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【異世界ラブコメ】婚活はクエストで  作者: 舞波風季


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第22話 撃破そして脱出

「なんで……なんで……」


 まさか負けるとは思っていなかったのだろう、ギョルウは放心状態でブツブツ言っていた。


「さあ、あとはコイツをどうするかね」

 そう言ってロナはリズがいる方に足を踏み出した。

 だが、足元がふらついて膝をついてしまった。

「あちゃあ、さすがに今のはキツかったかなぁ、はは……」


「ええ……」

 リズもふらつきながらロナに歩み寄った。

「大技の連続は魔力と体力の消費が桁違いですわね」


 一方ギョルウは、

「僕は神だ神なんだ神がこんな小娘達に負けるわけがないんだそうだ何かの間違いなんだそうだそうだ……」

 取り憑かれたように早口でまくし立てている。


「私たちのほうが強かったってことでしょ」

 ゆっくりと立ち上がりながらロナが言った。

「と言っても危なかったですけれど……」

 立ち上がるロナに手を貸しながら小さい声でリズが言った。


「そうか、仕方ない……これは使いたくなかったけど……間違いは正さなきゃいけないからねぇ」

 さっきまでは気が触れたようだったギョルウが、妙に落ち着いた低い声で言った。


「何言ってるの、あいつ?」

「分かりませんわ……けど、何かありそうですわね」

 気味悪そうにギョルウを見るロナとリズ。


 ギョルウはポケットから小瓶を取り出した。

「ふふ、これを使うことになるとは……君達も運が悪かったねぇ」

 ニヤケながらギョルウが言った。


「何かやるつもりよ、あいつ」

「ですわね」

 疲労困憊の身体に鞭打って構えるロナとリズ。


「よく見るがいい、小娘たちよ!これが僕の魔導生物学の真髄だぁ!」

 そう叫ぶとギョルウは小瓶の中身を勢いよく(あお)った。


「うぁああああーーーー!」


 ギョルウは飲み干した小瓶を投げ捨て、天井を向いて叫び声をあげた。


 するとギョルウの身体がじわじわと大きくなりだした。


 髪は逆立ち、頭から(いびつ)に曲がった角が生えてきた。


 耳も尖って長く伸び、口の端が横に広がり鋭い歯が見えてきた。


「なによ、あれ………?」

「とんでもない薬のようですわね……」

 怖気(おぞけ)を振るって後ずさるロナとリズ。

 そして、


 バサッ!


 という音とともにギョルウの背後に翼が現れた。


「げっ、マジ?」

「もはや人ではないですわね」


「ひゃははははーーーーどうだぁ、恐れ入ったかぁーーー!」


 まさに悪魔のような姿になったギョルウが、聞き苦しい耳障りな声で言った。


「まだ、魔力は残ってる、リズ?」

「少しなら。でも大したことはできませんわ」

 二人はそう言いながら互いに身を寄せた。


「もう戦う力なんて残ってないよねぇーーもう終わりだよーー君達はぁ!」


 そう言ってギョルウは翼をはためかせて飛び上がった。


 そして、一瞬空中で静止すると、信じられないような速さでロナとリズに突っ込んできた。


「「くっ……!」」


 ロナとリズは左右に跳びはねて、かろうじてギョルウの攻撃を()けることができた。


 ドガァアアーーン!


 ギョルウは飛び込んできた勢いのまま、入り口の扉に激突した。

 扉と周辺の壁が粉々になって辺りに破片が飛び散った。


「なんなのよ、あいつ」

「ただ突っ込んできただけ、ですわね」

 驚き半分呆れ半分の二人。


「ふははは!よく避けたねぇ、僕のすさまじい攻撃を!でも次はどうかなぁ?」

 瓦礫の中から立ち上がってギョルウが言った。


「別の技とかあるのかしら?」

 注意深い表情のロナ。

「二人で固まっていたら不利ですわ」

 リズの言葉にロナも頷いた。

 そして二人はさっと左右に分かれて距離を取った。


「いくぞぉーーーー!」

 叫ぶと同時にギョルウはロナに向かって突撃してきた。

 かなりの速さだが、先ほどと同じく真っすぐに飛んでくるだけだった。


 ロナは落ち着いてギョルウの動きを見極め、突撃を(かわ)した。

 そのまま壁に激突するギョルウ。壁が崩れて外の景色が見えた。


「ちょこまかと動きやがってぇ!」

 ギョルウは悔しそうに言うと、今度はリズに向かって突進した。

 そして案の定リズにも()けられて壁に激突、壁を崩すこととなった。


 ゴゴゴゴ……!


