第八話 マーケター、驚きの真実を知る
出勤二日目、舞衣には昨夜のうちに今日のお弁当は要らないからと伝えていた。
上司にお昼に連れて行ってもらうと伝えたら舞衣も納得してくれたよ。
「兄さん、良かったわね。良さそうな職場で」
僕の言葉を聞いた舞衣からそんな感じで言われたけどどうして分かったんだろう?
「だって今日の兄さんいつもよりも上機嫌じゃない」
僕のポーカーフェイスを見破れるのは世界広しといえども舞衣ぐらいしか居ない。
「フフ、兄さんほど分かりやすい人は滅多に居ないわよ」
そう言う舞衣も上機嫌で僕にそんな事を言う。
「まあ、確かに感じの良い人ばかりだったよ。取り敢えずちゃんと定職についたから舞衣は受験に集中するんだよ」
「大丈夫よ兄さん。第一志望は余裕で合格出来るラインにいるから」
うん…… 知ってる。舞衣ってホントに頭が良いんだよね。このまま今すぐ受験しても合格間違いなしって担任の先生や学年主任の先生からも連絡を受けてるからね。
「それと兄さん、私大学に行くけどここから通うからね。電車で通える距離なんだから、家賃を余分に支払う必要は無いでしょ」
えーっ! お兄ちゃんは開放感あふれるキャンパスライフを舞衣に送って貰おうと思ってたんだけどな。こんな兄と一緒に住んでるなんて友だちにバレたら絶交されちゃうかも知れないからね。
「ダメかしら?」
僕が驚いて返事をしなかったら不安そうに聞いてくる舞衣。
「いや、ダメじゃないけど通学するの大変だよ舞衣」
「電車で五駅、バスで四つめの停留所で降りたら目の前が大学だからそんなに大変じゃないわよ兄さん。それに、千夏も一緒だから」
「あ〜、そっか。千夏ちゃんもおんなじ大学を受けるんだったね。それなら安心だ」
千夏ちゃんとは舞衣と幼稚園から一緒の友だちだ。キモい兄である僕にも舞衣のお兄さんって事で優しく接してくれるショートカットの女の子である。
「兄さん、今の言い方だと私が頼りないみたいに聞こえたんだけど……」
「いや、違うよ舞衣。あの、アレだ! 僕もよく知ってる千夏ちゃんと二人なら保護者として安心だなっていう気持ちなんだよ。おっと遅刻しちゃうからもう行かなきゃ! 行ってきます!!」
ジト目で舞衣に言われたので慌てて言い訳をして家をでたよ。
まあ、こうして僕も定職に復帰したので我が家ではまた穏やかな空気が漂うようになったんだ。
昨日よりも少し早い時間に出勤した僕。
「おはよう、ショージくん。早いね」
「おはようございます課長。昨日はごちそうになりました!」
「いやいや、大した事はしてないよ。さてそれじゃあさっそく向こうに行こうか。実はギルド長から相談事が来ていてね。ショージくんを待ってるらしいんだ」
朝から課長にそう聞かされて僕は緊張したけれども、それでもやる気を奮い立たせて返事をした。
「はい! 行きましょう!」
そうして昨日、リナさんと一緒に通った通路を課長と共に進み商業ギルド本部に向かった僕。
そのまま課長と一緒にギルド長の部屋へと出向いた。
「おう来たかショージ。おはようさん。今日はラメルが戻って来たんだな。早速で悪いが相談部に行ってくれ。昨日、サーラが対応した商店をショージに見てもらってくれ」
「おはようございます、ギルド長。分かりました、それではショージくんを連れて相談部にいきます」
部屋に入った途端にギルド長に言われて僕と課長は相談部へと向う。
「おはようございます、本日よりよろしくお願いします!」
「おお、来たねショージくん。頼りにしているよ。サーラさん、ショージくんが来てくれたよ。ラメルは今日はこちらで手伝ってくれるのかな?」
「はい、ゴーズ部長。ただし昼食はショージくんと共にしますので」
「ええーっ! 久しぶりに会えたのにっ!? ラメちゃん、パパと一緒に食べようよ〜」
あ…… 何故かキリッとした渋いイケメンおじだったゴーズ部長が…… うん、僕は何も見なかったし聞かなかった。
「ショージさん! 初めまして。私は相談部のサーラです。よろしくお願いします!!」
「サーラさん、おはようございます。本日より相談部に配属となったショージです。こちらこそよろしくお願いします」
「さっそくなんですけど、一緒にメリヤ商店に来て下さい。私では良いアドバイスが出来なくて…… ギルド長からショージさんなら的確なアドバイスが出来るとお聞きしましたので、よろしくお願いします!」
な、なんか初日からハードルが高い気がするんですけど…… 取り敢えずどんな相談内容なのかをそのメリヤ商店に着くまでに聞いておこう。
「分かりました。僕に出来る限りのアドバイスをします。それで、道中で相談内容を教えて貰えますか?」
「はい、それでは行きましょう!」
と言ってサーラさんが歩き出したので僕もその後についていった。外に出たら日本の風景が広がっているんだろうけど、あの病を患っている人には違う風景が見えてるんだろうな……
僕はそう考えていたのだけど……
「ええっ!? ど、何処ですか、ここは!!」
外に出て僕は思わず叫んでしまった。だって明らかに日本じゃないんだ。道は石畳だし、馬車が走ってるし……
「えっ? ここは商業国家アーキンですけど?」
当たり前のようにサーラさんがそう言う。
ちょ、ちょっと待って、ここって本当に異世界で、あの獣耳の人たちも本当に獣人族の人たちだって事なの? えっ、つまりあの耳長の人はエルフさんで髭モジャさんはドワーフさんなのっ!!
つまり、課長やリナさんが言ってた事も、契約書に書いてた事も事実なのっ!?
それとも…… 僕もあの病に罹患してしまったのか…… いや、それは無いよね。
ほ、本当に異世界だったんだ……
僕は暫く呆然としてその場から動けないぐらい衝撃を受けたんだ……




