エピローグ
「電話は終わったの?」
「ええ。それにしても、Bちゃんも迂闊よねぇ。私がBちゃんの母親と不倫してることに気づかないんだから。ねぇ、自分の娘を寝取られるのって、どんな気持ち?」
「そうね、背徳的な気分よ。娘を寝取った相手とセックスをするのって、最高に燃えるわ」
ホテルでAちゃん姉妹の母親と、Bちゃんの母親が情事を再開する。この二人、高校時代の同級生であった。当時は恋人同士で、高校の卒業時に別れたのだが、互いに結婚してからの家が近所であるとわかってから付き合いが復活した。以前から連絡は取り合っていたのだ。
「私は今夜、家に帰るわ。貴女は明日、帰るんでしょ。AちゃんとA’ちゃんに、よろしくね」
「帰るタイミングをずらすのが、不倫を長続きさせるコツよね。ねぇ、いつか全てがバレたら、私たちと娘を集めて皆で仲良くしない? どうせ私も貴女も、夫からは何も言われないわ」
「……本当に、うまく行くと思う? 私、貴女みたいに、娘の同級生と寝たことなんか無いわよ。貴女、自分の娘ともセックスするつもりなの?」
「大丈夫よ、たぶんね。私は良い母親じゃなくて、そのせいでAちゃんとA’ちゃんに寂しい想いをさせたわ。結果、あの子たちは性行為で互いを結び付けた。そういう行為なら私は教えられるわよ。私は良い母親には、なれない。でも、いい女でいることは教えられるわ」
「まったく……、いい女というか、悪い女というか」
Bちゃんの母親が笑う。結局、悪い女というのは、最高に魅力的なのだ。それがわかっているから、彼女はAちゃん姉妹の母親から離れられない。
「本当に、うまく行くかしらね」
「行くわよ、もちろん。私たちの子どもだもの」
何の根拠もなく言いながら、Aちゃん姉妹の母親がキスしてくる。罪の味は甘美で、この味を子どもたちにも教えてあげようとBちゃんの母親は思った。