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苦手な方はご注意ください。

外れた現実と朱い石  短編読切完結

作者: 伽藍 瑠為

外れた現実と朱い石







5年前の事。

突如とつじょとして昭島市の多摩川に遺跡が現れた。

国が隅々まで調査した結果、その遺跡は旧石器時代の物とわかり、更に入念に調べられ、危険性は無いと判断された。

そして、世界遺産に登録され、観光地として人気を集めていた。




俺は小学校6年生の時に仲の良かった5人でその遺跡へと社会科見学などで良く行っている。

そして、中学の2年の社会科見学でまた行くこととなった。





「はーい!全員聞いて!!14時にここに集合する様に!!」




先生から号令がかかり、自由に見学する事に。

俺はもう見飽きた遺跡を1人で歩き、昔の思い出に浸っていた。

しかし、何か違和感を感じている。

六年生あれから成長したからなのだろうか。





「懐かしいな…ここでよくかくれんぼとかしてたな…。」





その時、後ろから声がかかる。




「シュン!!待ってよー!」




振り返るとそこには皆が走って来ていた。




「せっかくだから小学校の時みたいにまた5人で回ろうよ!!」




幼馴染のマキ。

クラスで可愛いと評判のマキの提案からまた全員が集まったのだ。




しかし、その時に俺は気づいた。




「…な、なぁ?…こんな所に道あったっけ?」




俺のその言葉に全員は首をかしげる。

そして、お腹を出っ張らせ、お菓子をほうばるタロウが言う。




「行けば思い出すんじゃない?」




その言葉に俺はうなづき、皆んなで昔話をしながらその通路を歩く。

しかし、歩けば歩くほど記憶にはない。





「本当にこんな所あったっけ?」




力自慢のタケシが答える。




「有ったような…無かったような…」




そして、道は下に続く階段になった。

それを見てマキが言った。




「あ!やっぱり来たことあるよ!!でも…この先は思い出せないけど…」




「行ってみよう。」




俺は知りたかった。

記憶にあるような、無いようなこの違和感。

何か大切な物を忘れてる様な感覚。

でも、考え過ぎてそう思っているだけなのかもしれない。

しかし、それを明確に今はしなきゃいけないと思う。

なぜか、焦らされる気持ち。

急がなきゃいけない謎の感覚。

気づけば皆んなが走っていた。

そして、階段を駆け降り、最後の通路を抜け出し、足を止めた。




「な、何で…僕達…ハァ…は、走ってるの…?」




息を整えようと必死になりつつもタロウは自分自身も抱く疑問を口にした。

しかし、俺はその言葉に返答出来なかった。



「な、なんだよ…これ…。」



目の前には…大きな祭壇さいだんがあり、ピラミッドの様に高く、頂上の方で何かがあかく光っていた。

朱光それに気づき、皆んなはまた走り出す。

そして、たどり着いた天辺てっぺんには朱く不気味に輝く石が置かれていた。




「…これ…」




なんとも言えない感覚。

気づけば手が勝手に伸びていた。

俺がその朱石いしに触れたその瞬間に朱い光が全てを包み込んだ。

あまりの眩しさに目をつぶり、光量が少なくなった所で目を開け、辺りを確認する。




「皆んな大丈夫か?」




の言葉にそれぞれが返事をし、皆んなの無事を確認した。

そして、朱い石を見てタロウが言う。




「これ…大発見じゃないの?僕達有名人になるんじゃ…」




タロウのその言葉に俺は嬉しく思えない。

その理由はまだ俺の中で違和感が終わってなかったからだ。



「とりあえず…先生に話してみるか…。」



朱い石をポケットへ入れ、俺達は来た道を戻り、歩く。

しかし、歩いても歩いても人の気配を感じ無い事に気づいた。



「ど…どういうことだ…?」



急いで皆んなで外へ出た。




「…え…?」




外は夜になっていた。

しかし、それよりも驚く物が目の前にはあった。

天にも登る様な大都市が地上から連なり、俺達のよく知る街は何処にも見当たら無い。

その時、俺は皆んなの戸惑いを落ち着かせる為に言葉をかける。



「…まずは状況の把握が大事だから俺は都市あそこに行ってみようと思う…ここで待っててもいいと思うけど…皆んなはどうする?」



何故かはわからないが、俺は冷静だった。

俺の言葉に全員が賛同し、皆んなで行く事になった。


そして。


街に入った時の第一印象はスラム街の印象が強く、ホームレスの様なボロボロの服を来た人達が数人見受けられ、更に上空を見上げると地上とは打って変わり、車の様な物が飛び、電車の様な物も飛び、ネオンのあかりが激しくきらめいている。

まさに天と地のような印象だった。




「…話…かけてみようか。」




とにかく、その近くに居る人に話しかけようとした時だった。

遠くからサイレンの音が鳴り、徐々(じょじょ)に近づいて来るのがわかる。

その音を聞き、ホームレスはあわただしく血相けっそうを変えて逃げ、そのすぐあとにポリスと書かれた丸いロボットの様な機械が数台、上から宙を飛び俺達の前に現れ、そして、ガチャンと音をさせた。




