第六話 マーケター、スキルを知る
リナさんが厳ついオジサンに怒られている。僕はそれを見ているしか出来ない。
「ちゃんと事前にこっちで働く事を了承してもらってから連れてこいって厳命してただろうが」
「だから、ちゃんと契約書を作ってそれにサインをしてもらってから連れてきましたよ! ねえ、春夏冬さん!」
「じゃあ何で第一声がアレなんだよ!」
「そりゃ地球には獣人族もエルフ族もドワーフ族も居ないから初めてご覧になったからでしょう! そんなに特別な事じゃ無いです、ギルド長!」
どうやらこの厳つい人がこの職場の最高責任者であるギルド長さんらしい。取り敢えずリナさんを厳ついギルド長から何とか助けてあげなくちゃ。
僕は意を決してギルド長に声をかけた。
「あの、初めまして。本日よりこちらでお世話になります春夏冬正司と申します。先ほどリナさんが仰った通り、こちらの世界での説明は受けておりましたけれども、私の世界には獣人族の方などはおられないのでつい口走ってしまいました。どうかご容赦ください」
考えてみればここにいる全員があの病にかかっているのだと思う。ならば僕はそれに合わせて話をするべきだ。そのほうがこの先、間違いなく平和に過ごしていけるのだから。
しかし本当にこれだけの舞台を用意して病を癒そうとしてるなんてどんな人なんだろうか?
物凄くお金持ちなんだと思う。
「おう、そうか! 説明をちゃんとしてたんなら俺が悪かったリナ。それじゃショージ仕事の内容を説明したいから俺の部屋に来てくれ」
「えっ! 先ずは同僚の方にご挨拶をと思っていたのですが……」
「あ〜、そりゃ後でいい。ちょっと急ぎで頼みたい事もあるし、こっちでのショージの能力を確認もしないとダメだからな」
う〜ん、ここまで来るといっそ清々しいぐらいだね。僕に能力なんてある筈ないのに。けれどもここは分かってるフリをして頷いておかないと。
「はい、分かりました」
ギルド長が先頭で僕とリナさんがその後に続く。案内された部屋は重厚な扉で中も広かった。ギルド長はソファセットに向かい、自分の向かい側に座るように言ってきたのでそのまま座ったけど、リナさん、近いです! もう少し離れて下さい。独身、童貞の青年には刺激が強すぎます!
僕がモジモジしてたらギルド長が不思議そうな顔をして聞いてきた。
「どうした? トイレか? それなら部屋を出て右に進めばあるぞ」
「い、いえ、違います。それよりも説明をお願いします」
僕のモジモジはトイレを我慢していると勘違いされたみたいだ。
「おう、大丈夫ならいいんだがな。それじゃ改めてアーキン商業ギルド本部へようこそ、ショージ。俺がギルド長のソーイチだ。俺の亡くなった親父が十八歳まで地球育ちでな、この名前なんだ。それで先ずはショージがどんなスキルを持ってるか教えて欲しい。ステータスと唱えてくれ」
テンプレがきたね。唱えても何も出ないだろうけどここは話を合わせておかないとね。僕は近いリナさんから少し離れるように座りなおしてから言われた通りに唱えた。
「はい、ステータス。うわっ!?」
僕が驚きの声を上げたのは他でもない。唱えた途端に僕の目の前に半透明のボードが突然現れたからなんだ。
凄い、地球の技術はもうここまで進んでいたのかっ!! そう思ってたんだけども……
「どうだ、見えてるのか?」
あれ? ソーイチギルド長には見えてないのかな。リナさんも見えてないみたい…… というフリかっ!? 二人とも役者さんでやっていけそうなぐらい演技が上手いね。
「はい、見えてます!」
僕は二人の演技を無駄にしないように返事をした。
「そうか。それじゃショージが俺たちに教えても構わないと思う部分をこちらの紙に書き出して欲しい」
ソーイチギルド長はそう言って僕に紙とペンを差し出してきた。おっと、これは日本産のカクヨのノートと四菱のボールペンだ。
僕は全て教えても困らないからボードに出てる全項目を書き出したんだ。
名前∶ショージ・アキナイ
年齢∶二十五歳
性別∶男
種族∶人族(異世界)
職業∶一流マーケター
位階∶二級
経験∶1,525/2,000
体力∶500
魔力∶800
技能∶
オートマーケティング(5/8)
商魔法(3/10)
よし、これで全部だね。いや〜、良く出来てるよねこのボード。異世界感たっぷりだよ。
僕はノートをソーイチギルド長に差し出したんだ。僕の書いたステータスを見てソーイチギルド長が驚いた顔をしているよ。
隣に座っていたリナさんは僕が書き出してる途中で見てたけど、体力を書いた辺りから驚愕の顔をしてるし。
お二人とも役者よのう。
「なっ、スキルが二つもだとっ!?」
「ギルド長、それだけじゃなくて体力と魔力も!?」
「ああ、リナ。とんでもない数値だな……」
「私でもやっとレベル三級になったばかりなんですけど……」
「俺なんかレベル一級だけどショージより魔力が低いぞ」
いやいや、もう吹き出すのを堪らえるのに苦労しますからお二人ともその辺りで止めて貰えませんか?
二人の役者っぷりを見てたら本当に笑いそうになったから困っちゃうんだよね。
「それで僕はお役に立てそうですか?」
笑いそうになるのを誤魔化す為にそんな質問をしてみた。
「取り敢えずショージ、スキル商魔法をタップしてどんな魔法か教えてくれないか? ああ、それと知らないだろうから教えておこう。横の数字はスキルの熟練度を表している。オートマーケティングは最高値が8で商魔法は最高値が10って事だ。スキルは使えば使うだけ熟練度が上がるんだ」
「そうなんですね、分かりました。それじゃ商魔法をタップしてみます」
僕はソーイチギルド長に言われた通りボードの商魔法をタップした。
そこに書かれていたのは……




