取り戻しに……
パァンという音と同時に俺は目を覚ました。いや、無理やり起こされた。
「…………なぁ、人を起こす時に頬を叩くなんてことは聞いた覚えが無いぞ」
「それは凜道が普通に起きないからじゃん」
「それは認めるが、だからって叩くなよ、痛えよ」
「大丈夫、凜道強いから。この水紫 奏音公認だよ」
「お前に公認されても何もねえよ」
「ほー、誰があの学園に凜道が入学できるようにしたの? 」
「それは……」
意地悪に言ってくる奏音。反論出来ないのが痛い。
「誰が凜道に魔法を教えたのー? 」
はぁ……「…………奏音だよ……」
ため息をして言った。やっと機嫌が戻って落ち着いた。
全く……面倒くさい…………
「凜道、わかってるだろうけど私達の詳しい情報はくれぐれも内緒だよ」
「あぁ、わかってる」
研究所から逃げ出しましたなんて言ったらTHE ENDだ。俺の存在はないのと等しい。
「さっ、じゃあそろそろ入学式に行こうか」
「そうだな……ってまてまてまてまて!! 」
思いっきり慌てて奏音の動作を止めた。何故なら今奏音は例の学園、ジェストラード学園の制服に着替えているからだ。
「なんでお前も着替えてんだよ、お前今何歳だよ」
「んーと、十五? 」
「十四だろ!? サバを読むな! 」
「いいじゃん一歳くらい。高齢になると十や二十はよくあること、当然のことのようになるよ」
「五十歩百歩だ、つか入学許可出てないだろ? 」
「甘いね凜道、凜道の入学許可が取れて私の入学許可が取れないとでも? 」
「まさか……既に取ったのか? 」
「まだだよ」「まだかよ!! 」
思わず転けてしまう。今の会話は何だったんだ。
「でもなんとかなるっしょ」
「いやなんねえだろ。ってやべえ、時間だ。奏音」
「はいはい、人使い荒いんだから」
そう言うと奏音は両手を前に突き出し目を閉じた。すると足元に魔法陣が展開された。
「さっ、転移魔法陣は出したよ。場所は? 」
「学園前に決まってんだろ? 他にどこかあるのか? 」
「んー……ホテルと……」「もう黙れ、行くぞ」
奏音の言葉を遮断しジェストラード学園の校門前に転移した。これ以上喋らせてもろくなことがない。
「さあ着いたよ凜道、ここが有名な魔導師、武器使いを育てたという魔武学園だよ」
「ここに、本当に俺の記憶があるのか? 」
「さあねー、私も研究所での記憶が吹っ飛んでるからねー」
「は? 初耳だぞ、なんでだ? 」
「いやそれが全く。何にも思い出せないのよ」
ヘラヘラしながら奏音は答えてきた。だが、記憶がないのは相当つらいだろう。それ以上は何も言わなかった。
「よっしゃ、行くか」「おー」
こいつ……本当に入学するつもりだ…………
入学式が無事終わった。そして明日。クラス別けを行うらしい。簡単に言えば怠慢で魔武勝負だ。
ABCDと別れておりAに近づくにつれて生徒の戦闘力が高い。
「まじかー、いきなり魔武勝負かよ」
「でも凜道強いじゃん」
「あのなー、相手が強いかもしれねえんだぞ」
「そうよ、相手が私だったら。あなた勝てないわね」
急に後ろから返事が帰ってきた。奏音もびっくりしている。
振り返ると茶髪で肩まである髪を後ろで一つに括っている少女が堂々と立っていた。
「えーっと、君誰? 」
そう、初めて会う人だった。
「え? 覚えてないの? 流石忘れることは世界最速だわ」
「そんな世界一に興味ない、ていうか人違いじゃないか? 」
「私を疑うの!? ていうか本当に覚えてないの? 」
「あぁ…………何も」
少し間が空いて少女は右手でおでこを抑えて言った。
「呆れたっ! 凜道のくせに!! 」
それだけ残して少女は走り去ってしまった。一体なんだったんだ?
「ありゃりゃ凜道、もしかして元カノ? 」
「奏音、お前は少し空気を読め」
「なっ…………嫁!? 」「ちゃうわ!! 」
もう何がなんだかわかんなくなってきたぞ。
とりあえず俺は再び奏音の転移魔法で近くの宿に泊まった。
To be continued…
どうも、紅影です。遂に二作目の小説を書けました。これからも頑張っていきたいと思います。
もう一つの作品『廻天世界と絶対者』の方もよろしくおねがいします。
では、次回会えたら幸いです。