差し入れはシュークリーム
料理部の私は直々幼馴染みの部活へ差し入れを持って行く。
「はい、差し入れ」
どさりと音を立てて置くのは、透明はタッパー三つに入った大量のシュークリーム。
バスケ部の全員が集まって来る。
その中に幼馴染みの姿はなく黙々とシュート練習をしていた。
私はタッパーから一つシュークリームを取り出し、彼に渡しに行く。
だが彼はそれを一瞥して自分でタッパーから、シュークリームを取り出して口をつけた。
私は舌打ちをこらえて手元に残ったシュークリームを見つめる。
「貰ってい?」
モグモグとシュークリームを咀嚼中の和馬が、私の手元に残ったシュークリームを指さす。
私は和馬の手にそのシュークリームを乗せてやる。
私から受け取ったシュークリームに齧り付きながら、和馬が首を傾げた。
「どうかした?」
その問いかけに私は首を振りなんでもない、と答える。
その様子を近くで見ていた聖がなぁなぁ、と私の肩を突いてきた。
「これ手作りだよな?」
ぺろり、と口の端についたカスタードクリームを舐めとる。
その様子を見ながら私が頷くと、相変わらずスゲーな、と笑う。
それを聞いて私は喜ぶでも笑うでもなく、肺に溜まった全ての空気を出し切る深い溜息を吐く。
和馬が佑介があまりにも遅いスピードで、シュークリームを食べているのを指摘している。
私の顔を覗き込んでいた聖の顔が青ざめていく。
それを見て佑介が肩をすくめた。
異変に気づいた和馬も顔を青くして私を見る。
「明……これ、手作りだよ、な?」
聖が顔を引きつらせながら私に念を押すように問いかける。
うん、なんて可愛らしく頷きながらも、私の口元には三日月のようになった笑み。
その笑顔を見てさらに青ざめる聖。
「まぁ、真面目に作ったのは一個だけだけど」
そう言いながら佑介の持つシュークリームを指さした。
もう一口分になったシュークリームを、口の中に入れた佑介はのんびり咀嚼する。
「残りはどうせ下剤入りだろ」
モグモグ、ゴックン、とシュークリームが彼の喉を通っていく。
そしてシュークリームを食べた皆さんはどこぞの悪役みたいに、覚えてろよー、とかそんなことを言いながらトイレへ駆け込みましたとさ。
私は体育館の床の上でケラケラ笑い転がる。
佑介はトイレに駆け込んだメンバーを哀れみながら、私の背中を軽く蹴った。
でも意外と生き残ってる人がいるな。
と言っても四、五人だけど。
食べてないの?と聞けば甘い物は苦手なんだそうな。
ちょっと安心した顔してるのが腹立たしいかな。
「これで今日の練習も終わりだねー。大事をとって明日も休みにしなよ」
ニヤニヤ笑いながら佑介に言えば、これが狙いだったのか、と溜息。
からになったタッパーを片付けながら「だって、ここ最近休み無しじゃーん。たまには休まなきゃ」と言ってやる。
それの心遣いはありがたいが、もっと別の手段で頼むと言われてしまう。
でも下剤入りって知ってて止めなかった佑介も同罪だと思うんだがね。
さて、今度は何作ろうかな。
私はまた新しいレシピを考えるのだった。
「次はロシアンなんてどうかな?」