001話
普段は読むの専門だったのですが、こういう話があったら読んでみたいなと書いてみた次第です。言ってしまえば、まあオナニーみたいなものなので、ひっそりゆっくりやっていこうと思いますですはい。
パラリラパラリラー!
ブッブー!
ブォンブォン!
河川敷に集まったのは数十台の改造車やバイク。
「仙道ぉぉ! てめぇの言う通り軍団で相手してやらあ!!」
それらに乗っている面々は一般人のそれと異なり、派手であったり厳つかったりと、およそ社会的な人種ではないのは明らかだ。
「今さら泣いて謝っても許さねえからなくるぁ!!」
そんな彼らが取り囲んでいるのは一人の男―――俺だ。
「んんんだあぁあ?! くるあああああああ?!」
この状況を前にして俺はただただ不機嫌だった。
「糞まみれにして殺してやるけえのお!!」
もう何度繰り返したかわからないこの状況に対して。
「スました面してカッコつけてんじゃあねえぞくるぁ!」
きっと、手加減してやったことが間違いだったんだ。
「あれしきで俺らをやったつもりかぁぁぁああんんん?!」
しかし、どれだけ殴ればいいのだろう?
「でけえ事言っといてブルってんのか?!」
どれだけ潰せばいいのだろう?
「俺ら『愚零斗』に舐めたことして生きてる奴ぁいねえからなあ!!」
どれだけ血を流せばこいつらは学ぶのだろう?
「死にさrぶぐぉおおおお!」
俺とこいつらとの格の違いを。
「ねえ聞いた? 昨日の事件」
「あれでしょ! 河川敷にこの辺りの暴走族が集まった事件!」
「そうそう! あれって例のあの人一人と喧嘩するために集まったんだって!」
「俺その話聞いたときは、さすがに今度こそあの人も危ないだろうなーとか思ってたんだ」
「お前まだあの人の『異常さ』を分かってねえのな? 素手でトラックを潰す人だぞ?」
「あの話マジなの?! 俺眉唾ものだと思ってたよ!」
「パパが昨日仕事帰りに河川敷の近くを通ったらね、たくさんの壊れた車とかバイクが運ばれるのを見たんだって!」
「えー、何それ怖い。それってやっぱり……?」
「あの人以外考えられないでしょ!」
「で、相手はどうなった? 今度こそ誰かしら死んだか?」
「今回も誰も死んでないってよ」
「また?! いっつも大暴れしてるのに誰も死なないなんて、それはそれで凄いな!」
「しっ!校門にあの人が来た!」
先程まで賑やかだったのが嘘のように校舎が静まり返る。
校庭で朝練をしていた運動部の者たちも、校門にその男が現れた途端に動きを止めた。
男はけだるげな様子でのそのそと校庭突っ切り、校舎の裏手へ回った。
校舎の裏手の敷地の端に粗末なトタン造りの掘っ立て小屋がある。外壁や屋根は所々が錆びていて、今にも崩れてしまいそうな雰囲気だ。
その掘立小屋の中に男の姿が消えていくと、静まり返った校舎内の生徒たちは安堵の溜息を吐き、運動部の生徒たちは朝練を再開した。
俺は辟易している。
この生きにくい世の中に。
初めは部活の先輩のいびりに反抗したこと。俺の面が気に食わないと理不尽なことを言って殴ってきたから殴り返したらそいつが一発で伸びてしまった。それに気づいた他の先輩共が複数で俺を取り囲んで殴ったり蹴ったりしてきたから、自分の身を守るために精一杯抵抗した。
たくさん殴られたくさん蹴られて俺はボロボロになっていったが、それと同じだけやり返していったらいつの間にか先輩共が死屍累々としていた。
その後顧問の先生に見つかってこの件は大問題となったが、現場の様子や他の生徒たちの証言から、俺の正当防衛であったと証明され、俺はお咎めを受けずに済んだ。
しかし、多対一で部活の先輩を病院送り(無論俺も怪我を負わされたので、連中とは別口の病院にしばらく入院した。入院期間は先輩共より圧倒的に短く済んだ)にしたことで、他の上級生、特に柄も素行も悪い連中から目をつけられてしまった。
ある時、そいつらは下校しようとしていた俺を取り囲むと有無を言わさず校舎裏へ連行した。
そこには以前を上回る数の上級生が、俺を殺す気だったのか知らないが、金属バットや竹刀などの武器をもって待ち構えていた。
「お前最近調子に乗ってるみたいだな?先輩への接し方を教えてやるよ」
