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1ー2 無眼のエルス
人を圧倒した死の神は、自分の奴隷兵達を地上に遣わした。人間は死の神に悟られぬよう、僻地に隠れ住むまでになってしまった。
そんな追い詰められた人々の中に、エルスという盲目の娘が産まれる。産まれから、何故か両の目のないエルスを、集落の者は忌み嫌った。人々は、エルスの症状を死神の呪いだと囃し立て、彼女を虐めに虐め抜いた。
それこそが、生き残った人々に出来る『救い』だったからである。
だが、現実を逃避し続ける集落にも、死の神は等しく訪れた。
多くの者が、エルスとエルスの家族を生け贄にしようと努めたが、死の神は一言も語ることなく、エルス以外の全ての者の魂を奪いとってしまった。
死の神は、一人になったエルスに、自分の妻となることを求めた。しかし、エルスはこれに応じず、私を殺して欲しいと神に願った。
初めて、自ら死を欲する人間を見た神は困惑し、妻にならなければ、両親の魂は返さないとエルスを脅し去っていった。
全てを奪われたエルスは、やむなく、神の住む地底を目指すことになった。
11月29日 修正とタイトル編集