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彗星の涙  作者: とある堕天の風来坊
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プロローグ〜発端と終焉のランゲージ〜

『惑星フラジャイルの衝突まで、おおよそ1週間を切りました地球上空の映像です。軍事衛星シンフォルニアから送られてきた映像によりますと、惑星フラジャイルは軌道を変えずに、一直線に日本上空に近づいており、各国で惑星フラジャイルの迎撃作戦を発案している他、核保有国同士の会議が緊張している状態です』


『7月16日の核問題による会見で、毛利総理大臣の発言が世間を騒がせています』


「我が国は、非核保有国であるが、この惑星迎撃に対し、アメリカとの決議を行った後、アメリカの保護と米軍の協力を得て、核を発射する方針を固めている最中であります。何としても、この日本を守ります。その為には、その決議を最重要視するべき問題として捉えており、全国民と全世界を救う為の『任務』でもあります」


『なお、毛利総理大臣の意見に批判の声が殺到しており、国会議事堂前にデモが詰め寄っております』


『国会議事堂前のデモ運動の様子です!!! 惑星フラジャイルによる問題を抱えた看板を掲げながら、叫び声をあげている学生がほとんどです!!! まるで、1968年に行われた、全闘運動を思い返すかのようです!!!』


『これは一種の「戦争」です。学生運動も、国会で決まる核問題も、国民が、政治家が、全ての世界の望む結果に至らなければ、惑星フラジャイルを火種にする、第三次世界大戦の勃発があるでしょう。ですが、それを阻止するものが一つあります。それは、惑星の墜落を、ただ1週間耐え抜くのみです。その時は、ただシンプルに神頼みをするしかないでしょう』



惑星フラジャイル。一切の出現を予期せぬまま、地球上空に迫った超巨大惑星の総称。大きさはアメリカ大陸とほぼ同じ大きさであり、時速800キロで地球へと向かって行っている。軌道を変えることは愚か、この惑星に対抗出来る術は無く、唯一の手段は「核」を使用する事のみ。

そんな惑星の接近に対し、人類は動揺と不安を心の中に留めていた。

3億の人類の中のたった一人、福島ふくしま 千智ちさとは、雲の中に浮かび上がる惑星フラジャイルを部屋のベランダから見つめていた。口にタバコを咥え、禍々しい煙をゆっくりと口から吐き出しながら、国会議事堂へ向かう学生達の群れを眺めていた。


「くだらねぇな。そうしたって変わる訳ねぇっつの」


伸びたタバコの灰を、あえて学生達の上に降らせるように落とす。

と、灰は風に乗りバラバラと空気に散らばっていった。まるで旬の過ぎた桜が猛風に煽られてハラハラと散るように、散らばった灰は学生達の上を飛んでいった。


「核を使うだの何だのって、どうせ打ち込む事に変わりがないんだから、さっさと打ち込んだ方がいいっての。めんどくさい」


自分の部屋に戻る福島。散らかった部屋の中でテレビをつけると、いきなり映ったのは国会議事堂前の学生運動の様子だった。さっき見た学生達も、いずれはこの群れの中に混じりながら、変わりもしない真実を捻じ曲げようとする運動に参加するのであろう。と、内心嫌気がさしていた。

もし、この群れの中にピンポイントで惑星が落下したり、そこに紛れたテロリストが手榴弾なりを使って爆発させたりでもしたら、それだけでも戦争の火種を作る事も容易でもない。

福島は立ち上がり、ビールを取りに行こうとする。


「無駄無駄。戦争が起こっても送られるのは私達だし、特に気にする必要は無いしな」


ビールを片手に、テレビのある部屋に戻ろうとした時、


ガガゴン!! と郵便受けに何かが挿入される音を聞いた。


「あぁ、この前頼んでたもんが届いたんかな?」


部屋の電気を付けると、それは福島の望むような品物ではなかった。

それは、一通の手紙だった。しっかりと刻印が押されており、自分の名前が筆で書かれたような達筆書きで記されていた。

手にとって封筒を見ていた時、テレビの中継が騒がしくなるのを聞いた。

福島はその様子が気になりテレビの方へ向かうと、国会議事堂内の映像が流れており、


『今入った情報によりますと、内閣が決めた問題の中に「赤紙」の復刻を行う。と報告が入り、今、全国の対象者に向けて赤紙が配達されていると言います。その赤紙が届いた者は、惑星フラジャイル迎撃作戦に参加をし、その身元は国の為に貢献するものとして捉え、死をありがたいものと思うようにする と定められました』


手元にある一通の封筒。福島は、封筒を持つ手が震え始める。

もう一度、テレビを見る。テロップには、「内閣、赤紙の采配を決定」と書かれているのを見やった。

「う、うぁああっ!?!? こんなのごめんだぁああああ!!!!」

隣の部屋から聞こえる絶叫。恐らく、隣の部屋の住民も、今見ているニュースを見た後に封筒の存在を知り、中身を確認して気が気じゃなくなったのだろうか。と冷静に分析する。しかし、そう考えるのも束の間だった。

今、自分の手に握っているものは、明らかな封筒ではない。確証づけるものは、送り先が「内閣府」からだった事だ。

「・・・っ!」

唾を飲み込む。

恐る恐る刻印を剥がし、中に入っている一通の手紙を取り出す。

綺麗に、しわも、汚れも、一切ない不気味な紙を、両手でゆっくりと開く。


「拝啓、福島 千智様。あなたは、内閣府の申し付けにより、本日から迎撃作戦に参加する事を決定します。なお、命の保証と人類の未来を決める重要な一手として、国に貢献するように。この封筒開封後、一時間以内に内閣から送迎が来る為、準備をして心して待つように。内閣府 防衛大臣 及び 惑星迎撃班 第一班長 工藤 正親・・・」


時が止まったかのように思えた。その場で足がすくんで動けなかったのは確かだ。テレビの左上に表示された時間が1分、2分と時を刻む間が、自分の精神を削っていく感覚に変わっていった事が、紛れも無い戦争の訪れを告げているように思えた。


「こんなの、、、非常過ぎる・・・・。そ、そうだ。あの隣が逃げたみたいに、今なら逃げられ、、、!!」


「福島、千智様、ですね?」


野太い声が、4畳半の部屋内に響いた。まるで威圧しているかのような程、凶暴かつ冷静な声は、玄関の方から聞こえてきた。

「内閣からの送迎に上がりました。早くお車の方へ」


これが、福島 千智の、運命の歯車の動き出した「火種」だった。


「一緒に来てもらいましょう。人類を、地球を救う為に」

                                 To be continued...

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