運命
一ヶ月の月日が流れたーー。
俺はこの街での生活にもだいぶ慣れ、彼女を養うためにバイトも始めた。
その彼女とも「守君」、「恵美」と呼び合う仲にまでになった。
夏のかなり暑い日のこと……
「ねえ、守君!」
TVを見ている俺の前来て、いきなり座り込んで話しかけてきた。
「なに?」
(早くTVが見たい)
内心そう思っていたが……。
「デートしない?」
「……はぁ!?」
いきなりのことだったのでびっくりして夏の暑さも一気に吹っ飛んだと同時に
頭の中にあったイライラも一緒に吹っ飛んでいった。
口が塞がらないというのはこういうことだろうか……。
バカじゃないのと思ったがあえてツッコまなかった。
彼女の笑顔が冗談ではないことを証明していたから
だから俺は「うん」と、答えて彼女と一緒にデートに出かけた。
「この街のことまだあんまり知らないでしょ」
と、恵美は馬鹿にした口調で俺に言ってきた。
「ちょっとは知ってるよ!」
「ちょっとでしょ?私はもっと知ってるよ!
なんてったって私はここに2年も住んでるんだからね!」
「はいはい、で?どこ行くの?」
恵美の自慢話にはうんざりしたがいつも笑顔で話しかけてくる恵美は
かわいくて、すごく心が和む。
「えっとねー、じゃああの公園は?」
そう言って彼女が目の前にある公園を指差した。
俺は「いいよ」とうなずいて公園には入った。
公園には遊具は無く、あるのはいくつかのベンチだけだった。
俺たちはそこに座り一時間近くわけのわからない無駄話をしていた。
でも、それが暑さを忘れるほどにたまらなく面白かった。
「ねえ、守君ってなんか隠してる?」
俺は突然のことに驚いたが顔に出さないように微笑しながら彼女に聞いた。
「なんで?」
「だって守君、その腕時計ずっと持ってるじゃん。
もうお金もあるんだし、修理出した方が早いよ。なんで修理に出さないの?」
「それは……」
言葉に困る、この腕時計はタイムマシンだなんて言えない。
かといって変な言い訳つけても……あ、そうだ。
「ほら、なんで黙っちゃうの?やっぱりなんか隠してるんだ」
言い訳を言う前に恵美に喋られた。
「貸して!!」
そう言って、恵美は俺の持っていた腕時計を取り上げて近くにある用水路に投げ捨てた。
「あ!!なんてことすんだよ!」
「あんなもの後でまた新しいの買えばいいでしょ!!」
「ふざけるな!!もういい加減にしろ!!」
そう俺が言うと恵美は泣き目になりながら走ってどこかへ行ってしまった。
せっかくあんなに楽しかったのに。台無しだ。
「取りあえず腕時計は回収しないと……」
と、腕時計を用水路から取り上げたとき、奇妙な空間には入った。
タイムスリップできてる!!
やっと帰れる、恵美は……もうケンカしたから大丈夫。そのうち忘れてくれるだろう。
そう、安心しきっている矢先突然タイムスリップは終わった。
「あれ?ここは……」
そこは俺の見慣れている街並み。
雨が降ってきた、そして目の前には交差点を渡っている人。
恵美だ。
「恵美!!あの時はごめ………」
そう恵美に向かって叫んでいる途中、2台の車が恵美を挟んで激突した。