「…え?」




気づいた時にはガトリングを向けられていた。




「逃げろぉっ!!」



俺は一早くそれに気づき、叫んだ。

それと同時にガトリングが凄まじい音を奏でて乱射される。

俺は近くにいたマキだけをかかえ、すぐ横の路地へと飛んだ。

そして、振り返った時にはタケシとタロウはたくさんの銃弾を受け、血が飛び散り、顔は粉砕し、腕や脚は吹き飛び、叫ぶ間も無く銃弾の雨に撃たれていた。





「……タケシ?!…タロウ!!…」




混乱した。

友達が死んだ。

夢でも見ていると思った。

しかし、マキの悲鳴と恐怖が俺に目を覚まさせる。




「…に…逃げるぞ!!」



俺はマキを無理やり引っ張り、走った。

恐怖ですくむ脚を必死に動かし、ただ我武者羅がむしゃらに走り続ける。

幸いにも路地は迷路の様に曲がり角が沢山たくさんあった。

追撃の銃弾をギリギリでくぐり、道を進む。

しかし、進んだ先を見て絶望した。




「…い、行き止まり…?…」




振り返った時にはガトリングが構えられていた。




「…お…わった…。」




そして、ガトリングが放たれた時だった。




「ふせろぉ!!」



突如として激声が飛んだ。

坊主にはちまきの男と、フードを深く被った男の2人が空から落ちてきた。

坊主にはちまきの体格のいい男が大きい盾を持って防御する中、フードの男はマシンガンで交戦する。

更に足元のマンホールから髪を結んだ、黒髪の女性が現れ、そして叫ぶ。




「こっちに来い!早く!!」



俺達は誘導に従い、屈みながら向かう。

それと同時にフードの男が手榴弾を投げ、叫ぶ。




「離脱!!」




俺達の後に続き、交戦していた2人もマンホールの中へと飛び込んだ。

黒髪の女性に案内されながら、下水路を歩く。

俺はおもむろに止まり、聞いた。




「…あ、あなた達は…い、いったい…?」




その俺の問いにフードを被った男が言う。




「黙って歩け…話は後だ。」



背中を突き飛ばされ、大人3人は周りを警戒しながら進む。

そして、黒髪の女性が壁の前で止まり、近くにあったレバーを下げた。

空気が抜ける様な音を立てて、壁の一部が開き、地下に向かう階段が見え、フードの男が言う。




「行け。」




余りの扱いに、この人達は味方では無いと判断した。

しかし、震えるマキを見て今は逃げれないと、そう思っていた時、フードの男が口を開く。




「逃げようとしても無駄だ…お前の考えは手にとる様にわかる。」




俺はそんな素振りも見せていないのにフードの男はそう言った。

言われるがまま黙って案内しに従い、迷路の様な道を歩かされ、そして、辿り着いた最後の扉を黒髪の女性が開ける。

扉の中にはPCが沢山あり、それを眺め、ポテチをほうばり、片足が無い男性がいた。

そして、その男性が口を開く。




「おかえり…あれ?他の2人は?」




その言葉に女性が言った。




「死んだ。」



「あちゃー!間に合わなかったか!」



友達が死んだのに軽い態度を見せる男に俺は拳を強く握った。

しかし、その時だった。

ガチャっと背中で音がし、フードの男が言った。




「正義感だけでは命を落とすぞ。」




背中に突き付けられていたのはハンドガンだった。




「座れ。」




フードの男にそう言われ、震えるマキと一緒に椅子に座った。

そして、体格のいい坊主にはちまきの男性が言葉を口にする。




「怒る事はいい事だ!俺らは嬉しいよ!とりあえず飯だ!話はそれからだ!」



そう言って汚い冷蔵庫から荒く調理された肉を取り出して、俺達の前に置き、言った。




「食え。」




どうやら殺すつもりはないらしい。

しかし、ここで食べなければ何をされるかわからない。

俺はその肉を言われるがまま食べた。

そして、ポテチをほうばり続ける男が俺に聞く。




「どう?うまいか?」



「…ええ…少し臭いし、硬いですが…食べられなくはないです…」



しかし、男の次の言葉に俺は驚いた。




「良かったぁ!それ俺の脚なんだ!」




次の瞬間、俺は激しく嘔吐した。



「まぁ…そうなるよね?この間の戦いで脚が飛んじゃってさ!勿体無いから食料にしたんだ。こんな所に肉なんて貴重なもの自分の体でしかないからね…でもちゃんと感謝して食べろよ。」



