表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/32

1.プロローグ

初投稿です、よろしくお願いします。

 愛とは何か、これは人にとっての命題だろう。


 己の内側から湧き上がる衝動に突き動かされ、誰かに手を伸ばさずにはいられない不思議。


 そして手を伸ばすと同時に、相手からも手を差し伸べられ抱き締めて欲しいと切望するのだ。


 …しかし、自分に広げられた両腕がただの幻想だったなら…。


 それでも人はその幻想に喜びを感じ、掴めもしない藁しべに縋ってしまう程に、もう溺れてしまっている。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



——————昼食後のうたた寝から唐突に目覚めたような感覚。



 急速な意識の浮上と共に、二人分の記憶( ・・・・・・)が一度に脳内を駆け巡った。

 えっ、ボク…いや、わたし( ・・・)は何をしてたんだっけ? 確か自宅のベッドで苦しくてサラお母さまと庭でお散歩を…あれ?


 って、そもそもわたしは誰? いや、それは思い出せる。

 わたしはどこにでもいる15歳男子の女の子ティーシャ・ルルー。中学校にはまだ1日しか通えてないけど5歳だからお屋敷からは出してもらえなくて…いやいやいやいや!

 落ち着こう、とにかく落ち着こう。うぅ、意識がマーブル模様みたいになってて気持ち悪い…ちょっと救急車酔いを思い出すなぁ…。


 そんなことを考えてながらぼんやりする頭を振っていたら、わたしの右横から唐突に声が掛けられ、同時に肩に触れる柔らかい手。


「気が付いたのティーシャ!? 痛いところはない? もうすぐお医者様が来てくださるわ! だからしっかりするのよ!?」


 サラお母様、ちょっと声が大きい…よく分からないけど多分怪我はないし、心配するようなことは何も…。

 そう思いながらまだ優しく肩を握ったままこちらを心配そうに覗き込むお母様を見つめ返した。

 驚く程の金髪美女がわたしに心配そうに潤む碧眼の眼差しを向けていた。うん、見覚えのあるいつものサラお母様だ。せっかくの美しい顔が色んな液体でぐちゃぐちゃになっている。


 …ん? なんだか視界に薄いベールがかかって…ううん、これは本物のベールだ。わたしは産まれてからずっと顔の上半分を覆うベールを被っているんだった。

 よく分からないけどずっとこうみたいだし、こういう風習なのかな? まぁいいや。


 わたしが顔を上げて微笑むと、お母様はとりあえず安心したらしい。そして肩にかけた手にほんの少しだけ力を込め、そのまま感極まってわたしの身体をその豊満な胸に抱き寄せた。

 嗚呼お母様、ちょっと苦しい。っていうか何この爆…いくらなんでも大き過ぎやしませんかね?

 そしてお母様はいつものようにクンカクンカと鼻から息を吸い込みながら、呟くように声を漏らした。


「もう、本当に心配したのよ? だって突然… 」


 そう、確かわたしはお母さまと庭でお散歩中、舞い踊る蝶に嬉しくなって一緒に飛び跳ねてたら転んで…なるほど、それで気絶でもしていたのだろう。

 見上げると頭上を木の葉が覆い、優しく陽を遮っている。見覚えのあるその巨木は、確かわたしの知るこのお屋敷の敷地内でも一番外れに位置する立派な庭木だ。確かつい先日、グスタフお父様に連れられて見た覚えがある。

 でも今日のお散歩コースはこんな遠くまで…ん?


「ティーシャったら突然転んでそのまま何故か生えていた(・・・・・・・・ )エラスト草の実に頭をぶつけて、その勢いでここまで吹き飛ばされたのよ? 幸いこの木がクッションになってくれたけど、なかなか目を覚まさないから心配で心配で…」


 そう言って大粒の涙をこぼすお母様。ぐちゃぐちゃの顔なのに素材が良過ぎて絵になるとか反則だと思います。

 でもこの木まで吹き飛ばされたって…お散歩コースからここまでの距離ってわたしの足ではまだ辿り着けないくらいの…ああ、わたしにとっては日常( いつも)のことだっけ。


 お母様はそのままブツブツと(あとで庭師を叱らなくっちゃでもエラスト草なんて希少素材がうちの庭に自生してたなんて)何事か呟き始め少しだけ密着していた身体が離れた。その隙を見逃さず身をよじって脱出する。ぷはぁ、酸素おいしい。

 まだ錯乱しているらしいお母様のために、わたしは言葉を選びながら口を開いた。


「ティーシャはげんきだから、ね? おかあさまもげんきだして?」


 うわぁ、何この舌ったらずな甘いアニメ声。自分の声のはずなのにちょっとびっくりする。

 お母様はその声にビクッとしながら勢いよく顔を上げ、蕩けるような表情でわたしを見つめ吐息を漏らした。…なんだかすごく色っぽいです。


 そんな感じでようやくお母様が落ち着いたタイミングで、わたしは複数の強い焦りの感情・・・・・・・・・・ を感じ( ・・・)お屋敷のある方向に目を向けた。

 数人の使用人とかかりつけのお医者さんが駆け寄って来る。そしてわたしは動くことも出来ないまま、その場でテキパキと厳重な診察を受けさせられた。


 しばらく経ち、わたしはお母様の腕に抱えられてお屋敷へと運ばれている。心地良い陽射しと揺れでなんだかとても眠い。

 微睡みの中で、わたしはさっきの混乱をようやく思い出した。二つの混在する記憶、わたしの意識とボクの意識…うん、コレは何度も読んだアレじゃないかな。

 ちゃんと整理しなくっちゃと思いつつ、わたしの意識は沈んでいった。





……………………

………………

…………

……


 自室の天蓋付きベッドで目を覚ます。うん、少し眠ったら混乱も治ったようだ。

 ベッドの中で天蓋の布に織り込まれた名も知らぬ不思議な形の星座を見上げながら、わたしは思考を巡らせる。


 これは明らかに前世の記憶ってやつだ。ってことは転生? しかも性別が変わってるし…。

 そう、生前のボク( ・・)は間違いなく男だった。間違っても5歳の幼女じゃない。日本の地方都市に住むちょっと身体の弱い15歳の普通の少年だった。

 それがなんでこんな…しかもここ、どう見ても外国だよね? よく分からないけど言語が違う気がするし、見るもの全てが日本の雰囲気じゃない。あとサラお母様もわたしも金髪だし。

