んで手を翳す。
「我らはこの戦争で負けるわけにはいかない。故に貴様らを殺す。では―――来世に期待するがいい」
最後にそう言ったノワールはマクスウェルに翳した手から【天滅】を放ち、戦争の元凶を作り出した悪魔の一人を倒した。ノワールの中には圧倒的な達成感の中に、若干の後悔と迷いが残っていた。
「―――あなたは何者ですか?」
「貴様こそ何者だ?マントを脱いだ我の後ろに立つなど、そこらの者に出来る芸当ではない」
悪魔―――マクスウェルを倒し、一安心していたノワールの後ろから突然に現れた存在。白い羽を生やし、神々しいオーラのようなものをその身に宿していた。ノワールは警戒しつつも後ろを向き、その声の主のことを見つめる。
「――!!?」
その声の主を見つめた瞬間、ノワールは目を大きくして何回も見直した。
「そんな……貴様は―――お前は……ルナ?」
月をも羨む美しい金色の髪……どんな青も霞んでしまうほど綺麗で、純粋な輝きを見せる瑠璃色の瞳に俺は何度助けられたことか。
そう。いきなり我の目の前に現れたのは、いつか再び会う日を夢見た最愛の女性ルナと瓜二つの女性だった。
読んでいただいてありがとうございます。
夏休みに入り、最近は毎日更新しているのですがその分時間帯がバラバラだったり誤字脱字が多かったりしていると思います。
ご意見ありましたらお知らせください。参考にさせていただきます。
では次回の更新をお楽しみに。