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【異世界ラブコメ】婚活はクエストで  作者: 舞波風季


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第17話 古城での戦い

 岬の古城へ続く道ははなだらかは上り坂だった。

 漁村までは西の海沿いを走っていた道も、少しずつ内陸側へと進路を変えていった。

 道の両側は腰の高さ程の丈の草に覆われた丘である。


 皆覚悟はしていたものの、古城が近くなるにつれて魔獣との遭遇がますます増えていった。

 個々の強さはこれまで戦った魔獣と変わりはなかった。

 だが、戦闘が頻繁に起こったため息をつく間もないという状況だった。


 古城まで間もなくというところでデリーが皆に言った。

「この先はかなり厳しくなると思う。ブランカさん、ジョアナさん」

「「はい」」

「メグを連れて漁村に戻ってくれ」

「「……!」」


「ここに来るまでにかなりの魔獣を倒した。今なら帰り道で魔獣に襲われる可能性も低いはずだ」

「でも……」

 メグが反論しようとした。すると、

「分かりました、デリー様」

 メグを遮ってブランカが言った。

「メグさんがいれば魔獣の接近もわかりますしね。うまく逃げられるでしょう」

 ジョアナがメグの肩にそっと手を置いて言った。

「……はい」

 小さな肩を落としてメグが答えた。




「やっと着いたね」

 メグ達と別れた後、岬の古城を目の前にしてデリーが静かに言った。

「メグは可哀想だったな……」

 ロナが独り言のように言った。

「仕方ありませんわ、この先は危険ですもの」

「それは分かってるけど」


 城門は開け放たれていた。

「なんだかおびき寄せられたてるみたいですわね」

 リズが不安そうな顔で言った。

「どうやらその通りみたいよ」

 中庭に足を踏み入れたロナが言った。


 それほど広くない中庭に七、八匹の魔獣がいる。

「とにかくこいつらを倒さなきゃ、ねっ!」

 そう言い放った時には既にロナの剣は魔物を斬っていた。


「いきなり突っ込まないでもらえますこと?」

 苦々しい顔でそう言ってリズは火炎弾を放った。


「ははは、完全に出遅れちゃったね、僕は」

 デリーはリズとロナの脇をすり抜けて魔獣が(たむろ)している中に突入した。


 中庭の魔獣を倒すとデリーは数段高いところにある入口から城の中を覗いた。

「ここからは通廊での戦闘になるね」

「狭いところだと戦い方が難しいてすね」

「攻撃魔法も強さを調整しなければですわ」

 デリーに並んでロナとリズが言った。


「狭い場所では僕の戦いが有利だと思う」

 デリーは格技での接近戦が得意だ。狭いところでの戦闘向きと言える。

 彼も短剣を使うことはあるがロナのような長い剣は使わない。

「ロナは僕が撃ち漏らした魔獣を倒してもらえるかい?」

「はい、分かりました」

 心持ち不本意な様子ではあったが、ロナは素直に答えた。


「リズは弱体化魔法を主体にしてもらえるかい?」

 狭い場所での攻撃魔法は使い方が難しい。味方に当たったり、壁を破壊してしまったりと、思わぬ被害が出る可能性がある。

「はい、そういたしますわ」

 リズは答えた。


「ゾフィーは強化魔法を頼むよ」

「はい」

「なるべく怪我をしないようにするよ。ゾフィーに負担がかかっちゃうからね」

「そのようなご心配は不要です」

 少しムッとしたようにゾフィーが言った。


 デリーの予想通り、通廊での戦闘は屋外の場合とは大きく違った。

 通廊の幅は三メートルもないであろう。人がすれ違うには十分な幅だ。

 だが、魔獣と戦うとなると全く別だ。とても狭く感じる幅だ。


 通廊での戦闘はデリーの想定通りに進んだ。

 先頭にデリーが立ち、ロナとリズが左右のやや後ろに控えゾフィーがその後ろに、という隊形だ。


()の者に(かせ)を!」

 リズが魔法を放つと、途端(とたん)に魔獣の動きが鈍くなった。

 ほぼ同時にデリーが間合いを詰め、魔獣に拳を叩き込んだ。

