004話
仕事と練習で時間がないため、少しずつしか上げられない……
でも最低でも週1~2で更新していきたいと思ってます。
話が違ぇ。
確かこいつらが、
「色々あるけど、とりあえず町に戻ろうよ! そうすれば潤さんにだってお返しができるし!」
とか言っていたように記憶している。
色々疑問は尽きないがここが日本でない以上、何をするにしてもとりあえずはこいつらの助けが必要だと判断し、一も二もなく賛成した。
そうしていざ出発という段になって4人が一斉に違う方向に歩き出したのを見たときは出来の悪いコントを見せつけられてる気持ちになった。
「マジかよあんたら……?」
俺が溜息を吐いて呆れていると、4人は一斉にワタワタしだした。
「ええ、確かこっちの方向じゃなかったか?」
「あたしが知るわけないだろう」
「じゃあ何であんたも勝手に進んだのよ!」
「ん~、いずれにしろ誰も来た道を覚えてないわけね。」
「……そもそもてめーらはこの森に何しに来たんだよ?」
そう問いかけてみる。
「あれ? そういえばなんであたしたちはこんな所にいるんだったかしら?」
「薬用キノコの採集クエストを受けて森に入ったな」
「それで採集は無事に終了したけど、その帰り道にあのレッドオーガに出くわして―――」
「必死に逃げているところを助けられたのよね」
「逃げ回っているうちに方向が分からなくなったってことか」
四人が一様に気まずげな表情を浮かべている。
「とりあえず、人里の場所さえ分かればいいな?」
「それはそうですが、そんなことどうしようも―――」
俺は辺りを見回して、見える範囲で一番高い木を見つけてよじ登った。
木の窪みや蔓を使ってするする上っていく俺を見てとんがり帽子が、
「凄い……猿みたい!」
頭の悪い例え方をしやがってカチンときたが、どうにかてっぺんまで辿り着いた。
木の上から辺りを見回すと、緑がまるで海原のように広がっている。
地球上にあるジャングルで、ここまで広大なものは俺の知る限りアマゾン以外に思いつかない。
だがここはアマゾン、いや、それどころか地球ですらないのかもしれない。
あの4人組が身に着けていた時代錯誤な鎧やら剣、その上魔法のようなものまで使っていたし、色んな話がまるで噛み合わない。
となると、やはり俺は神隠しの類に巻き込まれたと考えるのが妥当だが―――
「大丈夫ですかー?!」
あー、そういや人の住む集落を探さなきゃならなかったな。
さっきからついつい考え事をしてしまう。
人里に着いたら色々話を聞かないとな。
後ろを振り返ると、森の緑が途切れて平原が広がっているのが見えた。
その平原には整備された道のようなものが幾筋か伸びており、そのうちの一つの先に城壁のような建物がある。
恐らくあれが連中の言っていた街なのだろう。
「ここから7キロくらい先、森が途切れて平原が広がってるのが見えるぞ! そんでその先に城壁もある!」
「それです! それが我々のいた街です!」
とりあえず街のある方角は覚えたからとっとと向かうとしよう。
「方角が分かったから今降りるぞ!」
「ありがとうございます! ゆっくり気を付けて―――」
リーダー格の男(確かミシェルとか呼ばれてたな)が何かを言いかけたが、俺はそれを待たずに木から飛び降りた。
「っし。じゃあとっとと行くぞ」
と街の方へ歩を進める。
「あ、あんな高さから平気で―――」
「信じらんない……」
「あの人、やっぱりとぼけてただけで実はミスリルランクの冒険者なのかしら!!」
「いずれにしろ只者ではないようだね」
「あんたらおいてくぞ?」
「も、申し訳ない! 今行きます!」
◇◇◇
森を抜けたのは、木に登っていた時に真上にあった太陽が地平線の向こうへ沈みかけている頃だった。
俺一人ならもっと早く森を抜けられたのだが、足手まとい共のせいでだいぶ時間を食ってしまったのだ。