他の仲間達はそのにくを無言で食べ、俺はもう肉に手をつけられなかった。

そして、俺は意を決して口を開いた。




「あ、あなた達は味方ですか?」




その問いにフードの男が言う。




「違うな…お前が俺達の味方なんだ。」



「どう言う事ですか?」



「朱い石…ちゃんと持ってるよな?」



「…え?…なぜ…それを…?」



「その朱い石の力が必要なんだ。」



「…なら…これは渡します…俺達を…帰してください!」



俺は石を差し出しそう言った。

しかし。




「違うな…石とお前が必要なんだ。」



「俺達は帰れないのですか?」



「帰れるし、死んだ友達も生き返る…全てが成功すればな…お前は手伝うだろ?」




フードの男はまた見透かすように言う。




「さっきからなんなんですか?」



「何故…俺がお前の事がわかるか教えてやろうか?」



フード男が間を置いて、被っていたフードを取り、言った。




「俺は…お前だ。」




そこには老けてはいるが、確かに自分と同じ顔をした俺が居た。




「え?」




頭が回らない。

混乱から理解が追いつかない。

そんな俺をまた見透かし、未来の俺は説明を始めた。




「ここは言わば未来だ…ひん曲がってる未来だけどな。」



「…てことは…?」



他の仲間の顔を見た時に気づいた。

脚が無いのがタロウ。

体格のいいのがタケシ。

黒髪の女性がマキ。

自分の考えが見透かされていた理由に納得した。

そして、未来の自分が続けて口を開く。




「この世界はその朱い石の所為で出来た「外れた世界」だ。」



「どう言う事ですか?」



「この世界にももう一つ朱い石が存在する。」



「この朱い石はなんなんですか?」



「それは空想を現実に変える石だ。」



「空想を現実に?」



「子供の思想が現実で乱れ、膨れ上がる感情に干渉し、力を発揮する石だ…だから手伝え。」



「いや…そんな事言われても…」



「お前が手伝う理由がある。」



「な、なんですか?」



「お前達はここへ何人で来た?」



「…5人ですけど…?」





未来の俺は一つため息をついて言葉を続ける。




「…タケシ…タロウ…マキ…シュン…の他にいったい誰が居るんだ?」




その問いに俺はバカバカしいと思い、口を開いた。




「は?そんな…の…あれ?…」




そう。

俺は今気付かされた。




「…え?…1人…足りない…?」




最初から今の今までまで5人で行動していると思っていた。

しかし、1人足りない。

最初から抱えていた違和感を俺は要約見つけた。




「…俺は…な、なんで…5人だと…思ってた…?」




混乱する俺を見て、未来の俺は言った。




「石を出せ…そして、唱えろ…「記憶を返せ」と。」




俺は言われるがままに石を取り出し唱える。

そこに真実があると信じて。




「俺の記憶を…返せ!!」




頭の中で何かがれる音がした。

その瞬間に見た事ない映像が流れる。




「そ、そうだ……ケンヤ…。」




俺は噛み締める様に親友の名を口遊み、気づけば涙を流していた。

小学校6年生の時。

学校の授業で遺跡に見学へ行き、俺達はあの祭壇で朱い石に触れ、一度この未来へと来ていたのだ。

そこで待っていたのは未来のケンヤだった。

幼きケンヤが必要だと言い、大人ケンヤは来なければ全員を殺すと脅し、親友の賢いケンヤは俺達を守る為にこの世界に残ったのだ。

その時、朱い石で記憶を消され、ケンヤの存在は書き換えられ、俺は今の今まで1番の親友を忘れてしまっていた。




「…ケンヤを…助けないと…。」




そして、未来の俺が笑って言う。




御前おれならそう言うと思ってたよ。」




「聞かせてくれ…俺は何をすればいい。」




「説明する。」




未来の俺が全て説明してくれた。

別の形で朱い石を手に入れた14歳の未来の俺達は、朱い石の力を使って大人の作る矛盾のルールを正し、平和な世界を作る為に、全ての間違いや罪の無い世界を作ろうとした。

その中でもケンヤは、ずば抜けて頭が良く、朱い石を使ってケンヤの想い描く精密なルールを作った。

そして、完璧にルールで固められ、出来たのがこの世界だった。

最初はとても順調だった様だ。

しかし、ケンヤはエスカレートした。

罪を犯した者や裏切った者への制裁が死だった。

ルールを守らない者は殺す。

どんどんと変わっていくケンヤを止められず、未来の俺達はケンヤから逃げた。

そして、そのケンヤを止めるべく結成されたのが、ここレジスタンス。

もう何十年も戦い続けてると言う。

他にも部隊がいくつかあり、今は作戦行動中の様だ。

その時、俺は疑問に思った。




「俺達が来ることがなんでわかった?」



「連絡があった。」



「連絡?」



「お前の親友のケンヤからだ。」




俺は連絡それを聞いて親友のケンヤは大人ケンヤと違ってまだ間違いをわかっているのに安堵あんどした。

そして、未来の俺が言葉を口にする。




「俺は俺達の世界のケンヤの間違いをたださなきゃいけない…過去の俺よ…協力してくれ。」



「…わかった。」




そして、朱い石の使い方を学ぶべく、訓練ルームに案内された。




「まずは左手に石を握り、この鉄パイプに右手をかざして鉄パイプが曲るイメージを思い描いてみろ。」




俺は言われるがままにやってみる。

しかし、鉄パイプは曲がらなかった。




「感情が足りてない様だ。」



「どう言うこと?」



「その石は感情に反応するんだ…お前はこれから何をするんだ?」



「ケンヤを助けたい!」



「そう思ってもう一度やってみろ。」




しかし、鉄パイプは曲らない。

それをみて未来の俺は深いため息をついた。

なんとも不思議な光景に思えた。

過去の自分に何を期待すると言うのか。

そんなに過去の自分が優秀だったものなのか。

そんな記憶は俺には無い。

俺からしたら勝手な期待だ。