 そう思いつつ、わたしは自身の長い髪に手を添える。艶やかな金髪はふわふわな感触で、ちょっと甘い香りがした。


 そう、困ったことにこのわたしは5歳の金髪幼女なのだ。でも、いくら記憶を掘り返しても自分の顔を思い出せない。

 そもそも一度も鏡を見た記憶がない。もちろんこの部屋にも、お屋敷で知る他の部屋でも鏡は一度も見かけていない。

 えっ、なにそれこわい。宗教上の理由とか? よく考えたら寝るとき以外ずっと薄いベールを被ったままだし、お風呂用ベールなんて代物すら常用している。日本人的には変な宗教は少し困るなぁ。



 ひとまず状況の整理が必要だ。記憶は問題なく統合されているっぽいけど、どう考えてもこの二つの記憶の常識は違い過ぎる。

 まずは…とりあえず前世の、ボクの記憶から整理しよう。

 転生したってことは、あのボクは死んだってことなんだろうから。


 …眼を閉じて思い出す最期の記憶は、とにかく意識が朦朧とし呼吸が苦しくて熱かったこと。身体の内側から焼けるような熱には覚えがある。

 きっといつもの病気のうちのどれかかな? あの時は久しぶりに病院から一時帰宅が出来たんだった。だからちょっと油断していたのかも知れない。

 両親は仕事で出掛けていたし、突然のことに緊急用のボタンに手を伸ばすだけの余裕すらなかった。

 流石にそのままベットの中で死んだとは思えないけど、それ以上の記憶がないってことは最期まで意識は戻らなかったのだろう。


 …そもそも、あのボクが15歳まで生きられたのが奇跡みたいなものだったんだ。元より生に未練はないし、両親との別れもずっと前から受け入れていた。

 むしろ無理して最先端医療を次々と試してくれた両親には感謝している。まぁ二人とも働き過ぎであんまり会えなくて、ちょっと寂しかったけど。

 あー、でも学校には通いたかったなぁ。入学式の2週間後にちょっとだけ様子見に行ったけど、とても素敵に思えてワクワクしたのを覚えてる。


 いや、転生したんだからいずれ学校には通えるよね! どこの国か知らないけど、生活水準からして学校に行かない可能性は…可能性、は…。

 って!! そもそもわたし、このお屋敷の敷地から外に出た記憶がない!?

 いや、身体は丈夫なんだと思う。前世のアレなんかと比べるまでもない。年に一度も風邪を引かないってチートじゃないかな?

 でも、なんか箱入り娘っぽい扱いが厳重過ぎる。今の時点で家庭教師役の使用人がいるし、ずっと家庭学習ってことにはならないよね? ならない、よね?

 だってわたし、こっちでは他の子供の姿を一度も見たことないんだよ!? それってちょっとおかしくない?

 お屋敷があんまり広くて不自由を感じなかったし、そもそも前世の記憶がなかった頃のわたしには「他の子供」っていう概念すらなかった。 でも、今なら分かる。


 …そう、ここはびっくりする程広いお屋敷で、使用人もたくさんいる。

 わたしはいつもドレスみたいなヒラヒラの服を着せられていて、扱いはまるでお姫様だ。

 いや、これまでのわたしの記憶から推察するに、きっと本当にお姫様なのだろう。

 以前のわたしの記憶の片隅に、グスタフお父様がわたしを膝に乗せクンカクンカしながら誇らしげに語っていた。


 曰く、ルルー家は代々ナルガ王国の西エイグロフ領を治める侯爵家であり、国の防衛の要なのだとか。

 大領地ではあるが王都セレファイスから十分に離れているため、むしろ国王からの信用度は高いらしい。


 えっと、侯爵って上から2番目? うん、完全にお貴族様だこれ。しかもわたし貴族の一人娘とか、完全にお姫様だし。

 貴族令嬢かぁ…将来はお家のために頑張らなきゃ。弟でも生まれたら別だけど、いずれわたしが婿を…うへぇ…ちょっとカンガエタクナイ。


 それと、お父様は他ならぬエイグロフ卿であるにも関わらず、騎士団の名誉顧問として剣を振るうこともあると自慢しまくっていた。

 何してんだお父様! 確かにお父様は硬そうな茶色の髪に似合わないカイゼル髭をたくわえた高身長な美丈夫で、身体も逞しくなんだか強そうに思える。ってか身長190センチはあると見た。羨ましい。

 でも領主が名誉顧問って傍迷惑な…有事の際は前線に出るとか言わないで欲しい。


 って、聞いたことのない国名に国の防衛が辺境伯の騎士団って…もしかしなくても時代が違う?

 でも中世ヨーロッパとかとは雰囲気や生活水準が色々と違うし、それにボクの知識(・・・・・ )にそんな国やらは無い。


 …………

 ヤバい、これ異世界転生かも知れない。

色々と不備があると思いますので、気にかけてくれる心優しい方がおりましたら感想等で指摘して頂けると作者も嬉しく思います。

ちなみにストックはすぐ切れます。そこから先は行き当たりばったりです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