始まりの鐘の音
そして、遂に来た魔武による戦闘の日。
「クラス決めか……正直どこでもいいな」
「凜道! だめだよちゃんとしなきゃ」
ちょっと涙目の奏音が言ってくる。ちなみに奏音は入学しようとして許可証を貰いに行こうとしたら却下されて帰ってきた。
「私は入れなかったのにぃぃぃぃ!! 」
「そう妬むなよ。お前は普通に歳が足りなかっただけだろ」
「凜道! 女の子に歳の話をしちゃいけないんだよ!!」
「それは申し訳ない……」
「よし、正直な子は嫌いじゃないぞー」
「調子に乗るなよ……」
俺の頭を背伸びしながら撫でてくる奏音の手を払い、宿の玄関のドアに手をかけた。
「そろそろ行くぞ」「わかってるよ」
ドアを開け朝の日差しを直接浴びながら俺達は例のジェストラード学園に向かった。
校門につくと、奏音が不意に口を開いた。
「そういえば凜道、ここって確か寮があるよね」
「ああ、そういえばそうだな」
「私はどうすればいいの? 」「あ……」
忘れてたァァァァ!! ここ男子と女子で寮が違うんだった!!
「どっ……どうする奏音! 」
「いや知らないよ、私に聞かれても」
「ですよねーー!! 」
あれ? これって本当にまずいんじゃないか?
「はぁ……凜道、そういうのはここの教師に聞けばいいんじゃない? 」
「いやいやいや、男子寮で女子と生活はさすがに……」
「その事なら私が許可しましょう」
不意に後ろから声が聞こえた。振り向くと、やや長めの紫色の髪で右手に包帯を巻いてる男が立っていた。
「アンタ……誰だ? 」
「私は舞城 紫電、この学園の教師をしてます」
右手で髪を掻きながら話してくる。なんか、右手にある包帯……厨二っぽいな……
「学園の先生が俺達に何か用ですか? 」
「凜道、そんな嫌みっぽく言わないの」
「悪いがこれが俺の普通だ」
「用件は一つですよ。クラス分けが行われる会場への道案内です」
「場所は闘技場、詳しくは学園の地図で」
「へぇ……ここ闘技場なんかあんのか……」
「一応魔武学園ですからね、そんなことより遅れますよ? 」
「やべっ! 助かった。ありがとう厨二先生」
「どういたしまして、凜道君」
その後、俺と奏音は急いで闘技場とやらに向かった。
「…………まったく、妙なあだ名をつけてくれましたね……」
闘技場に俺はギリギリ間に合った。一方奏音は入口で門番のような人達に止められて現在行方不明。
『ではこれより一対一の魔武戦闘をしてもらいます。名前を呼ばれた生徒はここに来てください。それ以外は外で待っていて下さい』
アナウンスの教師がそう言うと重そうな闘技場の扉が開き今名前を呼ばれたと思わしき生徒が二人闘技場の中に入っていった。
『では、名前を呼ばれるまでは自由時間とします』
それと同時に周囲で会話が始まった。まぁ大体内容はこのクラス分けのことだ。
残念なことに俺には知り合いや友人がいない。いや正確には一人いたが俺の記憶にはなかった。
「凜道! 」
噂をすれば…………だな。
「本当に覚えてないの? 私よ? 」
「えっと……悪いけど覚えてない」
「はぁ…………呆れたわ。そこまでの才能だとはね」
多分この女子は記憶が無くなる前の俺を知っているのだろう。
だけど、俺は研究所から得た資料でしか過去の俺についてはわからない。どこかから研究所に運ばれて実験体として使われていたようだ。
「でも、驚いたわ。いきなり街から消えちゃうんだから」
「街って……なんていう? 」
「えぇ!? それまで忘れたの? ……すごいわね」
「それは本当に褒め言葉なのか? 」
「あ……ちょっとそろそろ呼ばれるから、またね」
そう言って短い茶髪のポニーテールを揺らしながら
去っていった。
『続きまして、蒼真 凜道。桐篠 盟。闘技場に入ってください』
アナウンスがはいった。いよいよか……
闘技場に入ってわかったがなかなか暗い……と思った刹那、一気に天井についていた照明がつく。
うわっ、眩しっ……どんだけ照明つけてんだよ。
『えー只今より、蒼真 凜道 対 桐篠 盟の魔武戦闘を始める』
目の前を見て気づいた。さっきまで会話をしていたやつが目の前に立っていた。
「桐篠っていうのか……お前」
「ええ、私が桐篠 盟よ、次は忘れないでよ、バカ」
「バカは余計……ではないか」
「女相手だからって手加減は無用よ」
「確かに、手加減するとやられそうだ」
すると鐘の音が闘技場に響きわたった。どうやら戦闘開始の合図らしい。
「さぁ、いくわよ凜道! 」
To be continued…
どうも、紅影です。いろいろあって投稿が遅れました。大変申し訳ごさいませんでした。
いやー、今回は謎の女子の名前がわかりました。にしても奏音さん、あなたは何処に……
では、今回はこれで。次回も宜しくお願いします。