少し、未来の自分に苛立ちを覚える。

しかし、ケンヤを助けたい気持ちは本当のはずだった。

けれども、鉄パイプは曲らず、石もこたえてくれない。

俺は自分の気持ちに疑心暗鬼になった。

本当は助けたいと思ってないのかもしれないと。

思えばずっと親友の事を今の今まで忘れ、そして、守られ、何事もなかった様に日常を送ってた自分に腹が立ってきた。

それと同時に罪悪感も生まれ、ケンヤにちゃんと謝らなきゃいけないとさえ思えた。





「ケンヤ…ごめん…。」





拳を強く握り、不甲斐ない自分を押し殺す様にそう口遊くちずさんだ時、朱い石が輝きだし、鉄パイプが曲がり、そして、気付かされた。

俺はまずケンヤに謝らなければならないのだと。




「俺の今の強い感情は…謝罪これか…。」




理性や、理屈、常識、使命では無い。

俺が感じた情が石に力を与える。

思いと意思が大事なのだと理解した。

その時。

突如として、警報が鳴り響いた。

それを聞いて未来のシュンが口を開く。




「…ここがバレたか…まずい…作戦を今この瞬間から開始する!準備しろ!」




ついに始まってしまった。

マキは大人マキに誘導され安全なところへ避難するとなり、俺はしばしの別れを伝える。




「ケンヤを助けにちょっと行ってくる…必ず迎えにくるから。」



「うん…ねぇ…シュン?」



「どした?」



「ケンヤは本当に助けて欲しいのかな?」



「どうして?」



「助けて欲しいならもっと早く事が起きててもいいと思ったんだよね…。」




マキのその言葉に俺は気付かされた。

俺達を守る為にこの世界に覚悟を決め残ったケンヤが今更助けて欲しいと言うだろうか…。

しかし、それでも。




「どちらにしろ…俺はケンヤに謝らなきゃいけないと思う…まずは会ってちゃんとケンヤと話さなきゃ。」



「そ、そうだね…必ず帰ってきてね。」



「わかった…必ずだ。」



その時、後ろから声がかかった。




「シュン!行くぞ!!」




俺はマキに最後の別れを言った。




「行ってくる。」




そして、その場を後にし、俺は未来の俺と合流した。

車へ向かう道のりを走りながら未来の俺が言う。



「これをつけろ。」



そう言って渡されたのはスコープだった。

続けて未来の俺が説明する。




「タロウがそこから作戦の指示してくれる。」



「わかった。」




電源を入れ、装着する。




「ジュニア!緊張してるかい?」



大人タロウの声がスコープから聞こえた。



「ジュニアって…」



「シュンが2人もいるって呼びずらいからさ!ネームはジュニアでいくよ!」



「まぁ…いいか…。」



「さっきは軽い発言ですまなかったね。」



「あぁ…俺も状況を分かってなかったから…」



「いや…怒ってくれて嬉しかったんだ…シュンは過去も未来もやっぱりシュンなんだなってタケシもそう言ってた。」



「あぁ…だからか…。」



「全て終わらせて、過去の僕達を必ず生き返らせようね!」



「頑張る。」




そして車へ乗り込み、未来の俺が言う。




「ケンヤはセントルの頂上に居ると情報が入った…覚悟はいいか?」



御前おれならわかってるんじゃないのか?」



「…愚問ぐもんだったな。」




2人で微笑みを浮かべ車は走り出した。

車はセントラルとは反対方向へと進む。

そこで到着した時、目の前には数台のヘリコプターが用意されていた。




「来たか!」




俺達を待っていたのは大人タケシだった。




「セントラルで既に戦闘は始まってる…その間に上空からセントラル内部に侵入する…乗れ!」




「わかった。」




運転手が1人に俺と未来の俺はヘリへと乗り込み、タケシは重装備のヘリへと乗り込んだ。




「タケシは一緒じゃないのか?」



俺は少し、寂しさを感じ聞いてみた。




「あいつは…他にやる事がある。」



「そうなんだ。」



ヘリは浮上し、セントラルへ向け上空を進む。

そして、セントラルが見えて来た時、ポリスと書かれた球体の沢山のロボットが飛んできた。




「来たぞ!!戦闘を開始する!!」



ヘリは旋回し、それぞれ銃撃戦が始まった。

未来の俺は大きい機関銃を操作し、交戦する。




「くそ!さばききれない!!う、うわぁあ!!!」




ヘリの通信から仲間たちの悲鳴がいくつも鳴り響く。

徐々に仲間のヘリは墜落や、爆破され、数を減らしていく。

俺は恐怖で足が震えた。




「…。」




そんな俺をみて未来の俺が言う。




「…怖いか?」



「だって人が死んでるんだぞ!?精神を保つので精一杯だよ!!」



「それを噛み締めろ…お前をセントラルに連れて行く事で全てが終わる…みんなその為に命を使っているんだ…。」



「その責任を自覚しろと言いたいのか?」



「いや…その感情をケンヤにぶつけて来て欲しいんだ。」



「じゃぁ…おまえがやれよ!!」



「出来るならやっている…でも正直、代わりが過去の俺で良かったと思っている。」



「犠牲にするなら自分がか…。」



「話が早いな…。」



「わかるけど…けど…」




その時、スコープからタロウの報告が入った。




「第二波くるよ!!」




最初の第一波だいいっぱに引き続き、第二波の軍勢が押し寄せてくるのが見えた。




「あ、あんなの…ど、どうすんだよ…。」




俺は余りの数に絶望した。

もう残ってる仲間のヘリはたったの数機。

どう見ても勝ち目はなかった。

その時、未来の俺が言う。




「心を強く持て。」



「は?なんだよそれ?」




その時、タケシから通信が入った。




「ヒャッホー!!ジュニア大丈夫か!?」



「全然大丈夫じゃない!!」



「だろうな!けどな!俺は本当に嬉しかったんだぜ!過去の俺が死んだ時、ちゃんと悲しんでくれただろ?しまいにはタロウの時に怒ってもくれた…あれは嬉しかったねぇ!!…だからこそ…頼む…お前がこの世界を導いてくれ。」




