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その物語について2
モンテ爺さんの自慢話―アブ村老人会にて―
~前略~
それがな。孫がこの前、あの本を読みたいと言い出したんじゃよ。そうよ。『不死物語』懐かしいじゃろう。ワシも親父に買って貰った本よ。ああ、そうそう、倅はワシに隠れて読んだが、序盤で女房の布団に逃げ込んだんだ。ワハハ。昔はワシも布団をかぶって読んだよ。
あ?うん。そうじゃ。あの子には、ちと難しい言葉が多いだろう。だから、ワシが読んでやることにしたのよ。なんせ、何度も何度も読み潰したからな。
うん?…大丈夫なのかって?9才の娘には教育上よろしくないと?いやいや、そういう決めつけがいかんのだ。他所の娘は、役にも立たん恋のおまじないじゃなんぞと言うとる時期。あの子は、あんな難しい本が読みたいと言うんじゃ。殊勝な子じゃよ。あの闇と死を巡るファンタズム。その辺の娘っ子には理解できまいよ。ガハハハ…
のう。お前、どう思う。大丈夫かな。ワシの孫。
~以下略