#高校一年生 奈緒(3/3)
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夏休み。私は地元や高校の友達と毎日遊んでた。家族で旅行もして、割と普通に過ごしてた。
地元の友達は夏休みだからか垢抜けていた。それはまるで、私が今まで憧れていたギャルのような姿で……日焼けしてるし髪の毛もシルバーだっりピンクだったり、みんないろんな色に染まってて、ただそこに集まっているだけで華やかだった。
「ナオー! 元気だったー? なんかお嬢様系じゃね? ウケるんだけどー」
喋り方までギャルになっていた。私も高校に入るまではそうだったくせに、なんだか違和感を覚えた。やっぱり私は今のままでいいやと改めて思った。あ、でも良い子たちなのは変わってないんだけどね。だからずっと友達でいるよ。
みんな彼氏が出来たみたいで、恋バナで盛り上がっていた。
「ナオはー? せっかく都会の学校に行ってるんだから、オトコいっぱいいるでしょー? 遊んだりしないのー?」
「都会の学校でも、私は女子校だから……男の子と会う機会がないんだ」
「でも合コンとかあるじゃん。都会の女子校と男子校で合コンしてるって雑誌に書いてあったよ」
「ナオも玉の輿だね。いいなー」
どうやら都心の男子校に通う生徒たちはみんなおぼっちゃまというイメージらしい。それでその人たちと付き合って結婚するという妄想までしている。確かにね。お金持ちの子もいるだろうけど、みんながみんなそうとは限らないからね。私の友達の中には良家の子もいるけど、私は庶民の子だからね。
「でもうっかり付き合った人が、おぼっちゃまだったっていうのもあるかもね……」
なんとなくノリでみんなの話に乗っちゃったけど、今のところは誰かと付き合うとか考えられない。
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夏休み明け。教室に入ると、クラスメイトの様子が少し変わっていた。やっぱり夏休み中にみんな羽根を伸ばすんだろう。日焼けしてるのもそうだし、なんとなく外見が……ギャル化してる子が何人かいた。
夏休み中もよく遊んでいた亜香里たちは部活もあっただろうし、特に変化はなかったけど、他のグループの子たちの中には完全に垢抜けた子もいた。
高校生だしね。開放的になるんだろうね、いろいろと。私もいつかそんな日が来るのかなあ……いや、来ないな。私はたぶんこのまま。普通がいいの、普通が。
うちのクラスだけじゃなくて、他のクラスにも外見が乱れた生徒がたくさん出てきたということで、体育館に一年生の生徒が集められて学年集会が始まった。
強面の生活指導の先生が、マイクで脅しをかける。
「茶髪、ピアス、パーマ……そんなものはこの学校では認められていない。もしこの学年で、そんなことをしてる生徒を見つけたら、俺はただじゃおかない。親を呼び出して、場合によっては停学処分だ。それが嫌なら学校のルールを守れ。夏休みは終わってるんだ、気持ちを切り替えろ。いつまでも浮かれた気分でいるな」
私は早いうちにギャルを卒業しといてよかった。あのままでいたら、私も怒られるどころか停学になってたかもね。
だんだんみんなが、それぞれの個性を出し始めた夏休み明け。
体育祭や学園祭、林間学校などの行事も通して、私はクラスメイトとどんどん距離が縮まり、みんなと仲良くなった。
私は、ずっと思い描いてた楽しい高校生活を満喫している。