こんな時、どう声をかけていいのかわからない。

自分にできることなど限られている。

俺はただ…ケンヤに謝りたい一心が今は強い…。

そんな俺に皆んなは期待する…。

でも、その時気付いた。

未来の俺は1人で期待これを背負ってたのか…。

少しぐらい…俺の背中に皆んなの期待を預かってもいいのかもしれない…。




「…うん…ま、任せて…。」




「それが聞けて嬉しよ!!ほぉぉお!!テンションあげていくぜ!!」




横に張り付いてたタケシのヘリが加速する。




「…そんな喜ばなくても…」




「じゃぁな!」




「…え?」




そして、タケシは敵の群れに突撃し、激しく爆発した。

爆発それを見て、タケシが乗っていたヘリの重装備は全て爆弾だったのを今、理解した。




「…タ、タケ…シ…?」




死んだ。

また人が死んだ。

仲間が死んだ。

友達がまた死んだ。




「…なんだよ…なんなんだよ…」




俺は俯き、全身に煮えたぎる怒りと、悲しさでりきみ、このどうしようも無い感情に押しつぶされそうになった。

その時、未来の俺が言う。




「言っただろ…心を強く持てと…。」




「おまえかぁ!!」




俺は咄嗟に未来の自分の胸ぐらを掴み激声を上げた。




「お前が指示したのかぁ!!!!」



「あぁ…そうだ…。」



「なんでだよぉ!!死ぬ必要なんてなかっただろぉ!!なんでタケシを殺したぁ!?」



「まだ子供おまえにはわからないだろうな。」



「わかるわけないだろぉ!!」




それと同時に大人と子供の違いを今、わかった。




「なら…俺が死ねば良かったか?」



「…そうだよ!命張って友達助けろよっ!!お前は俺なんだろぉ!?」



「なら…タケシに今のお前と同じ気持ちを押し付ければ良かったのか?」




気づけば未来の俺は手から血が溢れるほど、拳を力一杯に握りしめていた。

それを見て俺は言葉が詰まった。

それは、どちらも等しく残酷な事だった。





「…くそっ!!」





なんなのだろう…。

このどうしようもない怒りは。

誰も悪くない。

皆が頑張っている。

しかし、おさまらない怒り。

この矛先は何処へ向かえばいいと言うのか。





「…。」




腹の底から煮えたぎる熱に俺は我慢できなくなり、俺はおもむろに朱い石を取り出した。

それを未来の俺が見て血相を変える。





「ま、待て!何をする気だ!?」




「うるさい…だまれ。」




その瞬間、石の力が発動し、未来の俺は固まり動けなくなった。




「こんな世界…間違ってる…。」




しかし、大人ケンヤも悪事を働きたくてこの世界を作った訳ではない。

正しさを求めるがゆえに作ったのだ。

人それぞれが個々の正しさや、正義や、思いが存在し、交差している。




「俺が…終わらせられるなら…終わらせてやる。」





俺は頭に血が上り恐怖をも忘れ、石を強く握りしめてヘリの開いてるドアから飛び降りた。

そして、強い思いを抱いて、唱える。





「飛べ。」





その瞬間、体全身が朱く発光し、落下が急停止した。





「よし…いける。」




そこから凄まじいスピードでセントラルへ向け、空中で加速した。




『ケンヤ…お前となら…この世界を変えられるはずだ。』




俺はそう思い、トップスピードで飛行する。

その時、スコープからタロウの通信が入った。




「ジュニア!?どこいくんだよ!!」



「セントラルに行く…初めから…こうしておけば…タケシや皆んなは…死なずにすんだんだ…。」



「1人じゃ危険だから仲間が必要なんだろ!」



「仲間を誰も死なせたくないから1人で行くんだろ。」




そして俺はスコープを取り外し、捨てた。

しかしその時、後方からロボットが数台追って来た。





「邪魔だ。」




俺は右手をかざし、ロボット同士を互いに衝突させ、破壊した。

そして、目の前にはもうセントラルの塔が目と鼻の先にあった。

天辺てっぺん付近にある窓へと向け、更に加速する。




れろぉ!!」




窓を蹴り破り、中へと侵入する。

そこはまるで神秘的な教会の様な広い空間になっていた。

その時、声がかかった。






「来たね。」





声の方向に目をやるとそこには子供ケンヤがいた。





「ケ、ケンヤ!?無事だったのか!?」



「あぁ…無事だけど。」




ようやく会えた手前、俺はなんて切り出していいのか少し、困惑した。




「…ひ、久しぶりだな…。」



「それで?何しに来たの?」



ケンヤの帰ってきた言葉に俺は違和感を覚えた。



「え?…何って…俺は…お前に…謝りたいんだ。」



「それで?」



「……今まで……ずっと…お前のこと…思い出す事ができなくて…本当に…ごめん…。」



「それで?」



「…そ、それでって…な、なぁ…ケンヤ…お前はこの世界がこれでいいと…そうは思ってないだろ?」



「なんで?良くない?正しい事が正しい、とてもクリアな世界だと僕は思ってるけど。」



「…は?…お前…何言ってんだ…?」



「とてもいい世界じゃん!こんな素晴らしい世界は他に無いよ。」



「…お前…本気で言ってんのか?」



「だったら?」




その言葉に俺は激情した。



「この世界に来てタケシもタロウも死んだんだぞ!?ここの何がいい世界なんだ!?」



「この世界に適応出来なかったから死んだんだろ?」



「…は…?…ケ、ケンヤ…お前は…何を言って…るんだ…?」



「普通の事だけど?そんな話どうでもいいからさ…お前の持ってるその石を僕に渡してよ。」




ケンヤの言動に俺は困惑こんわくした。

ケンヤは何か俺達にできる何かがあるからレジスタンスへ連絡を入れたんじゃないのか…?

いや…。

何故連絡をもらっていたのに俺はケンヤと連絡を繋いでもらわなかったんだ…?

ケンヤから直接話を聞くこともできたはずだ。

何故、未来の俺はケンヤと話をさせなかったんだ…?




