表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/65

人生の幕

第1話です。

宜しくお願いします。

人生の幕


 某県某市、市立○○中学。

 校風は自立性自主性を重んじる生徒主体の中学校。文化系スポーツ系どの部活も活発で、県主催のコンクールや県大会等でも上位にはいるほどで県内でも結構な有名校だった。

 だった…、だ。

 学校というのは独自の雰囲気がある。社会としても治外法権として扱われ、なかなか内部の様子というものが外側からは見えないのだ。

 だからこそ起きる問題。

 世間では騒ぎ過ぎる程に騒がれているイジメ問題。当然、この学校でも起きた。

 最近と言えば最近。2年前にマスメディアを騒がしたイジメ問題。学校側の放置の責任となった中学生Aの自殺事件のことだ。

 治外法権の学校といえども、ここは日本。法治国家だ。勿論、警察の立ち入りや教育機関の事情聴取、校長の交代や教師の不登校。結構な騒ぎになっていた。

 それが2年前の出来事…。今はある意味有名な学校。それも今は表面上は落ち着いた。


 でも、それは2年前の事件が落ち着いただけだ。2年が経ち、それで何が変わったのか…。結局のところ、何も変わってない。

 イジメをする生徒。歴史の授業の度に、名前負けだと馬鹿にされ続ける。俺だって好きでこの名前になったわけじゃないんだよ!!

 イジメを黙認する教師。相談しても、「お前なら大丈夫だ。」の一言。どう見ても、やつれているだろ。お前、ちゃんと目ついてるのか!?

 親に頼っても、お前の名前に込められたら意味を考えろと逆に怒鳴られる。その名前のせいでイジメられてんだよ!!

 俺の声は誰にも届かない。

 絶望だ…。救いはない。

 周囲に信頼できる人もなく、心砕かれたら…。そりゃ、生きる意味を見失ってもしょうがない。

 将来考えても、きっと、ずっと、こんな日々なんだろうな。


 と言うことで…。

 閉鎖された屋上で、今まさにフェンスの外側に立っている。

 恐怖というものはなかった。死に方を選ぶつもりもないので、前の事件と同じように飛び降り自殺にしてみた。

 …当てに出来ない親だった。もし生まれ変わるなら頼り甲斐のある親がいい。それに金持ちならもっといい。

 …情の薄い友人だった。もし生まれ変わるなら、気兼ねない友人が欲しい。出来るなら、名前にこだわらない友人が…。俺の気持ちを理解してくれる、そんな友人が欲しい。

 そして、学校…。もし生まれ変わるなら、学校のない時代に生まれたい。そもそも、俺は集団生活に馴染めないのかもしれない。


 何とも呆気ないもので飛び降りてみれば全部一瞬で終わった。

 一般的に言われる躊躇いもなく行ったからだろうか?

 痛みさえも一瞬で通り過ぎ、目の前が真っ暗になった。苦痛は嫌なので丁度良い。精神的肉体的に堪えられないから自殺したわけだから、そこは本当に助かった。


 これで全て終わる。全てが真っ暗になった。

 

 人生の終わりとはホントあっけないものだ。

 闇の中を漂う意思に光が差した。最初は薄ぼんやりとしていたが、徐々に鮮明になっていく。

 ああ、なるほど。これがあの世というものか。しかし、どうも土臭くって、草臭い。

 ここは、草むらのようだ。

 やはりあの世は違うな。緑豊かな大自然。だけど、想像してたのとちょっと違うな。

 あの世といったら、フツーは花畑だろ?

 それに周囲の風景が赤い。花畑なのに真っ赤な花んだっ、うわっ!?


「ちがっ!?血か、これ…。うおっ!? 何だ、何が起きた!? 俺の頭が血だらけだ!!」


 慌てふためく俺。血を見てパニくる。

 なんじゃこりゃ!?大量出血だ!!


「つぅーか!イテェー!!今頃になって痛くなってきた!!」


 すっげぇイテー!!死んだはずなのに、すっげえイテー!! 医者だ!医者を探せ!!病院はどこだ!!

 慌てるな、俺!!こんな時こそ冷静に。そう、避難訓練で習った“お・か・し”だ。押さない駆けない喋らない!?

 だから何だ!!意味分かんねーよ!!

 落ち着け落ち着け。


 ん、この音は…川か?


 落ち着いてみると、水の流れるザワザワとする音が聞こえる。

 行ってみるか?