こいつら、特にとんがり帽子のジャリガキが転んで汚れる度に俺にやって見せたような魔法(?)でいちいち綺麗にするわ、疲れたから休みたいと駄々をこねるわ、お腹が空いたと泣き叫ぶわで何度も置いていこうと思った。
もし他3人がそんな俺の様子に気が付いてとんがり帽子を叱っていなけりゃ本当に置いてったと思う。
どれだけ甘やかされて育てられればああなるのか知りたいわ。
「それではご入浴の準備ができるまで、今しばらくお待ちくださいませ」
だがしかし。
「何か御用がございましたら、そちらのベルを鳴らしていただければすぐに参ります」
これなら納得する。
「それと、当家のお嬢様方を助けて頂きまして、誠にありがとうございます」
まさかあの4人組が姉妹で、その上いいとこのお嬢さんだったとはな……。
しかもてっきり男だと思っていた重装備のリーダー格が、ずらりと並んだ使用人たちから声を『ミシェルお嬢様』なんて呼ばれたのを聞いたときは思わず、
「えマジで?」
と言ってしまった。
しかし幸いにもその呟きは彼女の耳に届かなかったようでほっとした。
もし聞こえていて傷つけちまったら申し訳ないからな。
「お客様。入浴の準備ができましたのでどうぞ」
◇◇◇
実にいい風呂だった。
広い湯舟を独り占めしているときの贅沢感と言ったらなかった。
風呂を頂いたあと、また学ランを着ようと思ったら向こうが衣服を用意してくれたので代わりにそれを着ることにした。(今まで着たことのない類の服で、着るのに少々時間がかかっちまった)
その後しばらくしたらメイドが食事の時間だというので食堂に連れていかれた。
そこには俺が助けた4人がやたらと広いテーブルに着いて俺を待っている様子だった。
「それでは改めまして、私はこの一帯を治めるシュトルンフォード辺境伯家が長女、ミシェル=シュトルンフォードと申します」
ごつごつの鎧を脱いでドレスを纏っているミシェルは第一印象にあった男っぽさが皆無で、正しくいいところのお嬢さんといった感じだ。
兜を被っていた時には気が付かなかったが、肩の辺りまで伸ばしたブロンドの髪が美しい。
「あたしは次女のサラ=シュトルンフォードよ。ねえねえ隣に行ってもいい?」
「サラ!お前はまたそんな……いい加減にしないか!」
「ぶー、何よお姉ちゃんのケチ!」
サラもミシェル同様高そうなドレスを身に纏っているが、こちらは第一印象同様にスカートよりもホットパンツが似合うように思う。
胸も慎ましいもので、先程胸当ての上から腕を胸に押し付けられたが、この様子だと胸当てがあっても無くても感触は変わらないかもしれない。
「……なんか失礼なこと考えてない?」
おっと勘が鋭いようだな。
「そんであたしが3女のメリッサ=シュトルンフォードだ」
メリッサは他3人が着ているようなドレスは着ておらず、先程着ていた修道服のままだがフードだけは外している。
上の二人の真っすぐなブロンドヘアーと違い、メリッサの髪は赤みがかった癖毛になっている。
そしてその顔には化粧がされていないにも関わらず、きりっとしていてとても整った顔だちをしていて、改めてよく見るといい女だ。
無論上二人も綺麗なのだが、なんというか、メリッサは何となく俺と近い波長をしているように思う。
「イチャ=シュトルンフォード! 4女よ!」
魔法を使って見せたとんがり帽子のちびっ子ことイチャは、腕を組んでふんぞり返っている。
現在その頭の上に帽子は無く、上の二人と同じブロンドの髪を所謂ツインテールにしており、それが元々の幼い外見をより幼く見せている。
「俺は仙道潤。まあ自己紹介はもういいだろう? それよりも聞きたいことがいろいろあってよ。ちぃっと教えてくれるとありがたい」
「それは勿論ですが……どういったことが知りたいのでしょうか? 国家機密に触れることだと流石にお答えするわけには―――」
「んじゃあそうだな……まずはここがどこか教えてくれるか?」