「…な、なぁ…ケンヤ?…お前が…俺を呼んだんだよな?」



「は?呼ぶわけないじゃん。」




その言葉にようやく気づいた。

俺の知るケンヤを信じるがゆえに違和感が繋がった。





「…お前…だ、誰だよ…」



「あはは!随分と感がいいじゃないかぁ!」



「ケンヤは!?ケンヤをどこにやった?!」



「僕がケンヤだ!!ただ!お前の知るケンヤはもう居ないけどなぁ!!」



「ど、どう言う事だよ…?」



「寿命だよ…朱い石を酷使すればするほど寿命が減ってしまうんだよ…だから過去のケンヤが必要だった!ただそれだけさ!」



「じゃ…俺の知るケンヤ…は…?」



「死んだよ。」



「…し…ん…だ…?」




この世界は俺から全てを奪って行く。

悲しい別れをさせられる。

楽しさなど無い。

それの何処がクリアな世界だ。

腹の底から上がってくる怒りが頭に登る。

はらわたが煮え繰り返る。

こんなに全てを打ち壊したい感覚は初めてだ。

その時、俺の頭の中で何かが切れた。











「…てぇ…っめぇぇぇええええええええ!!!!!」













俺の怒りに共鳴し、朱い石が閃光の様に発光し、激しい風圧が取り巻き、地面のプレートが風圧でいくつもがれ、飛んでゆく。








「…朱い石をここまで使いこなすか…。」





ケンヤも朱い石を取り出して力を使い、2人の風圧が次々と辺りを破壊していく。







「ぶっ飛ばすっ!!!!!」






俺は右脚を力ある限りに踏み込んだ。

その瞬間。

地面はクレーターの様にえぐれ、気付いた時にはケンヤの目の前に移動し、俺は凄まじい速さで殴りかかっていた。

殴った風圧でケンヤの後方の地面がえぐれる。

しかし、ケンヤはその速さに対応し、俺の拳を受け止めていた。




「ぬるいな。」





気づけば、膝蹴りを溝内にもらい、そのまま回し蹴りを浴び、俺は吹き飛んだ。

壁に埋まり、衝撃で落ちてきた瓦礫に埋まる。

しかし、俺は構いなしに力を使い、瓦礫を吹き飛ばして凄まじいスピードでもう一度ケンヤに殴りかかった。




「な!?さっきより速い…!?」



「1発…殴らないと…気がすまねぇ…だよっ!!!」





力一杯に顔を殴り、ケンヤは吹き飛び、瓦礫に埋まる。

しかし、優々とケンヤは瓦礫から出て、俺も含めてケンヤも無傷だった。




「ここまで朱い石を使えるなんてね…さすが中学生…中二病なだけのことはあるね。」




俺はかまわずにまた突進しようと腰を低く落とし、構えた。




「おっと!待った!」




しかし、止められ、空中にモニターが出現した。





「…っ!?マキっ!?」




そのモニターには気を失い手足を縛られたマキと大人のマキが写っていた。




「なんで!?」



「こんなこともあるかと思ってね…どうする?シュンくん?」



「…くそ…。」




俺は力を解いた。





「いい子じゃないか!やっぱりシュンはいつでもシュンだなぁ…さぁ…朱い石を渡してもらおうか?」




その言葉に俺は疑問に思った。

少なからず、俺とシュンは親友だった。

しかし、この世界では敵対している。

いったい何があったのか。





「なぁ…その前に…なんで…シュンと戦ってるんだ?昔は親友だったはずだろ?」



「そっか…小6で僕が居なくなったから君は違う世界線を経験しているのか…。」




俺の世界線では知り得る事の出来ないケンヤの過去。




「俺とケンヤにいったい何があったんだ?」



「君は大人の矛盾した理屈に対してどう思う?」




ケンヤの言葉に、未来の自分に感じた正しさの基準の違いを比較し、答えた。




「…許せない事もある。」



「ほう?わかっているじゃないか。」



「けど…間違って無い時もある…。」



「はぁ?間違ってないだと?」



「俺は…未来の自分と…今の自分を比較して思った事がある…正しさを肯定すると言うことは…責任を背負うってことだ…。」



「そもそも14歳の君に責任を背負わせてるのが良く無いんじゃ無いのか?そうならないためにも僕はこの世界を作った…僕が間違ってるとでも言うのか?」



「正しい世界なら悲しさなんて無いはずだ。お前はなんの責任を背負ってるって言うんだ。」



「皆んなの死。」



「狂ってる。」



「狂ってなんかいないよ!現にこの世界でレジスタンスを抜けば犯罪者数はゼロだ!素晴らしい功績だろ?前の世界の民主主義では出来なかった芸当が僕には出来たのさぁ!!」



「あぁ…そうかもしれない…でも…そこに幸せはあるのか?少なからず…俺はこの世界に来て幸せを感じていない。」



「それは君がシュンだからさ!僕たちは一生分かり合える事はない。」



「何があった?」



