ラフランスのかほり 〜日の本は出羽国より〜
少し前、ネットで何かを探していて、たまたまラフランスが検索に引っかかった。
ラフランス、洋梨。
わたしはこの果物を食べたことがない。
そもそも果物の酸味が好きではないので、わざわざ買ってまで食べたいとも思わない。
梨の仲間なのだから酸味はないのだろうが、それでも日頃食べつけないものを食べてみようとは思わなかった。
なのになぜか、食べたことがないはずのこの果物には生クリームのようなねっとりとした柔らかさのイメージがある。
果物で生クリーム?
意味不明だ。
いやもう自分で思っててなんだがどうかしてる。
でもやっぱりわたしの中ではラフランスは生クリームのような果物なのだ。
全く想像もつかないが。
さてそんなラフランス、検索で引っかかって出てきた内容は、
①本国フランスでは栽培されていない
②嘘かほんとかフランスでは絶滅。(野生ならあるのか?)
③世界でも日本しか栽培していない。そのほとんどが山形。
マジか。
この複数の記事を読んで、わたしは俄然ラフランスが食べたくなった。
今度見かけたら買ってみよう。
そう思ってすっかり忘れていたその数日後。
夫が職場で貰ったと言って渡してきたその紙袋の中には、なんとラフランスが。
マジか。
ラフランスからはおフランスの上品な香りがするのだろうと思っていた。
確かに、ほのかな甘い匂いがする。
その柔らかさは上品と言っていい。
だがその上品さは栽培の難しさにもへこたれなかった山形県人の誇り高い上品さだった。
初めて食べたラフランスは、甘くて柔らかくて、不思議な食感だった。
梨というよりは林檎のようで。
でもサクサクした林檎ではない。
さくりと歯応えの柔らかな、どこか心地よくまとわりつくようなそんな錯覚がする。
もしかしたらこの独特の食感を生クリームといった誰かがいて、わたしはそれを覚えていたのかもしれない。
甘く、良い香りのするラフランス。
初めて食べたそれに感動しきりのわたしの隣で、夫が不思議そうに首をひねった。
「ラフランスって洋梨だろ?珍しいか?」
東北出身の夫は地元で食べたことがあるらしい。
ネットで調べたら、夫の出身地は山形ではないが確かにラフランスが生産されていた。
寒い地方の果物らしいラフランス。
たとえおフランス産でなくとも、亜熱帯産のわたしには特別感のある果物であることは間違いない。