壊れた腕時計
目を覚ますと、俺は見知らぬベッドで寝ていた。
見た感じ綺麗な部屋だ……女の子の部屋?
「起きた?」
見知らぬ女性が俺に近づきながらそう言った。
……綺麗な人だな。
「あの……ここは?」
(て言うか誰?)
そう俺は心の中で呟きながら彼女に言った。
「あ!私は佐々木 恵美、家の前で倒れているのを見つけたから……
ちょっと運ぶのは大変だったけどね。」
彼女はにっこり笑いながら自慢気にそう言った。
「そっか、ありがとう。でももう大丈夫だから」
苦笑しながらその場を去ろうとした時、ふと、腕にあったものが無くなっている
事に気がついた。
「あれ、腕時計がない」
その腕時計は特別なものでこれが無いと俺は "帰れない" 。
「時計なら……」
と、言いながら彼女が取り出したのは誰がどう見てもぶっ壊れてる腕時計。
俺はやっちまったと思いながら再び彼女のベッド座り込み
壊れた腕時計を見るなり精神的なダメージを受けていく……。
この腕時計はタイムトラベルをするために必要なものであった。
そう、つまり俺は "未来人"である。
俺が住んでいる未来には腕時計型のタイムマシンが普及していて
20歳の成人式を迎えたと同時にそれが配布される。
前に友達のが壊れたと聞いた時は発見も早く
1,2時間で助けに来てもらえたそうだが……
(そう言えばここ何年だ?)
「あの、今って何年でしたっけ?」
「20○○年だけど……もしかして記憶喪失?
名前とかわかる?」
彼女は心配したようにささやきかけてきた。
(千年前かよ)
そう思いながらも俺は「うん」とうなずいて答えた。
「そう言えばあなた、名前は?」
彼女は思いあまった感じで、俺に尋ねた。
「……及川 守」
長い沈黙の後に俺はそう答えた。
「あの、もう1つ聞きたいことがあります」
彼女には申し訳ないがもうしばらくお世話になるしかない。
「この腕時計を直す間、ここに泊めてもらえませんか?」
正確には助けに来てもらう間なんだが……
「まあ、いいけど。あなた楽しそうだしね!」
と、彼女は笑顔で答えた。
いいのかよ……てかそんなツッコミ入れる前に感謝しないと。
「ありがとうございます」
深深くおじぎした俺に対し彼女は「いいえいいえ」
とまた笑顔で答えてくれた。
女性との生活をするのは嬉しいが、いつ帰れるのかわからない。
これからどうなるんだろう……
そんな気持ちを胸に抱きながら
俺は彼女との生活をすることになった。