「シュンは僕を否定した…僕は親友だと思ってたのに…僕を守ろうともしてくれなかった…結果…自分自身の理屈に当てはめ、決別した…それだけさ…。」



「人それぞれ…正しさがあるのは当たり前だ…未来の自分と過去の自分ですら理屈がまるで違うんだから。」



「そう。だからだよ…だから僕がこの世界のルールになったんだ!」




「…。」



「どうした?僕が正しすぎて言葉も返せなくなったか?」



「…違う。」



「じゃぁなんだ?」



「未来の自分が伝えたい事が今わかった…。」



「言ってみろ。」



「言っても聞かないだろ…」




その時だった。

空中に浮き出ていたモニターが突然消えた。



「な!?なんだと!?」



その瞬間。




「シュン!!今だぁ!!」




突然セントラルのアナウンスから激声が飛んだ。




御前おれなら必ず助けるって信じて待ってたよっ!!」




俺はケンヤの隙を突き、また凄まじいスピードで詰め寄り、殴りかかった。




「くそ!!」




ケンヤは防御態勢を取り、顔の目の前で腕をクロスさせ守った。

しかし。




「狙いは脚!!」




俺の殴りかかりはフェイントだ。

俺はケンヤの脚を蹴り払い、防御を崩し、ケンヤの顔面に力一杯拳を打ち付けた。

ケンヤは吹き飛んだが、受け身を取り、反撃に出る。

そこから凄まじい攻防が繰り広げられた。

しかし、体は子供でも、中身は大人のケンヤだ。

俺は翻弄されつつもなんとかついていってる状態だった。





「く…。」





今の俺に出来る事。

いや。

今のケンヤには出来なくて、今の俺だからこそ出来る事。

大人の俺じゃ出来なくて過去の俺だから出来る事。



それは…「自由な発想」



誰しもが自分に何かしらの才能があると思っている。

自分はこんなものではないと。

自分自身に可能性を感じている。

14歳が自分に感じる未来の幅広い未来の可能性。

今、この世界で自分に1番可能性を感じているのは…






「俺だぁ!!!!!!!」





俺の思いに朱い石が発光。

ケンヤを上回るスピードで攻防を押し返し始めた。





「力が跳ね上がっただと!?」





俺は防御するケンヤに構わず連撃を浴びせる。





「うぉおおおおおおお!!!!!」




「くっ…押し負ける…!?」




2人の激闘にセントラルの屋根は半壊し、雨が降り始める。




「飛べ!!」




ケンヤは空に跳躍して逃げ、石に力を溜める。

朱い光が閃光の様に辺りを染め、雷の様な轟音が響き渡っていた。




「…何か…くる…」




想像力で言えば確かに子供の発想は凄まじい。

しかし、大人でしか知り得ない核やミサイルなどの脅威は子供には想像する事ができない。






「これで僕が正しいと証明してやる!!!!」





そして、放たれた。

凄まじい大きさの朱い光の玉が飛んでくる。


俺の想像力で…超えられる力とはなんだ。

打ち勝てる思いとはなんだ…。


この戦にいったいなんの意味があると言うのだ。

ただお互いの理屈、正しさを押しつけているだけ。

しかし、それはこの世界でも俺の世界でも一緒だ。

何も変わらない。

何も変わらないからケンヤが変えた。

しかし、それを俺は否定した。

いや、ケンヤを守る為に俺はケンヤを否定したんだ。

全てを…全てを変える力。

この朱い石が想像を力に変える物なら、この朱い石自体が全てを変えられる筈だ。

俺は「奇跡」を信じる。

「奇跡」を力に変える。







「届けぇ!!!!!!!」





俺は咄嗟とっさに石を力一杯に投げた。

投げた石は凄まじいスピードで飛んで行く。

迫り来るケンヤの朱い光の衝撃波と俺の投げた石が衝突したその時。

朱い石がケンヤの衝撃波を全て吸収していく。





「な!?なんだと!?」





朱い石は全てを吸収しながらスピードを落とさず、ケンヤに向け飛んで行く。





「くそ!!くるな!くるなぁぁぉぁああああ!!僕を否定するなぁ!!!!!!!」





その瞬間。

ケンヤの持つ朱い石に俺の投げた朱い石が貫き、石は粉々にれ、爆発した。

余りの爆発に、空を濁していた雨雲は拡散し、光芒が差し込み、空に色取り取りの虹がかかった。

そして、気づけばボロボロのケンヤが目の前に倒れていた。





「僕が…負けた…?…僕が?…シュンに?…くそ…僕が正しかったはずなのに…。」





俺は虹を見て終わりを実感した。

それと同時にやっぱり未来の俺はこれをケンヤに伝えたかったんだと思った。




「今ならわかる……許されない事ももちろんあるし、正さなきゃいけない事も沢山ある…でも…矛盾だってあっていいと思う…矛盾に適応し、受け入れる事が大事なんだと思う…矛盾があるからこそ…奇跡があるんだ…今、まさに太陽と雨が創り出す矛盾で虹と言う奇跡が起きてるんだから。」



