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新しい職場は異世界でした  作者: しょうわな人


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第九話 マーケター、スキルを使用する


 どれほど固まってたんだろうか…… 


 僕を揺さぶるサーラさんの声がやっと耳に届いて僕はハッとした。


「大丈夫ですかショージさん?」


 僕の目の焦点が合ったのを確認してサーラさんにそう尋ねられた。


「あ、大丈夫です、サーラさん。ちょっと驚いてしまって……」


「ああ、分かります。外に出てホントに異世界だって認識されたんでしょう? あのビルからこちらの世界に来た時には何のエフェクトも無いですからね。初めて来た人は皆さん、建物の外に来て実感されるって文献にも書いてあるそうですから」


 文献ですか…… そうですか。僕はさっきまで貴方たちの事を病を患ってる人たちだと思い込んでました、ごめんなさい。


 とにかく、ここは異世界なんだと自分自身に言い聞かせて僕は心の中で気合を入れた。


「もう大丈夫です。切り替えました」


 これは僕の長所であると舞衣にいつも言われている。心の切り替えが直ぐに出来るのは良い事だって褒められたんだよね。うん、お兄ちゃんは頑張るよ舞衣。


 僕のその様子を見てサーラさんも大丈夫だと思ってくれたようだ。


「それではメリヤ商店からの相談について説明しますね」


 サーラさんがそう言って説明を始めた。要点をまとめると、


1.ここ数ヶ月の売上が落ちている

2.近く(十メートルほど)に出来た商業ユニオン加入の新しい商店が激安価格で販売を開始している

3.その商店の商品は粗悪品だが値段の安さで飛ぶように売れている

4.商品には自信があるが売れない現状で店が窮地に陥っている

5.店主が体調を崩してしまい商店の営業が難しい状態となっている


 以上五つの問題点がある事が分かったんだ。


「なるほど…… その商店の営業が難しいとはどうしてかは分かりますか?」


「メリヤ商店は店主のメリヤさんが一代で築いた商店なんですが、お子さんが流行り病で亡くなられていて、お孫さんしかおりません。そのお孫さんもまだ十二歳と幼く、手伝いをされていたのである程度の事は分かるのですが、細かい部分が分からずにいるそうです」


「なっ!? じ、十二歳ですって!」


「日本ではダメなのですよね? でもこちらでは子供も大切な労働力として、十歳以上であれば仕事をしても構わないという法律があります。そこはご理解しておいて下さいね」


 何ていう世界だろう。十二歳と言えば日本ならまだ小学六年生だよ。友だちと共に学び、遊ぶのが仕事なんだけど。


「えっと、それじゃひょっとして相談に来たのは」


「はい。メリヤさんのお孫さんであるイーリさんです」


 僅か十二歳でここまで考えて大人に、それも解決策を考えてくれるだろう人たちに相談に来れるなんて…… これは子供相手だとは思わずに顧客からの依頼だと認識してちゃんと仕事をしないとダメだね。


「お話は分かりました。メリヤ商店さんに向う前にその新しい商店を少し見てみたいのですが」


 僕がそう言うとサーラさんは


「分かりました。でも私は商業ギルド職員だとバレてますから一緒に行くと何か言われるかも知れません。なので商店の近くまでご案内して中に入るのはショージさんだけの方が良いかと思います」


「はい、それで大丈夫です」


 サーラさんの言葉にそう返事をして商業ユニオン加入の商店に向かったんだ。商店の看板には商業ユニオン加入店と大きく書かれている。むしろ、店名であるナクル商店よりも大きいぐらいだ。


 僕は外観を確認してから中に入ってみた。


 店内はお客さんが十人ほどいる。置いてある商品を見てみたら(ポーション)やお弁当、飲み物がメインで、多分生活雑貨のような商品も陳列してある。


 見た事が無いから分からないけれども多分合ってると思う。そこで僕はスキルを使用してみる事にした。


『オートアンケート』


 心の中で唱えてみたら、店内にいるお客さんの潜在意識に問いかけてアンケート結果が僕に届いてきた。


 アンケートは、商品への満足度、価格の満足度、利便性、店員の態度、商品陳列の五つの項目だ。1(悪い)〜5(良い)の評価をつけて貰っている。


 商品への満足度は2だ。みんな余り商品には満足していないようだ。ポーションは飲んでも50〜80しか回復しないらしい。弁当については2種類しかなくて、しかも味も美味しくないそうだ。余り売れないのを商店も分かっていて店頭に置いてる数も少ない。


 価格の満足度は3だった。ひょっとして5かなと思ったけれども満点では無いらしい。この商品ならもっと安くてもいいだろっていう思いがあるらしい。


 利便性は3だ。町の中心から少し外れているからだそうだ。


 店員の態度は2で、安く売ってやってるという態度が透けて見えるそうだ。商品が何処に置いてあるのか聞いても指さすだけで案内はしてくれないらしい。


 良し、これだけ分かれば何とかなるかも知れない。僕はナクル商店を出て隠れていたサーラさんと合流した。そしてメリヤ商店へと向かった。


 メリヤ商店は本当に近くにあって徒歩一分でたどり着いた。お客さんは三人かな?


 サーラさんが先頭で店内に入ると店番をしていた女の子が喜びながら駆け寄ってきた。


「サーラさん! 来てくれたんですね!」


 丁寧語だ。やっぱりお店で働くからには必要だから覚えたんだろうね。


「イーリさん、お待たせしてすみません。今日はちゃんとしたアドバイスを下さるプロと一緒に来ました」


 サーラさんの言葉に僕の方を見るイーリちゃん。いや、お客様にちゃんは失礼だよね。僕もサーラさんと同じようにイーリさんと言おう。


「初めましてイーリさん。僕はショージと言います。マーケターという専門職の者です。昨日より商業ギルドで勤務する事になったのですが、イーリさんのご期待に添えるように頑張ります」


 そう言いながら僕は店内に三人いるお客さんにオートアンケートを実施した。


 その結果は良好で、僕はイーリさんに的確なアドバイスができそうだと判断したんだ。


「あ、あの、ショージサさん。よろしくお願いします」


 僕はイーリさんの言葉に頷きながら次のスキルを発動したんだ。


『オート分析・解析』


 その結果は…… うん、これならいけそうです!

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