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不死物語り  作者: ジャス
3/9

1ー1 死の神様

「おお。きたか。待っておったよ。さあ、そこは寒い。暖炉の前へおいで。ん?大丈夫じゃよ。ワシはちっとも眠くない。お前のパパは、他人に遠慮することこそを美徳としておるがな。それは、身内にとって、寂しく感じることと知らなんだよ。

さて、リディー、お前がワシの本に興味を持ってくれたことが、ワシは何よりも嬉しいよ。このお話は、お前には少し難しいかもしれん。でも、気にするな。わからなければ、わかる頃に、もう一度読めばいい。そうすると、今とは違う感覚や楽しみを見つけることが出来るよ。


では始めようか。

これは、リディーが生まれる前、お前のパパや、お爺ちゃんが生まれる、ずっと、ずーっと昔の話だ」





その昔、まだ人が生まれて間もない頃、人は「死」というモノを知らなかった。「死ぬ」という出来事が起こらない時代があった。

その時代の人は、日がな一日寝ていても、腹が減ることはなかったし、月日が経ち、身体が大きく育っても、老いることなく生き続けることができた。

腹も減らぬから、他の獣と争うこともなく、仮に手酷く噛まれても怪我さえしない。無論、病を罹って、血を吐く様なこともなかった。

人は、平和に祝福された生き物であった。唯一問題があるとすれば、余りにも平和過ぎて、自分達の数が中々殖えないことであった。

人は、永遠とも言える時間をかけ、ゆっくり、ゆっくりと世界にその数を増やしていった。


ある日、「死」と名乗る神が現れた。


死の神様は、黒い汚泥で作ったマスクを被り、自分の髪で編んだマントを身体に纏っていた。人は、死の神の滑稽な姿をひどく嘲笑ったが、神はそれ以上に残忍で傲慢な性格であった。


死の神は言った。

「貴様らに終わりを教えてやろう。そこから始まるは私の世界。血も、肉も、魂も、全て私に属すこととなる」


彼は、その力を持って、人に死を知らしめた。

夜影に忍び、吐息に病に混ぜれば、肉も血もたちまちに腐り落ちた。清き魂が天に帰らぬよう、朽ちた肉体の中へ縛ると、自らの支配する地底の世界に、死の奴隷として閉じ込めていった。


人は、永遠を奪われた。

人にとって、死を知ることは絶対的な恐怖であった。


その一秒先、隣の誰かが死んでいるかもしれない。さらに、その一秒先は、自分が死ぬのかもしれない。


人は、生きることに本気になった。

絶対的な恐怖から逃れようと、もがき始めたのだ


毎朝、早く目覚めると、集落の全員で木を切り、鉄を打ち、夕刻迄に揃える限りの武具と灯りを準備した。夜は息を潜め、寝ることも忘れて薪を焚べ、物音がすれば、一斉に武器をとり騒ぎ立てる。

それでも、翌朝、目を開けると、人数は減っていた。死の神は誰も許さなかったし、誰一人として逃さなかった。

人間は完全に無力だった。残る者に出来ることと言えば、奪われた者の代わりに、大地に墓標を建てることのみ。


人が減り、

木が減り、

獣も減り、


只、石と鉄だけが世界に犇めいた。

毎度、読んで頂きありがとうございます。

贅沢にも、コメント・感想募集中でございます。


10月18日改稿1

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