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第15話 イコール

「あの……ごめん花ヶ崎、さっきの質問は無かったことにして」

「それは無理でしょ!?」


 そんな気はした。

 けれど、あんな誘導尋問じみた言い方をされては、咄嗟にそう聞いてしまうのも仕方ないのではないだろうか?


「これはお互いの為に聞かなかった事にしてくれ」

「アタシほぼ告白された気持ちだったんだけど!」

「俺は断られるつもりだった」

「寧ろなんで断られると思うの!?」


 寧ろなんで断られないと思うんだろう。


「君も星野と大差ないくらいには相当一途だろ?」

「でも相手悠岐じゃん!正直八割くらい諦めてるよ!」


 そこは頑張れよ。これまで頑張って来たんだろうからさ。


「四ノ宮が離れようとしてるなら何かしら出来そうだけどな……」

「アタシだって最初はそう思ったけどさ……」

「……けど、なんだよ?」


 花ヶ崎は小さくため息を吐いて少し落ち着いた様子を見せた。空になったカップに視線を落として、ポツリと答える。


「……いっちゃん、最近ビックリするくらい元気ないから、もしかしたら振られたのかな……って」

「…………」


 ……俺もさっき見かけた時に思ったよ。


「そうなったら本当に無理だよ」


 元々、他人事だなんて思っていなかった。

 だが、どうやら本格的に他人の話だと思っていられる状況では無くなった様だ。


「……四ノ宮が振られるって、流石に無いだろ」

「いやでもさ、いっちゃんと付き合うと自動で悠岐が着いてくるんだよ?それって普通に嫌じゃない?」


 すげえ嫌だよ。

 だから花ヶ崎が「いっちゃん振られたんじゃないかな」って勘違いするくらいに四ノ宮が落ち込むレベルでコソコソしてるんだ。


 ……てか、どうしよう。今日に関しては花ヶ崎と仲良くしてた時間が長いから、今更「四ノ宮が好きな相手って俺なんだよね」とか言い辛過ぎる。

 落ち込んでる原因の半分くらいが花ヶ崎である可能性が出て来てしまったから、本当に言い出し辛い。


 多分きっとおそらく、明日には機嫌直ってる筈だ。


 四ノ宮のカバンに忍び込ませた手紙には連絡先は勿論、一人暮らしをしているマンションの住所も、来週からここでバイトをする事も書いてある。

 俺から行動すると星野に阻まれること間違い無しなので、彼女が自分から行動できるように情報を共有するしかないが……。


 と、そこまで思考を巡らせてから不意に思い付いた事を口に出した。


「……あれ?」

「な、なに?」

「もしかして四ノ宮って、星野のことめちゃくちゃ嫌ってたりしないよな……」

「今は、どうだろう……。今回のことで本格的に拒絶するとかはある……かも」


 今回のこと、というのは「星野の存在が原因で四ノ宮が振られた場合」という仮説だよな?そうだよな?君の中で勝手に確定させないでくれよ。


「ま、まあ……そうなったら今度は星野が暴発するよな」

「うんする」


 どうしよう、明日が怖くなって来た。星野にあの手紙が見つかったら、俺は彼に殺されるんじゃないか?

 流石にそこまで過激にはならないと思いたい。


 俺は再度、こっそりとため息を零した。

 しばらくは静寂の中でコーヒーを飲み……俺の方も空になったカップを置いた頃、再度花ヶ崎が口を開いた。


「ね、ねえ。ちょっと、話戻るんだけどさ」

「ん?」

「赤瀬って……。アタシのことどう思ってるの?」


 ずっとモジモジしていたから何を言われるのかと思えば……突然本当に何の話だ。

 いや、ついさっきの話か。無しって事にはしてくれないのか。


「どうって、そうだな……。一途だなとか、目立たないだけで可愛いよなとか、そういう話?それとも──」


 普段俺が彼女をどんな子だと思って見ているのか、という話かそれとも、俺が花ヶ崎にどんな思いを抱いているか、という話か。


 俺はそのどちらなのかを問いかけようとした。

 だがその前に花ヶ崎は顔を赤くして、今にも立ち上がりそうな勢いで声を荒らげた。


「違っ、そっちじゃ……って、はあ!!?何言ってんの急に!?」

「うるさっ……」


 てかさっきも聞いたよその台詞。


「あのさぁっ!赤瀬はアタシの事どうしたいのさ!?」

「い、いや……。別にどうしたいとか考えて無いけど……」


 多分、失言だったんだろう。花ヶ崎は何かが暴発したかの様に席を立ち上がった。


「ここに来るまででも思ったけどさ!昔の赤瀬ってこんなじゃ無かったよ!!なんかさり気なくパンケーキ奢ってくれたり、しかも可愛いとか言うし、なんか告白じみたことも言ってくるし……!」

「えぇ?ちょっ、落ち着……」

「一回しか話したこと無い好きな物の話とか普通覚えてないじゃん!3年も前の話だよ!アタシに惚れられるのが羨ましいとか、もうそういう事じゃん!」

「花ヶ崎、マジで一旦落ち着いて……」

「アタシの恋応援するのか、アタシのこと落としたいのかハッキリしてよ!」


 ヒートアップしすぎだろ。他の客が居ないのをいいことに騒ぐんじゃない。


「あ〜もうっ!赤瀬ほんっとにそういうとこだよ!」

「だからそれ何なんだよ?」

「はあぁ〜……もうやだ。なんでアタシ悠岐なんかのこと好きになったんだろ……。中一まで我慢すればアタシのこと見てくれる人が居るのにさぁ……」


 情緒不安定かよ。あぁ、いや俺のせいか。これ……俺のせいなのか?


