中古奴隷
難なくトロルを倒した後のお話
トロル戦(笑)を終えて俺たちはドロップアイテムを回収し、洞窟から脱出した。
リリーはまだ助かったことを信じられないらしく、終始自分の体をまさぐっていた。いや、まさぐったところで自分の安否は分からんのでは…
さらにドロップアイテムを2人で回収している際にリリーはとんでもないことに気付いてしまった。
「た、助けて下さり、本当にありがとうございますっ!お、お礼はまだ、でっ、出来ないんですけど…。その…えっと…誰でしたっけ…?」
その通り。俺たちはまだ自己紹介すらしていないのだ。まあ、俺は相手のステータスを見ようと思えば見れるから必要ないんだがな。だが、一応しておいた方がいいだろう。自己紹介すらしてないのに何故名前を!?的な展開になったら面倒だしな。
「俺の名前は…あー、岡部光壱だ。特技はトロルを投げること。趣味は気絶した少女を眺めることだ。」
とりあえず趣味と特技を考え直してこの世界でも可能なことに置き換えてみた。ゲームとか言っても分からんだろうしな。
「すっ、素敵なご趣味をお持ちなんですねっ!」
どこがだ。お世辞のつもりなんだろうが、嫌味にしか聞こえん。まあ、俺が変態思考丸出しの趣味を言ったことが原因なんだろうが。てゆうか顔が引き攣るくらいなら言わなきゃいいのに。
「ありがとう。それでお前の名前は?」
とりあえず紹介を促してみた。すると
「わ、私っ、リリーって言いますっ!特技は…と、特技はその…ごにょごにょでして…。しゅっ、趣味もこれと言って、ないんですが…そのっ!!よ、良ければ私を買いませんかっ!?」
とんでもない勧誘が返ってきた。いや、何故そうなる。買うってなんだ。いや、この場合は飼う…?てことは餌もやらなければならないし、しつけも…げふんげふん。自重しよう。
「買う…?買うってどうゆうことだ?それって人身売買ってことだよな?えぇと、リリーでいいのか?」
ちょっと名前を呼ぶ時に恥ずかしかった。コミ障舐めんな!
「は、はい!実は私、中古奴隷でして…」
◇
そこからかなり説明が続いたのでバッサリと抜粋すると。
「ようするに、お前は主人がいない奴隷で、お金も持っていない。ゆえにテントの弁償代と洞窟でのお礼を働いて返す、ってことか?」
「はいっ!!」
満面の笑みで頷かれてしまった。気絶してないのに可愛いな、おい。
最初は彼女が本当にテントの弁償代を払うためにそう言っているのかと思い、テントだったらいくらでも冒険者カバンに入っているし、あの程度の魔物ならいくらでも倒せるから気にすることはない。その旨を彼女に伝えると…
「ふぇえええええん」
泣き出してしまった。何故だ。
根気よく話を聞いていると、お礼や弁償云々は基本的には建前で、本音としては「一度買い取られて捨てられた中古奴隷は買い手がつかないので、それはそれは酷い扱いを受ける羽目になるんだっ!だから是非、ご主人様になってくれないかなあ…?ウルウル」みたいな感じらしい。彼女がそう言った訳ではないからな。俺の脳内萌え辞書が勝手に変換しただけだ。
だが、まあ正直奴隷としては…そこまで必要性を感じない。元の世界に帰ったら、どうせまた、彼女は中古奴隷になるし、現状不便は特に感じていないしな。
だが、それを補って余りあるのが、彼女の召喚士のスキルだ。これは元の世界に戻る手掛かりになるのではないか?いや、絶対になるだろう!俺が今、そう決めた!
「……」
上目遣いでリリーがこちらをチラチラ見てくる。可愛い。
…まあ、彼女に聞きたいこともたくさんあるしな!スキルのこと含め、魔法とかも!説得の手間が省けたと考えればいいや!決して彼女が可愛いとかそんなのは関係ない。
「あー、リリー。わかった。俺がお前を買うよ。てゆうか買わせてください。」
しょうがないだろ!奴隷を買ったことなんてないんだから!なんて言えばいいのか、分からないんだよ!
「あっ、ありがとうございますっ!ふっ、ふつつか者ですが!よろしくお願いしますっ!」
飛び上がって喜んでくれた。ちなみにさっきの台詞飛び上がりながら言ってたぞ。かなりシュールだった。まあ、不安だっただろうから仕方ないがな。
「とりあえず、街を目指すぞ。街道を辿っていこう」
「はいっ!ご主人様っ!」
ーーこうして俺はちょっとドジで泣き虫な奴隷を手に入れた。
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