「ねえ、なんか嫌な音がしない?」

 ロナが壁や天井を見ながら言った。

「今の突撃で壁の柱が……」

 リズの言う通り壁に埋め込まれた柱が崩されていた。


「ねぇ、あんたさあ、いい加減にしないと城が壊れちゃうわよ!」

 ロナが叱りつけるようにギョルウに言った。


「な、何を言う小娘がぁ!これは僕の作戦だぁ!お前達を城の瓦礫に埋める作戦なのだぁ!」

 半ばヒステリックになってギョルウが言った。


「それ、今考えましたわね」

「きっとそうよね」

 冷静にツッコむリズとロナ。


「そ、そそそんなことないっ!」

 少女二人の冷たい視線にさらされ、益々冷静さを失っていくギョルウ。


「お前たちは僕を怒らせた!その報いを受けさせてやるぅ!」

 ギョルウの両手が赤く光りだした。


「魔力を……!しかもかなり強いですわ!」

 リズが警告する。

「私が斬る……!」

 ロナが剣に手をかける。

「だめ!今斬ったら魔力暴発を起こしてしまいます!」

 リズが叫ぶように言った。

 そしてリズはさっとロナに寄り添った。


(わたくし)のそばを離れないで!」

 リズが叫ぶ。


「これを喰らえぇーーーー!」

 ギョルウが叫び突き出した。両掌の輝きが増幅する。


「障壁よ!魔法を弾き(むく)いとせよ!」

 リズが唱え、目の前に多角形の輝く光の壁が現れた。


 (まぶ)しく光ったギョルウの掌から赤い光が延びてくる。


 カッッ!!


 ギョルウの魔法が当たったリズの障壁が光りに包まれる。


「眩しっ……」

 そう言って手で(ひさし)を作るロナ。

「よしっ……」

 リズも同じようにして眩しさを和らげながら呟いた。

「リズ……?」

 リズにしては珍しい反応だと思いロナが横を見る。

 すると、


「な、なんだとぉ!?」


 ギョルウが叫ぶのが聞こえてきた。


 ロナが見ると、ギョルウは両手を前に突き出して、自らに跳ね返ってきた魔法の光を押し返そうとしている。


「ググッ……こんなこと……こんなことが……こんなことがあってた……」


 ギョルウが耐えられたのはそこまでだった。


「ぐぁああああーーーーーーーー!」


 ドガァアアーーン!


 魔法の光はギョルウを奥の壁に叩きつけ、壁全体をギョルウもろとも吹き飛ばした。


「ぁぁーー…………」


 ギョルウの絶叫が遥か彼方へと消えていく。


「やった……やった!さすがリズだねっ!!」

 リズの肩を叩きながらロナが歓喜した。

「ええ……」

 リズは力なく答えると、その場に崩折(くずお)れた。


「リズ!?」

 倒れそうになるリズを支えてロナが叫ぶ。

「限界を超えて、しまったみたい、です……」

 微笑もうとしているリズの顔は驚くほど蒼白だった。


「すぐにここを出るわよ!」

 ロナはそう言って、リズの腕を肩に回し腰に手を回した。

 そして今は扉が無くなった出口へと歩き出した。

 リズほどではないとはいえ、ロナも相当の魔力と体力を消耗していた。


 ゴゴゴゴ……


 ギョルウが吹き飛ばされた時の影響か、壁の所々が崩れ始めた。


「ヤバいわね、このままだと……うっ」


 既に床に散らばっていた瓦礫に(つまづ)いて膝をついてしまうロナ。


「歩きにくいったらないわね!」

 悪態をつきながら再び歩き出すと、天井からパラパラと細かい瓦礫が落ちてきた。

 やっと扉の所に着いた時、横の壁が崩れてきた。


「!」


 ロナは咄嗟にリズを庇った。そんなロナの肩に、赤子の頭程はあろうかという瓦礫が当たった。


「あぁああーー…っ!」


 苦痛の声を上げるロナ。


「ロナ……このままだと……あなただけ先に……」

 リズがか細い声で言った。

「何を、言い出すかと、思ったら……」

 苦痛で脂汗を流しながらロナが言った。

「これくらいでへばるロナ様じゃないってえのっ……!」

 苦痛に耐えながらリズを背負い直すロナ。

「ロナ……」

 リズの声は消え入りそうだ。


「いくぞぉーー女は根性ぉおおおおーーーーーー!!」

 ロナは雄叫びを上げて再び進み出した。


 扉の跡を抜けると真っ直ぐな通廊だ。百メートルもないであろう。

 その百メートル足らずがとてつもなく長く感じられた。

 今では通廊も崩れ始めている。

 小さく見えていた城の出口の光が少しずつ大きくなっていく。


「あと少し……あと、少しよ、リズ……」

 意識が朦朧としているリズに声をかけながらロナが一歩、また一歩と進んでいく。


 ゴロン……


 壁が崩れてロナの足元に瓦礫が転がってきた。


「あ……」


 ロナは()けることができずに(つまづ)いてしまった。


 立ち上がろうと顔を上げた時、斜め前方の柱がロナとリズに向かって倒れてきた。


「え……」


(……だめ、もう動けない……)


 ロナは運命を受け入れることしかできなかった。


 その時、


 ザッ!


 ロナの視界の(はし)に黒いブーツが入ってきた。


(……うわ、でかっ……)


 こんな状況でロナの頭に浮かんだ言葉がそれだった。


「遅くなりました」


 ロナの頭上から低い声が聞こえた。


「え……?」


 ロナが顔を上げて見ると、見覚えがある大きな騎士がそこにいた。

 彼は倒れてきた柱を肩で支えている。


「あなた……えっと……なんてったっけ……?」

「ザガルトです」

「ああ……そうだったわね……来てくれて、ありがとう……後で、サインをあげる、わ……」

「いりません」


 ザガルトの言葉に小さく微笑むと、ロナは安心したように目を瞑り、その場で気を失った。


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