人の異変 3
本当にすぐ真妃が帰って来て、ジャンヌが取り付いて真妃の記憶が戻った。真妃に今まで起こった事を話して、作戦を考える事にした。
そして翌日・・・
「可憐、おはよう!」
「・・・おはよう。」
「あぁ、おはよう・・・」
昨日と同じように美紀とネリーが挨拶をした。そんな事より作戦だが、修羅の時と同じ作戦を使う事になった。今回は南がいないが、ネリーは僕を信用している為、銃で怯ませたり戦ったりする事は無いだろう。
「やっぱり朝ごはんを食べながら漫画を読むのは凄く楽しいな!」
「・・・ネリー、行儀悪い。」
「何言ってるんだよ、可憐だってゲームと携帯をやりながら・・・あれ、いつもはやってるのに今日は珍しいな。」
「え・・・あぁ、行儀が悪いからな。」
「いつもは、行儀なんて昔の頭の固い奴が決めた一部の奴の食事を阻害する鎖でしかない!とか言うくせに・・・」
「あ・・・えっと・・・」
「・・・朝ごはんが冷めるよ。」
「それもそうだな。」
ネリーは食事を再開した。
「では、授業を始め・・・おい花坂、どうした?」
「何ですか片山先生、僕はどうもしてませんよ・・・」
「いや、どうもしてるだろ!明らかに異常事態だろ!」
「例えば・・・?」
「まず、いつもは小学校から大学まで習う全ての教科を紙にまとめてゲームするのにきちんと教科書とノートと筆箱を用意している所。次に敬語を使った所。最後に・・・」
「最後に・・・?」
「さっきからお前の腹が鳴っている事だ!しかもうるさ過ぎだ!」
言われてみればそうだ、でも・・・
「最後の方はともかく、最初から二つは良い事じゃないんですか・・・?」
「まぁ、正論だが・・・おい猫山!花坂は一体どうしたんだ!?」
「さぁ・・・今日は朝ごはんを全然食べませんでしたし・・・」
「別に問題ないでしょう・・・?確かにお腹は鳴っていますが、授業に支障は・・・」
「腹が鳴っている時点で騒音被害だ!!直ちに何か食べて来い!!」
「私も行きます!」
あぁ、ネリーも付いて来てくれるのか・・・面倒くさいな・・・
「可憐、本当にどうしたんだ?」
どうしたかと言えば・・・一昨日までのネリーや真妃とは全然違っているからだが・・・理由は他にもある。これまでの事は全部演技だったのだが、このままでも別に良いんじゃないかと僕は思っている。何故ならネリーは僕の彼女で幸せだろうし、一昨日までと違う事は少数しか知らない事だからだ。なので少数である僕たちが頑張る必要は無い。かと言って、一昨日までと違う世界に違和感を感じて過ごしたくはない。でもその内慣れるんじゃないか、そんな風に僕は迷っている。
「ほら、パンでも買おうぜ!」
「パンか・・・いいよな、パンは。」
(パンは美味しいよな・・・パンは最高だよな・・・パンはご飯より栄養あるし・・・色々種類があるし・・・本当にパンは・・・)
そんな事を思っていたら、突如に電話が鳴った。
「なんだよ・・・誰だ・・・?」
「無事授業を抜け出した様だな、そろそろ作戦を開始するぞ。」
「作戦・・・?なんのことだよ真妃・・・」
「おいおい、しっかりしろ!六道輪廻の人を、ネリーから追い出すんだろ?」
「なぁ真妃、お前は一昨日と違う世界についてどう思ってる?」
「・・・正直に言えば、こっちの世界の方が良いと思っている。何故ならこの世界では僕は賞金首では無く、ただの海外の高校に通うお前の兄だ。」
「だったら・・・」
「だけどな、今の俺は前の世界にいた頃の様に超人では無い。それに前の世界に比べたら退屈なんだよ、新夢現実とも戦えないし好きな時にお前の家に行ってゲームも出来ないしな。それにネリーがお前の彼女でいる事が幸せかどうかは分からないが、それは人の機嫌次第で簡単に崩れ去るんだろ?それでもこの世界にずっと住んでいたいと思うのか?」
住みたい訳が無い、機嫌次第で簡単に崩れ去るなんて嫌に決まっている。
「だけど、それは会社とか学校とかでも同じで・・・」
「確かにそうだな、平和とか平凡なんて物は強い者の機嫌次第で簡単に崩れ去る。」
「だったら・・・」
「でもさ、お前他人の平和が崩れるのを恐れるような奴だっけ?」
「え・・・?」
「だってお前は今の世界をどうとも思ってないだろ?考えているのはネリーの事だけじゃないか。お前他人をそんな風に思う奴だったっけ?」
確かに・・・僕はあの時、全人類を嫌った。なんで今更・・・
「もしかしてお前、ネリーに惚れたか?」
「・・・いや、友達だから気に掛けてるだけだ。」
「そりゃそうだよな、可憐が誰かを好きになる訳ないよな。逆ならともかく・・・」
「逆ってなんだよ。」
「なんでもない!それでどうするんだ?このままにしておくのか?」
「・・・まさか、そんな訳ないだろ。」
僕は自分を取り戻し、そして人と戦う覚悟を持った。