中心的な人物であろう金髪の上級生はにやにやとそんなことをのたまった。
泣いて謝るなどして許しを請うのがこの場合は普通なのだろうが、俺はとりあえず真ん中で余裕の表情を浮かべて話している金髪野郎に詰め寄るとそいつの鼻っ面に拳を叩き込み、そいつの鼻と前歯を折った。それが大乱闘開始の合図となる。
結果、この間以上の大怪我を負わされたものの、十余名の上級生を一人残らず叩き潰した。
この一件で俺はいつの間にか『番長』のレッテルを貼られてしまい、友達は離れ、周りの不良共から目をつけられるようになった。
その後は相手が変わっていくだけで同じようなことの繰り返しだ。
他校の不良、チーマー、暴走族―――地元の反社会的な連中を叩き潰したと思ったら、今度は他県からもやってくるようになった。
どこから来てもどれだけ数を集めても結果は同じ。
最終的には喧嘩を売った連中が倒れ、俺が立っている。
変わった点と言えば、そんな日々を繰り返していくうちに怪我を負わなくなっていったことと、なんか素手でトラックを破壊できるようになったこと。要は喧嘩が強くなった。
でも正直に言って、そんなことはどうでもよかった。
確かに強くなったことで俺に喧嘩を売るやつは大分いなくなったが、そもそもの話、別に喧嘩が強くなりたかったわけではない。我を通していたら色んな奴に因縁をつけられるようになってしまい、止む無く喧嘩を続けていたというだけで、俺は別に不良ではない。本当は部活(バスケットボール部)に青春をかけたかったのだ。
だがどうも俺は体育会系と言おうか、上下関係と言おうか、儒教的思想と言おうか、上から目線の物言いと言おうか、とにかくそれらが大嫌いで、そういうものが自分に向けられるとついつい反発してしまうのだ。口で言われたら口で、態度で表されたら態度で、手を出されたら手を出し返していき続けていくうちにこうなってしまった。
その結果が一般人どころか不良共にさえ恐れられ、教え導いてくれるはずの教師たちですら怖がって俺に近づこうとせずに、「登校『だけ』してくれれば単位はやる」と、俺をこんなボロ小屋に押し込む始末だ。実の親も、喧嘩ばかりを繰り返す俺を見限るようになり、高校入学を機に一人暮らしを強いられてからは会っていない。
自業自得と言われればそれまでだし、自分の生き方を貫いた結果だと納得はしているが、生きにくいことこの上ない。今はまだよくても、いつまでもこんなことが続くようじゃもう一般社会で生きていくことはできないだろう。
本当嫌になる。
そんな周囲も、こんな自分も。
◇◇◇
どこにもないが、どこかには存在する場所。
「やあセメリウス、よく来てくれたね!10000年ぶりくらいか?」
男が声をかけた先には、身の丈2mを超える長髪の大男が腕を組んで身構えていた。
「12530年ぶりだ。全く、長らく連絡すらよこさなかったかと思えば急に来いなど―――」
「まあまあそうぶつくさ言いなさるなよ。久しぶりに会ったんだ」
「……勝手な男だ。で、用件はなんだ?こうして呼びつけたからには何かあるのだろう?」
「それはもうちょっと待ってくれ。他の3柱も呼んでいるから全員が集まってから話そう」
「なに?一同を呼びつけていたのか?そんなことをして管理は―――」
「大丈夫だって!創世から早数万年。皆もそろそろ暇を持て余し始めてる頃さ。そうでなきゃ君も来てはくれなかっただろう?」
「暇だと?馬鹿を言え!貴様の尻拭いでこの数千年休む暇もなかったわ!」
「まあまあ落ち着いてマイヤー。そのおかげでこれだけ人の子らも進歩できたわけだし―――」
「開き直るでないわ!」
「あははは」
「もうよいわ……だが全員が来るとは限らんぞ?あれで皆なかなか気まぐれだからな」
「ふふん。そこはちゃんと興味を持つような誘い方をしたからね。まあ唯一シオフラニが重い腰を上げてくれるかどうかってところだけど」
「あやつは人の生活さえ覗き見ていれば満足だからな。最後に会いに行った時も、俺を一瞥もせずずっと下界ばかりを眺めていたよ」
「どこを見たって同じことの繰り返しだというのに、よく飽きもせず―――」
「……どうやらお出ましのようだな」
「やあやあみんな久しぶり!早速だけどね、みんなに提案があるんだ!というのは―――」