 ………。ここでこうしていても仕方ない。

 よし、行ってみよう。

 音の聞こえる方向に進んでみると、やっぱり川が流れていた。

 俺ってこんなに耳良かったけか?いや、周囲が静かだからだろう。

 それにしても…。まさか、この川………。


「よく言う、三途の川か?」


 いやいや、そんなの信じるほど俺は信心深い人間だったけ?。

 死んだら終わり、それが人生だ。

 人の命は、人生とは違うのか?

 魂は生きている?

 とりあえず、今は水だ。傷口を洗い、止血。そしたら、冷やす…。

 良し、オーケーだ。清潔な布があれば良かったが、こんなもんで大丈夫だろ。きっと。

 傷口を冷やしたついでに頭の方も冷めてきたな。

 まず状況を確認しよう。

 どうやら俺は生きているようだ。

 …奇跡の生還?

 屋上から飛び降りたのに生きている。ずいぶんと丈夫な体だ。

 これぞまさしく肉体の神秘だ!!…と、今はボケをかましている場合じゃなかった。

 学校の屋上から飛び降りたのに、どこだここは?

 いやいや、ちゃんとわかってる。ここは森の中だ。早く城に帰らねば…。

 戦国乱世。織田家の為にも死ぬわけにはいかないのだ。


「いや、待てよ。俺んち城じゃねーし、戦国ってなんだよ。…俺は、織田家の嫡男、信長? あれ、俺は…中学生だぞ…?名前は同じだけども…戦国武将になったつもりはない…。そのせいで自殺したんだから───」


 うわ、何だよ。これ!!はあ?!何だよ、これ!!

 記憶がグチャグチャだ。夢でも見てるのか!?

 はあ!?何だよ、これ。夢じゃない!!

 ヤバい。ヤバいって。どういうことだよ、これ!!

 生まれ変わりってやつなのか!?

 前世の記憶…とか?いや、まんま俺じゃねーか!?

 今の記憶と過去の記憶がまんま存在してやがる!!どうなってんだよ!!どうすんだよ!!どうなるんだよ!!


「うおぉぉーーーっ!!」


 ───。


 色々と心の整理がついた時には既にとっぷりと日も暮れて夜になっていた。今頃、城の方は俺が居なくなって騒いでいるだろうが知ったことじゃない。

 今、重要なのは俺の身に何が起きたかだ。

 つまりはアレだ。記憶喪失だった状態から急に記憶が蘇ったような感じだろう。

 記憶喪失になんてなったことないけど…。恐らく、そんな感じだと思う。二重人格とかじゃないのは確かだ。俺が俺としてちゃんとあるのだ。

 だが、中学生織田信長は間違いなく死んだ。それは間違いない。死んだという記憶がある。

 そして、生まれ変わって14年間を戦国武将織田信長として生きていたようだ。

 俺が俺として、前世の記憶を思い出したのは崖を落ちたからだな。状況的にそうだ。しかも、打ち所が悪く気を失ったと…。

 崖を落ちたことによる記憶のフラッシュバックが原因なんだと思うが…、城を抜け出して遊んでいたとか。生まれ変わっても俺は何をやっているだ?

 我ながらバカだよな。


 それにしても…マジなんだな。

 ホントに生まれ変わりってあるんだな…。それも織田信長って…、なんの冗談だよ。


 中学生織田信長が生まれ変わったら、戦国武将織田信長…。自殺するくらい嫌いな奴に生まれ変わるなんてシャレにならない話だ。

 人生もう一度と、確かに願った。

 生まれ変わるなら金持ちで立派な親が欲しいとか願った。

 けど…。

 結構、本気だったけど…。

 戦国武将って身分高過ぎっしょっ!!織田信長は有り得ないしょっ!!

 ウケる~。超ウケる~。まあ、それが他人事だったならだけどなあ……。


「はぁ…。でも、織田信長か…。とりあえず、家に帰ろう…」


 このままだと、森の中で一晩過ごすことになる。寝るなら布団の上が良い。それに腹も減っているしな。

 ───しかし、戦国時代か…。現代っ子の俺が、この時代でどうやって生きて行くんだよ。

 現代の知識が役に立つとは到底思えないんだよな。

 道を降りながら、歴史の授業を思い出そうとする。歴史の年表を思い出したところで役に立つことないな。

 織田信長個人の歴史なんて特に俺にはイジメの原因。やっぱ、授業で習ったくらいしか知識がない。

 どうしょう。

 先行き不安でしようがなさすぎ…。自殺なんてするんじゃなかった。





 少し書き直しました。

 読んでくれている皆様、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