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余命1ヶ月の恋物語  作者: 渡辺 呼
7/10

8/31 ⑦


毎日学校に行く、というのは教育制度の充実したこの国では至極当たり前な考えとなっている。特に初等、中等のいわゆる義務教育と呼ばれる教育課程では、ある程度一般的な学生は毎日欠かすことなく学校へ通っていることだろう。


僕はその『一般的』から逸れてしまった人間なわけだが。


「…明日から毎日学校に通うことが、1つ目の条件なのか…?」


つい先程聞かされたことを聞き返す。愚かしいことだが、それでも


「そんなことでいいのか?」


つい、確認してしまう。

人の寿命を賭けているというのに、クリア条件が些か簡単に思えたからだ。

もちろん『一般的にいえば』だが。


「その『そんなこと』すらまともにできていない人が、一体何を言っているんですかぁ?」


『こいつ』特有のクスクスというイヤな笑い方ではなく、フフフと、人を馬鹿にしたような笑いが聞こえた。

確かに『こいつ』の言う通りだ。僕は至極当然で、凡そ誰もが当たり前にこなせるであろうことが出来ていない。


「わかった。それが1つ目の条件なんだな。それで、残りの2つの条件は?」


「それはまた後日、あなたが1つ目の条件をクリアできるだろうとこちらが判断してから、また教えます。というか、あれあれ〜?意外とやる気満々だったりしますか??いつ死んでもいいんですよね〜??」


腹立たしい。が、現実離れした『こいつ』の言うことに、僕の好奇心がくすぐられただけだ。


「あぁ。僕はいつ死んだって構わない。条件を聞いたのは単に『君』の話に興味があったからだ。その条件をわざわざ僕が遂行してやる義務はないんだろ?」


「えぇ、もちろんです。ただし条件が条件ですので、明日、早速 双海ふたみさんに登校する意思なし、と判断されますとその時点であなたは賭けに負け、死んでしまいますのでご注意を。」


「随分物騒なことを言うな。あぁ、それで構わない。」


「断言します。あなたは明日、絶対に学校へ行くこととなるでしょう。絶対に、です。」


『こいつ』の言葉の意味を咀嚼している間に、


「では今晩はこの辺で。クスクス…、楽しい学園生活を送ってくださいね。」


そう言ってすぐさま電話が切れる。ツー、ツーと無機質な音が流れてくる。


考えようによっては悪くない。『あいつ』の話を信じるなら、僕は明日、わざわざ面倒な手順を踏むことなく勝手に殺されるのだ。もしそれが嘘であってもなんの支障もない。また昨日までの日々が流れ出すだけなのだから。


家に帰り、シャワーを浴びるとすっかり眠くなってきた。そんな頃にはもう既に、『奴』との賭けのことなんて頭に残っていなかった。




睡魔が襲い、翌朝になった頃。

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