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アポカリプスの庭で-22




「ここは退くべきっ!」


 一目散に逃げ出す。

 僕に一番近い位置の足長クリーチャーは銃こそ持っていないが、長くて太い木の棒を手に持っていた。あんなので叩かれたら、僕なんて片手でも即死だろう。

 トンネルのような入口の向こう、夏の陽射しの下に戻ると、僕は冷静になったのかようやく本来の目的を思い出す。

 走りながらマガジンを交換したアサルトライフルを背負い、PDWを抜いた。


「次はこれを試さなきゃ。構えは、たしかこうだったよね」


 片手で撃てるほどの大きさでも、アサルトライフルのようにしっかり両手で構える。

 ティファニーがPDWを2つも僕に持たせたのは、緊急時には両手でワンマガジンをぶっ放せという意味もあると思う。でもそれ以外の余裕がある時は、アサルトライフルほどの銃を3丁も持っていれば弾切れの心配や、銃が破損した時のリスクが減るからだろう。

 そしてこんなに多くの武器と弾薬を携行しても役に立てると判断してくれたのが、何よりも嬉しい。


「そうだ。トリガーを引きっぱなしじゃ、まるで新兵じゃないか。特殊部隊は、こう撃ってた・・・」


 足長クリーチャーは動きが遅い。

 入り口に向かって歩く先頭に銃口を向け、一瞬だけトリガーを引いた。


 タタッ!


「違う。これじゃ2発だ。もっかい!」


 それでも2発の銃弾を顔面に受けた足長クリーチャーは、吹っ飛んで起き上がっては来ない。

 やはり小さなPDWでも、威力は充分だ。


 タタタッ!


「よしっ、この調子!」


 撃っては走り、撃っては退がる。

 マガジンを交換して左のPDWと交換し、それのマガジンを撃ち切ってようやく足長クリーチャーは残り3匹になった。

 移動し過ぎて、もうエレメンタリースクールが遠くなっている。


「最後はこれ。マグナム、だっけ。ムービーじゃこんなの撃ってる人はいなかったなあ。・・・ああ、アサルトライフルがあるのにハンドガンは使わないか」


 ベレッタと同じ構え。

 そういえば、僕はベレッタの射撃訓練をした記憶がない。

 なぜだろう。

 思いながら、トリガーを引いた。


 ドオンッ!


「っ!」


 音と反動がハンパじゃない。

 筋なんかは痛めていないようだけど、銃声がバスにいるティファニーまで届いたんじゃないだろうか。


「ハンドガンで上半身に穴が空くって、何の冗談? この威力なら、パルスガンを持つより良いんじゃないのかな」


 しっかりと反動に備えて、もう1射。


「よし、次は片手で。・・・怖いけどバイクの運転中とか、PDWの弾が切れたりした時にベレッタと一緒に使うならやるしかないよね」


 ドォンッ!


 わざと左手で撃ってみたが、思っていたほどの衝撃ではなかった。


「・・・うん、これならバイクで走りながら撃てる」

(やってるっすねえ、マスター。どうっすか、新装備は?)

(全部試したけど、どれも大満足。ありがとうね、ティファニー)

(いえいえっす。試射が終わったなら、もう戻った方がいいかもっすよ。アキ達が、無線にマスターが参加しないのを怪しんでるっす)

(・・・うあ。それはヤバイね。エレメンタリースクールの中を漁ってないけど、戻ろっかな)

(それがいいっす。マスターは1人でベッドルームで手仕事中って言ったら、カレンたんが今すぐ引き返すって騒いでたっすから)

(なに言ってくれちゃってんのさ・・・)


 来た道をそのまま引き返してもつまらないので、エレメンタリースクールの前の道を直進。大聖堂を発見する前にバイクで通った、大きな通りまで歩いてみる事にする。


「ガソリンスタンドの交差点を真っ直ぐで、あの道に出るはずだよね。・・・へえ。大聖堂ほどじゃないけど、変わった形の建物が2つもある。知識があれば、見るだけで楽しいんだろうなあ」


 思った通り、その道を行くと大きな通りにぶつかった。

 交差点の向こうには、建物の中に並んだクルマが見える。


「あれがクルマ屋さんかあ。ホントにお店で売ってたんだ、クルマって。こっちは、湯気の出てるカップの看板? ならここは、コーヒーとかを飲ませるお店かなあ。・・・おお、中はキレイ。忘れられた時代のキレイなカップとか、アキが喜びそう。でも、早く帰んなくっちゃ」


 また道路の上の道路を渡る。

 そしてその手前にあるビルの1階にも、コーヒーのお店があった。忘れられた時代の人は本当に、コーヒーが大好きだったらしい。

 バイクで通った時には気づかなかった道路の上の道路を渡り切ると、バスとその屋根で手を振るティファニーが見えた。


「おかえりなさいっす、マスター」

「ただいまー。準備してから屋根に行くねえ」

「はいっす~。あ、弾薬箱は荷台っすから、補充してくださいっす~」

「はーい」


 それならばとまずは荷台に行き、冷蔵庫を倒したような弾薬箱から、撃ち切ったマガジンにそれぞれの弾を詰める。

 バイクを見ると運転がしたくなるけど、今日は休んでいる約束なのでなんとかガマンした。

 ベッドルームで汗を拭き、下着だけ着替えて屋根に上がる。


「ただいま、ティファニー」

「おかえりなさいっす。テーブルにゴハン置いといたっすよ~」

「おおっ、ハンバーガー。ちょうど食べたかったんだよねえ」

「だと思ったっす」


 いただきますをして、ハンバーガーにかぶりつく。

 僕が荷台にいる間に、温め直してくれたのだろう。キッチンには電子レンジという便利な調理器具があって、アキがそれを見てとても喜んでいた。

 ラップの確保が最優先って言ってたけど、地下鉄で見つけられてるといいな。


「忘れずにチャンネルを戻すっすよ、マスター」

「ほうらっら・・・」

「アキがいたら『物を口に入れたまま話さないっ!』って怒声が飛んでたっすね」

「だねえ」

(ああもう、またヘビのクリーチャーよ!)