 デリーは四匹いた魔獣に次々と拳を撃ち込んだ。

 魔獣は全て一撃で黒い砂になった。


「デリー様、素敵!ですけど私にも戦わせてください」

 頬を膨らませてロナが言った。

「ははは、ごめんごめん。でも、通廊の戦闘は初めてだからね。どんな危険があるか分からないから。君達女の子が戦う前に僕が確かめたかったんだよ」


「まあ、デリー様……♡」

 デリーの言葉に恋する乙女顔になるロナ。

「さあさあ、分かったら先にいきますわよ」

 リズが不機嫌に言う。

「あらぁ、私がデリー様に優しい言葉をかけていただいたから()いてるのね」

 リズを流し目で見ながらロナが言った。

「そ、そそそんなことありませんわ!」

 赤い顔で慌てて否定するリズ。

「うふふ」

 二人のやり取りを楽しそうに見ているゾフィー。


 その後も慎重に、そして順調に戦闘を重ねたいった。

 入り口付近では明るかった通廊も、奥に進むと光源は壁の松明頼みになる。

 出てくる魔獣は、これまでと同様いくつかの獣を合成したような不気味なものだった。

 松明の灯りで見ると一層魔獣の不気味さが増した。


「強さは外の魔獣と変わらないね」

 何度目かの戦闘の後にデリーが言った。

「私もそう思います」

 と、ロナ。

 デリーの指示で途中からは魔力を節約することにした。なのでリズも牽制のための小さな攻撃魔法を撃つのみだった。


 そしてデリー達は通廊の先の広間にたどり着いた。

 広間は中庭と同じくらいの広さだ。広間には手前側に四匹の魔獣、その奥に一際(ひときわ)大きな魔獣が(そび)えるように立っていた。


 手前の魔獣は角が二本生えている大きな獅子だった。たが尻から後ろは爬虫類のような鱗に覆われている。そして尾は恐ろしげなヘビで、威嚇するように口を開けている。


 そして四匹の獅子の魔獣の後ろにいるのは、身長が五メートルはあろうかという二本足で立つ巨大な魔獣だ。

 その頭は二本の渦を巻いた角が生えた牛のようだ。だがむき出した歯は鋭利な牙のようだ。

 指は四本、いずれも鉤爪が生えている。

 時折見える尾は長く、鱗に覆われている。


「これは今までと同じようにはいかなそうだね」

 既に広間の入り口で構えているデリーが言った。

「まずは(わたくし)が魔法で」

 そう言うとリズば前に出てデリーと並んだ。

「彼の者達に眠りを!」

 両手を前に出してリズが唱える。


 すると、獅子の魔獣は小さく唸り声を上げたかと思うと、しゃがみ込んで動かなくなった。

「よし、効いたね!」

 すかさずロナが剣を手に突っ込もうとする。


「待て!」

 デリーの鋭く言った。

「!」

 ロナが動きを止めたその時、


「グガァアアッ!」


 と地響きのような低い唸り声を上げながら、牛の魔獣が獅子の魔獣を蹴り飛ばした。


「ギャンッ!」


 蹴飛ばされた獅子の魔獣は、鳴き声をあげて飛び上がった。


「あいつ……!」

 悔しそうな声を上げるロナに、いち早く眠りから覚めた獅子の魔獣が飛びかかってきた!

「!」

 一瞬の虚を突かれたロナは剣を構えるのが遅れた。

(やられる……!)

 ロナの全身の血の気が引いた。


 ドガッ!


 ロナまで数十センチに迫っていた獅子の魔獣の頭に横から蹴りが飛んできた。魔獣は真横にふっ飛ばされた。


「油断は禁物だよ」

 ロナの目の前にはデリーの広い肩があった。

「デリー様……」

 止めていた息を吐き出してロナが言った。

「ごめんなさい、あの牛の魔獣には効きませんでしたわ……」

 悔しそうに唇を噛むリズ。


「いや、早くに分かってよかったよ、ありがとう、リズ」

 デリーが言った。

「ロナさん、怪我はない?」

「はい、大丈夫です、ゾフィーさん」


「それじゃ、めげずに次の手を打つとしよう」

 一際明るい声で言うデリー。


(そう、めげちゃだめ!)

(他にも手はありますわ!)


 デリーに励まされてロナとリズは改めて気を引き締めた。


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