1ー5 千年の迷宮
死の神が消えて1000年 。
人が「死」に順応する時代が来た。
長い長い年月の中、人間は死から逃れられないことを理解した。そして、方法によって、死を先伸ばし出来ることを学習した。
死の神より刻み込まれた死の恐怖と苦痛。
人は、弱い者から死ぬ。
貧しい者から死ぬ。
ならば、強く富む者は生き伸びる。
人は生命に貪欲なる魔物となった。
1つは「国」
豊かな国に属し、強き王を選ぶ為に人々は集った。飢えぬように土を耕し、弱らぬように金を作り出し、減らぬように子を産み、奪われぬうちに奪い、殺されぬように殺しあった。千国家を巡る千年の闘争は、人の心を荒廃させるに十分であった。
1つは「聖騎士」
エルスの残した騎士団は、聖銀と呼ばれる鉱物を使い、封印された死の剣を守ってきた。
彼らの真なる目的は、残されし不死の剣の捜索と封印。死ぬことの無い悠久を取り戻すことである。
千年前よりの記録を持つ、彼らの歴史と戦力は、どの国の王も無視できなかった。
彼らは、死の剣を納める聖地を中心に、各地に教会を建て、信仰と名乗る勢力を伸ばしていった。
そして、もう1つ
死の力を利用しようとする者達がいた。
それは、絶対的な死の神を崇拝する者。
彼らは国を追われ、聖騎士と対立しながらも、伝説の不死の剣を探し求めた。禁術とされる死の秘術『死霊術』と会得するためである。
死霊術士は、災厄の象徴として恐れらるようになった。
千年の時が、3つの道を創った。
しかし、どの道を選べど、多くの者が不幸の中に死んでいった。命に貪欲になればなるほど、死者は日毎に増えていった。
人間は、完全に生き詰まっていた。