豹柄は世界を制す〜おばちゃんによる異世界ファッション革命〜
私の名前は大西はるえ。
どこにでもおる、豹柄と飴ちゃんが大好きな大阪のおばちゃんや。
さっきまで道頓堀の服屋で、ちょっと若い子に「その柄、うちの母も好きです〜」なんて軽く煽られながら接客しとったはずやのに……
気がついたら、わけわからん石畳の街のど真ん中に立っとる。
「ここ……どこや⁉︎」
見渡しても見慣れた看板はない。自転車も走ってへん。車もおらへん。
どっからどう見ても大阪ちゃう。なんや、中世ヨーロッパっぽい景色。下手したら娘がよう読んどった小説の世界にそっくりや。
「まさか……異世界転生⁉︎ いや、転移か? まあ、どっちでもええわ!」
頬をつねってみても、夢やない。ほな、落ち着こ。こういう時は――
「飴ちゃんや!」
カバンをごそごそ探って、いつものみかん味をひとつパクリ。
うん、これでだいぶ冷静になった。
ほな、まずは住むとこ確保やな。
お金? そんなんあるわけないやん。でも、うちは裁縫ならちょっと自信ある。
――というわけで、街の服飾店の扉をドン!
「ごめんやで。ちょっとおばちゃん、雇ってくれへん?
宿も金もないけど、裁縫できるし、絶対役に立つさかい。ほら、まずは飴ちゃんあげる。とっておきのみかん味やで!」
その勢いと圧に負けて、店長さん、住み込みで雇ってくれはった。
ほいで次の日から、バリバリ働くはるえ。
けど、ふと思ったんよ。
「なんやこの店……どれもこれも地味やな。全部うす〜い色やん。ピンク言うても桜色みたいなんばっか。
そんなん、おばちゃん着たら風景に埋もれてまうわ。
もっとこう、ピンクでもショッキングピンク、
ライムグリーンにどっかんとレオパード柄足してこそやで!」
うずうずしてきて、ある日ついに、裁縫道具を取り出した。
「いっちょ、わてが本物見せたるわ!」
完成したのは、もちろん――全身豹柄のシャツ!
翌朝、それを着てレジに立った瞬間、店員たちが凍りついた。
「な、なんか来た……」
「まぶしっ……目がチカチカする……」
でも、はるえは堂々たるもんよ。
「なに言うてんの。豹柄はな、魂の叫びや!
派手やない。華やかなんや!」
そして、店員たちに宣言。
「あんたらにも作ったるで! その人に似合う、最高の豹柄を!」
初めはみんな「えぇ〜〜〜〜」って顔しとったけど、いざ試着したら――
「ちょ……ちょっと待って? これ、意外と……アリ?」
そう、はるえは“豹柄マスター”。
全身タイプからワンポイントまで、似合う形を的確に見抜いて仕立てる達人。
そこから口コミが広まり、平民の奥さんたちの間で大ブーム。
さらに貴族の奥様方までが噂を聞きつけて、ついには王宮からのお召しが!
「王妃様が、新しい舞踏会用のドレスをご所望とのことです」
どよめく店員たちの中、はるえは飴ちゃんをポケットに突っ込みながら、のんびり言うた。
「ようやく来たか、国のてっぺん。ほな、腕見せたるわ」
王妃の前でも、まずは一粒差し出す。
「お口、乾いてませんか? まずはこれ、落ち着きますえ。うちの自信作、紅茶ミルク味や」
戸惑いながらも、口にする王妃。
「……なんて優しい甘さ。心がほどけていくようですわ」
「せやろ? ドレスも同じや。
着る人がいちばん輝けるデザイン。派手でも、上品でも、その人の芯を映すのがホンマの仕事や」
そうして仕立てたのは、“気品と豹柄”が見事に融合した、前代未聞のドレス。
王妃がそれを舞踏会で披露した瞬間、ファッション界に革命が起きた。
街中に広がる“はるえ仕立て”。
老若男女、みんなが自分だけの“似合う豹柄”を求めてやって来る。
ラスト、夕暮れの店先で、飴ちゃん片手にはるえが笑う。
「おしゃれってのはな、自分に似合うもんを知ることや。
せやから――流行は、わてが決める!」
読んでくれた皆さん、おおきに!
この物語がちょっとでもおもろい思うてくれたら、ぜひ評価&ブクマしてやってな〜。
「もっとおばちゃんが見たい!」そんな声があれば、またどこかで大西はるえ、登場するかもしれまへんで