クロイツヴァルの光弾
「どうしたの? 柱に隠れてばっかじゃ日が暮れるわよ」
「その攻撃に当たれって言ってんのか!? 」
そう、俺は開始から数秒で嵐のような攻撃を目の当たりにした。
ほんの十分前のことだ。
「いでよ我が武器、クロイツヴァル」
対戦相手の少女、桐篠 盟がそう呟くと少女の右手に淡い光が集まると、なんと漆黒色のライフルが現れた。長さは猟銃程でその黒の上に黄色いラインがいくつか刻まれていた。
少女は銃口をこちらに向けると一言、
「チェック」
と言った。この時のチェックとは多分、西洋のチェスというやつで決まりそうな時に言う言葉だろう。
まぁ俺は簡単にやられる気は無いがな。
銃声が闘技場に響き渡ると銃口から光の弾丸がこちらに急接近してきた。
スレスレのところで避けた。ふと振り返ると俺の後ろの壁がえぐれていた。
おいおい、なんつー威力だよその凶器。
「あら、避けられたのね。おめでとう」
「なんで褒めてんだよ」
「だって、私の光弾はとっておきだからよ」
光弾、か。なるほど、だからあれだけの威力とスピードがあるのか。
「じゃあ、もう一度チェックよ」
「またかよ」
バァンと銃口から光の弾丸が俺めがけて飛び出してきた。今度は余裕でかわせた。
「このくらい序の口……」
しかし、何かがさっきと違った。なんだ? この違和感。
「気づくのが遅いわ、弾が一発って誰が言ったの? 」
しまった!! 光っていてよくわからなかったがあいつは一発目の弾丸の後すぐに二発目を放ち、一発目の弾丸の軌跡上に二発目を隠したんだ
俺が避けた弾丸が壁に激突。その後、その勢いで二発目の弾丸が跳ね返り再び俺に急接近してきた。
俺はそこを根性でギリギリかわした。いや、右腕にかすった。かすっただけだというのに傷ができ、激痛が走った。
「ぐっ! なんだその化け物みたいな武器」
「どうもありがとう、よく言われるわ」
ですよね、言われなきゃおかしいですよね。
「でも、すごいのはクロイツヴァルだけじゃないわ」
「他にはなんだ? 」
「私の頭よ」
「そういうのは自分で言うと説得力なくなるぞ」
「うっうるさいわね一々、細かいのよ! 」
そして少女は次々と光弾を放ち始めた。
いくらなんでもこの数は無理だ。どこかに隠れるしかないな。
丁度そこで目に入ったのが闘技場の柱だった。時間稼ぎにはなるか、とりあえず作戦をねらないと。
そして現在に至る。
やべぇ、全然思いつかねえ。どうすりゃいい。
そう考えているうちにもどんどん弾数は増えていく。
「つか弾切れとかねぇのかよ!! 」
と言うとそこで銃弾の嵐が止み辺りが静かになった。
「残念ながらありえないわ、なんたってとっておきですもの」
「大したとっておきだ」
これはちょっと参ったな、普通銃撃戦には弾切れが相手のスキだが、それがないとなるとかなり厄介だ。
「仕方ね、俺も使うとするか」
「何よ、本気じゃなかったの? 」
「ああ、本気を出させてくれる暇が無かったからな」
「何それ、褒め言葉なの? 」
「んー、まぁそうだな」
俺はそれだけ言って柱の影から出た。
「さぁ、行くぜ。悪いが俺は百パー勝つ」
笑える冗談か、それとも本当に全力を出してなかったのか。
何考えてるのよ、たとえ凜道が本気になっても私、桐篠 盟が負けるはずないわ。
「百パーね、あなたが百パー負けるならわかるわ」
「いや、俺は百パー勝つね」
「どうだか! 」
そう言い、私は再び銃弾を放ちまくった。だが、さっきと違った。なぜなら、凜道は全く避けようとはしなかったからだ。
「諦めるっていうのは知ってるようね」
凜道の立っていた所は砂煙が立ち込みよく見えない。でも、返事がなかった。
が、次の瞬間私は驚愕した。
「おいおい、そんなもんかよ」
砂煙が晴れ、辺りがよく見えるようになるとクレーターの様な凹みが闘技場に出来ていた。
だが、私が驚いたのはそこじゃない。凜道が、クレーターの中心に立っているのだ。
「そ、そんな。私の光弾をどうやって……」
「簡単さ、俺の強度を上げたんだよ。残念ながら無傷というわけにはいかなかったが」
足元を見るとさっきまでなかった少しのかすり傷が見えた。
「さて、反撃といくか! 」
「させないわ! 」
少しでも傷がつくのなら、一点を狙えばいい!
凜道の足元に光弾を数発放ち、後ろに跳躍した。
砂煙が舞い、その中から凜道が上に跳んでこちらに向かってきた。
「空中なら!! 」
再び光弾を放つと凜道の腕に命中したが、それほどのダメージではないのかそのまま向かってきた。
「そらよっ!! 」
ドンッと鈍い音がするかと思うと、凜道が闘技場の床を殴っていたのだ。
「うわっ! 」
思わず声をあげてしまった。砂煙が舞って、再び周りが見えなくなると急接近してきた影があった。
が、もう遅い。応戦する暇も与えてくれなかった。
砂煙がなくなると、目の前に凜道の拳が見えた。顔に当てる寸前で止めていたのだ。
「王手だ」
試合終了の合図の鐘がなった。
To be continued…
どうもお久しぶりです。忘れた頃にやってくる紅影 です。
えーっと、もう学生のテストというのは大嫌いです。はい、テストという恐怖に追われていましたが、やっと終わりました。
結果はたぶん……最悪だと思いますって何を言ってるんだ私は!!
すみません、忘れてください。では、次回の空虚喪失の能力者も宜しくお願いします。