B（ビー）ちゃんとC（シー）の関係
「Ａちゃんは自分の妹と、私（Ｂ）との二股で付き合ってて、秘密にしているつもりだけど私にバレてる。妹のＡ’ちゃんは、姉のＡちゃんと私との二股をしてて、そのことをＡちゃんには内緒にしてる。もちろん私も、Ａちゃんには、Ａ’ちゃんと付き合ってることは秘密にしてる……。そういう状況ですよ」
現在、Ｂちゃんはスマホで、ある女性と話している。ややこしい現状を整理するような、説明口調だった。
『そう。Ａ’ちゃんは、全てを知っているつもりでいるのね。可愛らしいなぁ』
「ええ。まさか私が、Ａちゃん姉妹の母親とも付き合ってるなんて、想像もしてないみたいで」
家の自室でＢちゃんが笑う。このＢちゃんは、実は三股をしているのであった。電話での話し相手は、ずばりＡちゃん姉妹の母親である。
『聞いていいかしら。三股って、どんな気分？ 私も経験はあるけど、娘と同級生である貴女の感想を聞きたいわ』
「言っていいんですかね。お説教とか、してきませんか？」
『説教できる立場じゃないからね、私。娘の同級生と肉体関係があるっていうのは、客観的に見てケダモノじみてると思うし』
「じゃあ言います。コンプリート感って言うのか、征服欲が満たされるみたいな快感がありますね。一家のお母さんと、その娘さん二人を手に入れた気がして。切手のコレクションを集めきったような、あるいは戦国大名が日本を統一したような、そんな満足感です」
『そうか。満足してもらえて嬉しいわ』
苦笑のような笑い声を漏らす、Ａちゃん姉妹の母親である。この母親をアルファベットで表せば、Ｃとでもなるのだろうか。どうでもいいが。
「でも驚きましたよ。Ａちゃんと付き合い始めたら、妹のＡ’ちゃんが『私とも仲良くなってみませんか？』って言ってきて。それで二股を始めたら、今度は母親である貴女が、私を誘惑してきたんですから」
『だってねぇ、気になるじゃない。娘のＡちゃんが、貴女と付き合い始めてから、急に色っぽくなっちゃって。あの子、妹とばかり遊んでたから、ちょっと子どもっぽかったのよね。恋は女を変えるんだなぁと思ったわよ。そんな子と付き合えたら、私だって若返るかもしれないじゃない？ やっぱり親子よねぇ、女性の好みは似ていたわ』
Ａちゃんの母親は、Ａ’ちゃんと同じく、Ａちゃんのスマホから交際相手の情報を調べたのだった。スマホのセキュリティが、Ａちゃんは甘かったようである。
「それで、どうします？ いつか三股はバレるかもですよ。Ａ’ちゃんは、ひょっとしたら全てを受け入れてくれるかもしれませんけど」
『そうねぇ。ま、そのときは、そのときよ。それにしても知らなかったわぁ、娘たちが姉妹で愛し合ってて、その二人が貴女と付き合ってたなんてねぇ。貴女から教えてもらわなかったら一生、気づかなかったかも。人生って面白いわ』
「私が言うのも何ですけど……もっと娘さんたちを大切にした方がいいですよ。それはそれとして、今度はいつ、会ってくれますか？ 高校生の私と、大人の貴女が頻繁に会うのは難しいと、それはわかってるつもりですけどね」
『あら、そんなに私のテクニックが恋しい？ まあ近いうちにね。今は同年代の女性とプチ旅行をしてるのよ。週末を一緒に過ごしてから、それぞれの家庭に帰るってわけ。そうでもしないと、主婦業なんてやってられないわ』
高校生のＢちゃんと、Ａちゃん姉妹の母親は、しばらく話してから電話を切った。