(撃ちまくれっ、カレン!)

(残弾が心許ない。アキ)

(・・・そうね。これを始末したら帰りましょうか)

(大変そう。弾を持って援護に行こうか、アキ?)

(ジョン、起きたのね)

(やっと終わったか、ジョン)

(おかずは誰の下着? そう、カレンお姉ちゃんの・・・)


 おかずがなにを意味するのかは知らないが、カレンの口調からしてロクな事ではないと思う。


(・・・んー。どうも地下にいるクリーチャーは、野放しみたいなのよね。たぶんだけど、アンドロイドやロボットは食べられないからじゃないかしら。シカゴまで地下鉄のレールの上を進む事も出来るけど、この感じじゃ戦闘音がかなり出るわ)

(なら、地上を進むしかないか・・・)

(そうね)

(それなんっすけどアキ、大荷物を持ってシカゴをうろつくのはさすがにキツイっすよ)

(ええっ!? そんな事を言われたって、武装して人前に出られる訳ないじゃない。それに車両で走ってたら、すぐに外部からの侵入者ってバレるんでしょ?)

(そうっすよ。だから、方法は2つ。隠し持てる武器だけでオクトを殺るか、車両で急襲してオクトを殺るかっす。地下鉄でせめてシカゴの中だけでも移動可能なら、夜間に駅から出て奇襲って手もあったんっすけどねえ)


 目的の達成が困難になったか。

 僕なら戦闘車両を修理してシカゴに突入するが、アキ達はその時間すら惜しいだろう。いつオクトが西海岸への攻撃を始めるかなんて、僕達にはわからないのだ。


(・・・すぐに答えは出せないわ)

(当然っす。ちなみに武器やインカムなんかの装備、それと戦闘車両を修理するなら、その弾を集めるまで含めて約10日くらいかかるっす)

(ヘビの排除完了。戻ってゆっくり考えようぜ、アキ)

(それがいい)

(・・・そうね。じゃあ、戻りましょう)

「ティファニー、戦闘車両を使うならどれになると思う?」

「戦車は足が遅いから論外、こっちは少人数なので兵員輸送車ほどのスペースはいらない。選ぶのは戦闘装甲車っすね、たぶん。アキもジャニスも」

「それの戦闘が入ってるムービー、ある?」

「もちろんっす。装甲車での市街戦、それと小隊で敵施設へ急襲するムービーを転送するっすね」

「お願い」


 タバコを吸いながらムービーを見る。

 軍事用デバイスの画面ではタイヤが8つもある装甲車が猛スピードで街を駆け抜けながら、大男が屋根の大きな銃で敵を撃ち殺していた。


「ジャニスの使ってる銃みたいだ」

「あれは軽機関銃、それは機関銃っすから」

「親戚みたいな感じかあ」

「まあ、親みたいなもんっすね」


 次はクルマより少し大きな4輪車。


「普通のクルマみたいのもあるんだね」

「2本目のムービーなら、警察の装甲車っすね。速度を取るか、武装の充実を取るか。ジャニスは前者で、アキは後者っぽいっす。マスターならどっちっすか?」

「当然、速度!」

「・・・だと思ったっす」

「だって装甲車が発見されてオクトに連絡される前に襲わないと、奇襲にならないじゃん」

「そうっすねえ。電話は使えないんで一般人になら発見されてもいいっすけど、治安部隊は無線機を持ってるっすから。突入は夜明け前くらいにするにしても、速度は欲しいっすねえ」


 ムービーを見ながら、装甲車を使う場合に僕がするべき事を考える。

 運転がジャニスなら僕が機関銃で、ジャニスが機関銃なら僕が運転だろうか。

 そしてオクトのいる建物に突入するなら、装甲車を守る役割はどうするべきか。どうしたって、逃げる足は必要だ。

 そうだ。アキが姿を消し、僕が建物に突入して大暴れする間にオクトを探すのはどうだろう。いや、それだとアキが危険すぎるか。


「んーっ、むむむ・・・」

「悩んでるっすねえ」

「まあ、僕が悩んでも意味ないんだけどねえ。考えておくのは、ムダにならないと思うんだよ」

「その通りっすねえ」


 それから1時間ほどで、難しい表情のアキをしたアキを先頭に3人は戻って来た。

 汗を流してから上がってくるそうなので、クルマの運転と機関銃の撃ち方のわかるムービーを見ながら屋根で待つ。


「うーっす、ただいま」

「おかえり、ジャニス。ってもうビール?」

「そうだよ。ほら、ジョンも飲みな」

「もう、仕方ないなあ」

「珍しく素直だな?」

「実はちょっと飲みたかったんだ。昨日も」

「・・・そうか。カンパイだ」

「うん」


 軍事用デバイスのムービーをジャニスと見て、運転や機関銃の操作を質問する。

 そうしているとカレンが屋根に来て、ただいまと言いながら僕の膝の上に座った。


「おいこらカレン、ジャマだっての。今アタシはジョンに、運転と機関銃の撃ち方を教えてんだぞ?」

「こんなにひっつかないで教えればいい。偶然をよそおってムダに大きいおっぱいを当てるなんて卑怯」

「ジョンの軍事用デバイスを見ながらなんだから仕方ねえだろ!」



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