「…絵空事…だろ…。」



「だから夢があるんだろ。」



「…。」




「…なぁ?……ケン……え?……な、なんだよこれ?」





気づいた時にはケンヤは何処にも居なく、俺だけが真っ白の空間にいた。

世界そこは無音だった。

自分自身がそこに存在しているのか、わからなくなるぐらい真っ白の世界。

しかし、何かが目の前にいる。

何か、凄まじい存在を放つ何かが目の前には確かに居る。

でも、それを目では確認する事ができない。

その時、その何かが問いかけて来た。





「奇跡を手に入れた者よ…お前は何を願う。」





その時、感覚的に理解した。

これは神なのだと。





「…あんたは神か?」



「お主が思う神まででは無い…しかし、創造主と言えるだろう。」



「じゃぁ…何故こんな世界を作った。」



「我は所詮干渉にすぎぬ…人間が自ら望み、手に入れ、作られた世界だ。」



「じゃぁ…あの朱い石は?」



「個が作り出す世界の行く末の産物だ。」



「どう言うことだ?」



「我々には感情が存在しない…神、天使、堕天使、悪魔その全ては一つの感情おんけいからつかさどる…だからこそ全ての感情を受ける事が可能な「感情を司る人間」が作られた…我は遥か昔にその人間に一度だけ転生した事がある…しかし、御業みわざを恐れられ、うとまれ、友人に裏切られ、そして殺された…人間とは何と面白い生き物なのか…神をも殺す事が出来るのが人間だと悟った…その人間の個が作り出す世界が知りたかったのだ…その為の朱い石よ…。」




「結果は満足したのかよ?」



「あぁ…非常に面白いものを見せてもらった…まさか奇跡を司る者と出会えるなど貴重な事だ……お主に変革の機会を与える…お前はいったい何を願う。」



「…全てを…全てを元に戻してくれ。」



「それで良いのか?」



「あぁ…個の世界は責任が重すぎる…それに…ただ悲しいだけだ…。」



「そうか…。」



「俺はこの世界で…矛盾が大事なんだと思った…矛盾があるからこそ…争いもあるけど…だからこそ…みんなが必要なんだ…全てで考え、行動し、そして辿り着く奇跡……俺が居た今までの世界も既に奇跡の上に成り立ってたんだなって分かった。」



「奇跡なる者よ…真理それに気づきよるか…なんと面白い奴か…しかし…全ては元通りに出来ぬ。」



「は?どうしてだよ?」



「動き、そして、重ねて来た歯車は変えられる物と変えられないものが存在する…ゆえに…お主の親友のケンヤだけは元には戻らん…そして、この世界も消え、記憶は全てなかった事になるだろう。」



「………じゃぁ…新しく入れ直す事は可能なんだな?」



「ほう?…面白い…其方そなたの願い聞き受けたぞ。」








✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

















「クソ!!こんな時に限って残業かよ!!急げ!俺!!」



俺は今までに無いぐらい必死で走った。

そして、到着しその目の前の扉を勢いよく開けた。




「間に合ったっ!?」



「シュン!おせぇよ!!こんな時に何やってんだよ!!」



俺を叱ったのはタケシだった。




「ごめん!!で!?マキは!?」




「多分ギリギリセーフじゃないかな?」



続けてタロウが状況を教えてくれる。

その時だった。





「オギャァ!!」





隣の部屋で産声うぶごえいた。

看護師の人が現れ、俺に言う。





「旦那様!生まれました!こちらへどうぞ!」




俺は大きく唾を飲み込み、案内された部屋へと入った。

そこにはクタクタのマキがタオルに包まれた赤ん坊を抱えて俺を待っていた。





「シュン…男の子だよ…あなた…パパになったよ…?」



「遅くなってごめんね…頑張ったな…マキ…。」



「ほら見て…凄く可愛い。」



「あぁ…俺に似てるな。」



「そう?私にそっくりだと思うけど…」



「うん…そうだな。」



「名前は決まった?」



「あぁ…この子を見た瞬間…これしかないと思った…」














「…名前は…ケンヤだ。」









読んで頂きありがとうございました。



今回は夢で見た話を自分なりに変えて書かせてもらいました。



自分の夢はもっとパロディだったのですが、伝えたい内容などからシリアスな感じになってしまいました。


この小説が嫌いじゃないって思った方は他の小説も書いてますので是非遊びに来てください。



よろしくお願いします。

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