A’(エーダッシュ)ちゃんとB(ビー)ちゃん
「もしもし。お姉ちゃん、眠っちゃいました。明日のお姉ちゃんとのデート後、私とのデートも宜しくお願いしますよ」
『はいはい、わかってますって』
居間のテーブルで、A’ちゃんが通話しているのは、姉の恋人であるBちゃんである。要するにBちゃんは、Aちゃんと妹のA’ちゃんとで二股をしているのだった。そもそもAちゃんも、実の妹と恋人とで二股をしているのだが。
『でも、妹ちゃんも大胆よねぇ。Aちゃんは、私と貴女の関係を知らないんでしょう? お姉ちゃんを裏切っているっていう、後ろめたさはない?』
「ないですねぇ、あんまり。だって私、お姉ちゃんから貴女を奪うつもりはないんで。私が第一に考えてるのは、お姉ちゃんの幸せなんですよ」
A’ちゃんは、姉のAちゃんがBちゃんという恋人を作ると、すぐに姉のスマホを盗み見てBちゃんの情報を得た。そしてBちゃんに接近すると、こう言ったのだ。「私、Aの妹です。私とも仲良くなってみませんか?」と。
『いやな表現になるけど、私も姉妹丼には興味があったからさ。若い身体っていうのもいいよねぇ。Aちゃんが貴女に夢中になるのも、ちょっとわかっちゃった。そして貴女が、私に身体を差し出すのは、私がAちゃんと別れないようにお願いしたいから。そういう理解でいいのかしら?』
「そんなに立派な話じゃないですよ。お姉ちゃんが好きになった女性を、私も味わってみたかったって気持ちもあります。お姉ちゃんとは昔から、何でも半分こにして、食べたり遊んだりしてきたんで。でも、そうですね。一番の理由は、貴女にお姉ちゃんを大事にしてほしいからです」
『私が貴女にかまけて、Aちゃんを蔑ろにしたらどうするの? それでも問題ない?』
「いいんですよ、それはそれで。そしたら私が、お姉ちゃんと愛し合うだけなんで。私、お姉ちゃんと別れる気はないんです。それがお姉ちゃんの、一番の幸せだって理解してるので」
『すごい自信ね。そういうものなの?』
「ええ。つまり最終的には、私とお姉ちゃんと貴女の三人で付き合うのがベストなんですよ。お姉ちゃんは私の幸せも考えて、私から離れようとしてますけど、それは無理なんです。私たち姉妹が離れるには、ちょっと長く深く、関係が続き過ぎちゃったんで」
『ふーん。私も三人で付き合えれば、それが楽しくていいと思うなぁ。そうすると、あとはAちゃんの納得次第よね……。ねぇ、聞きたいんだけど、もし私が他の女性も好きになっちゃったらどうする? 四人以上で付き合うって選択肢はアリなのかしら』
「それは経験もないんで、わからないですけど……。でも三人と四人って、そんなに変わりますかね? あまり違いもない気がするんで、考慮はしますよ」
『そうかぁ。答えてくれて、ありがとう。じゃあ明日、午後からのデートで会いましょう』
変な質問だなぁと、A’ちゃんが思っている中、通話は終了した。