「……ごめん、帰る。赤瀬と居ると心グチャグチャになっておかしくなる……」


 騒ぐだけ騒いでやっと落ち着いたと思ったら、花ヶ崎は涙目のままカフェを出て行ってしまった。

 あんな百面相を見せられた後では流石に追いかける気にもなれず、俺はその場でため息を吐くしか出来なかった。


「……女心わっかんねぇ……」

「罪な男だねぇ」


 食器を片付けに来た才羽さんは俺にそう言って、人の悪い笑みを浮かべた。

 他にお客さんも居ないので、才羽さんに俺達の会話が聞こえなかった訳もない。


「……これ俺が悪いんですか?」

「10、0でキミが悪い」


 才羽さんの視点からでは100%俺に非があるようだ。だが謝ろうにも何を言えば良いのやら。

 てか、上着持って行かれたんだけど……別に良いけどさ。


「その気がない女の子を相手に、アレだけ意識させるようなことしてたら、乱心されて当然だよ」

「……いや、普段相手にしてる姉さんにはアレより気を遣うんで……」

「お姉さんと同級生の女の子を一緒にしちゃいけないよ」

「そうは言いますけど、普段は姉さん以外の女の子を相手にしないんだから仕方ないでしょ……」


 その姉さんとも、会う機会は減っているが。


 才羽さんは皿を片付けると、コーヒーのおかわりを持って来て席に戻ってきた。


「君はもう少し、自分の魅力を自覚した方が良いかもね」

「自分が特別な方だって自覚は、割とありますけど」

「特別な事と、魅力的な事は別だよ。それに、君の言う“特別”も詩織ちゃん基準だろう?」

「……そうですけど。んー……わっかんねぇなぁ……」


 俺は花ヶ崎がされて嫌だと思う行動はしていない筈だ。


「さっき、キミはあの子との関係をさり気なく「友達」だって言ったね」

「……俺そんなこと言いましたか?」

「友達にコートを貸すくらいは普通、とか言ってたよね」

「あぁ……」


 特になにか意識して言った訳ではないが、それが何なのだろう。


「もう一度、今度はちゃんと質問するけど……キミにとって、あの子は「友達」なのかい?」

「難しいこと聞いてきますね」


 俺がそう言い返すと、才羽さんは「答え出たよ」と苦笑いを浮かべた。


「難しいと思う時点でキミは、ある程度は彼女を一人の女の子として意識している訳だ。つまり100%対等な存在だとは思ってないんだよ」

「……」


 適当に喋ってる様に見えて、ちゃんと考えての意見だったみたいだ。

 その辺りは既婚者なだけあってしっかりした価値観があるのだろう、俺は才羽さんを少しだけ見直した。


「そしてそれは……」

「花ヶ崎にとっても同じ、って言いたいんですよね」

「キミはいつも理解が早いね」


 つまり花ヶ崎の言う「そういう所」というのは、俺の無意識の行動が、花ヶ崎に一人の異性を意識させる様な行動だった事をさり気なく伝えてくれていた、という訳だ。

 逆に、言ってしまえば彼女は俺と「友達」として関係を築いていきたいと思っていたという事なのだろう。


 ついさっき、花ヶ崎のその気持ちも崩れ去った様だが。


「……確かに、俺が悪いですね」

「そうだろう?」


 花ヶ崎が星野を好きだと知った上で、彼女に意識される様な行動ばかりをしていた挙げ句の果てに告白じみた事を言ったら、彼女にとってそれはもう告白されたと同義みたいな物だ。


 ある程度互いを知り、ある程度互いに好感を抱いている状況だから成り立つ訳だが……その「ある程度」は、中学一年の頃にもう過ぎていた。


 少しだけ成長してから、改まって時間を共にしただけで関係値やお互いを見る目は随分と変化していた。


 中高生という多感な時期ゆえの食い違いなのだろう。


「……思春期って面倒だな」

「いやぁ、青春だねぇ」


 今日の事を母さんが知ったら、才羽さんと同じセリフを言いそうだ。


「……どうすれば良いですかね?」

「それを考えるのはキミの仕事じゃないかな」

「さっきから、肝心なことは訓えてくれないんですね」

「肝心なことこそ、自分で考えるべきだよ」


 正論言われては何にもならない。


「……今日は帰ります」

「そう、それならまた……っと、そうだ。忘れるところだった」

「……?」

「雪が、キミの料理を食べに行くってさ。昨日、撮影から帰って来たばかりでね」


 うちは定食屋じゃないぞ。


「いつですか?」

「今日の深夜」

「自由だなあ……。分かりました」


 てかなんで俺に直接連絡して来ないんだ?


「ははっ、キミは良いお嫁さんになるね」

「雪さんが亭主は俺の手に余るんで、他を当たって下さい」


 そんな軽口を言ってから、喫茶店を後にした。

 夕方の空はまた少し雨を降らせ、制服の肩を濡らしていった。

次回は蚊帳の外になってた四ノ宮の出番だ、やった〜。代わりに理桜くんの出番はなし、こんな女誑しは私の手に余るんでw。


それと、四月まで投稿止まります。今月末はとても大切な用事があるので……。


このお話が面白かったら、感想、フォロー、レビュー等をよろしくお願いします。ではでは……。

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