森の中の洞窟
どうしても上手い展開が思いつかなかったんです、はい。
さて、俺こと岡部光壱、当人はまたまた困っていた。今回は結構たいしたことがないとは言えないんです。
なんと…
テントがメラメラと燃えているではありませんか!
いやぁ、彼女凄いなあ。魔法使えたのかー。確かにステータス見た時に魔力が減っていたから魔法的なものを使った形跡があったんだが…。まさか、本当に魔法を使えるなんてなあ…。
…ふむ
「って、彼女テントの中じゃん!!めっちゃ燃え盛ってんだけど!?」
俺は急いで燃え盛るテントを自慢の攻撃力で蹴り飛ばした。いや、何やってんの俺!?彼女、入ってるって!
どうやら案外パニクってるようだ。そりゃそうだ。規模は小さいが火事だもんな。じゃなくて!!
「彼女は!?」
俺は急いでテントだったもの(壊れた)を確認したが、近くに彼女はいない。
「なっ!?…う、そだろ…?」
まさか…間に合わなかった?火で焦げて跡形も無く灰になったとか?いやいや、流石にいくらなんでも短時間で跡形も無く燃やし尽くすことは不可能だろう。ならば、俺の蹴りで消し飛んだ?いや、だいぶ力を抜いて蹴ったからそんなことはないはずだ。とするとなれば…
「抜け、だし…た?」
どうやって?という疑問が残る。燃える寸前までテントの中から彼女の声は聞こえていたので確実にそこに存在していたことは確かだ。
「消えた…。」
何故、彼女が一瞬にして消えてしまったのかまるで理解出来ない。そもそも生きているのかどうかも定かでは…
「キャアァァァァアアアアア!!!」
と、ここ数時間で聞き覚えのある叫び声が聞こえてきた。
「なっ、どこから!?」
本当に抜け出していたらしい。彼女らしき叫び声がそう遠くないところから聞こえてきた。
「っ!まずい!!」
そして俺は今更になって、先ほどまで俺たちを囲んでいた魔物の気配がなくなっていることに気付いた。
「嫌な予感がする…。」
俺は久しぶりにジットリとした嫌な汗をかきながら、彼女の声の方へ急いだ。
◇
暗くて寒くてジメジメしている。
俺は彼女の声を頼りに急いで走ってきたところ、洞窟に辿り着いた。断続的に彼女の悲鳴が聞こえてきたのでこの奥にいることは確かなのだろう。だが…
「おかしい…。魔物に全く遭遇しないなんて…」
不安は徐々に高まっていき、俺を焦らせる。洞窟の奥を目指して、俺は自分の素早さを全開に飛ばして行く。
「どんだけ、広いんだよ、この洞窟はっ!?」
悪態をつきながらも、なんとか洞窟の奥底まで辿り着くことが出来た。そこは今までの一方通行の細い道とは違い、開けた広いフロアとなっているようだ。今にもボスキャラが出てきそうだ。
その中央に
彼女は横たわっていた。
俺は急いで彼女に駆け寄り、安否を確認した。良かった…。どこにも怪我はないみたいだ…。だが、テントで休んだ際に回復したハズの魔力が減っている。何故だ…?
「っうう…。こ、こは…?」
彼女が目を覚ました。いつも気絶してるイメージが根付いちゃうよ、この子。
「ここは森の中にある洞窟だよ。さっきまで君をテントに寝かせていたんだが、いきなり君がいなくなった。あたふたしてたら、君の悲鳴が聞こえてきたんで、声を頼りに走ってたら君がここにいたってとこだな。」
俺は今までのことをかいつまんで話す。
「わっ!あれって、テントだったんですか!?す、すす、すみません!燃やしちゃいました!えっと、弁償…、うぅ、お金ないです…」
彼女はかなり怯えている様子だったが、なんとか会話を返してくれた。てゆうか、まずそこなんだ…。
「いや、テントはいいんだ。それより君がいきなりいなくなった原因を知りたい。あの絶体絶命のテントの中で君はどうやって助かったんだ?」
俺は1番疑問に思っていたことを率直に聞いてみた。
「は、はい!あ、あれは…私にも良くわからないんですが……多分、魔法の一種だと思います。」
魔法
出たよ、魔法。
だが、なるほど、それなら彼女の魔力が減っていることにも説明がつくな。
「魔法っていうと、君はその…転移?の魔法が使えるってことかい?てゆうかテントを燃やしたのも君の魔法だよね?」
しまった。ちょっと責めてる風な言い方になってしまった。しょうがない。こちとら引きニートを目指すほどのコミュ力なのだから。
「あぅぅ…。テ、テントはごめんなさいでした…」
案の定、彼女は謝罪を述べてきた。
「いや、テントはもういいから…」
刹那
物凄く嫌な感じがした。
俺は瞬間的に体を仰け反らせた。
そのわずかな隙間を縫って弓矢のようなものが通り過ぎいった。
冷や汗がダラダラと流れる。あれが殺気というものか。完全に油断していた。状況を考えると俺は彼女を餌に誘い出されたようなもんだからな。
周りをよく観察するとゴブリンらしき魔物が俺たちを囲んでいた。その中央に一際でかい、弓矢を構えたゴブリンがいる。なるほどあいつがリーダー格か。
と思ってたんだが。
そのゴブリンが踏み潰された。
え?
踏み潰されたんだ。
でかい。4mはあるだろう巨体の魔物が奥から出てきた。ステータスを見てみるとトロルと表示されていた。
「トロル…」
「ひぃいっ!た、助けっ!」
俺は彼女の口を手で塞いだ。
「下手に刺激するな。どう出てくるか、分からない。死にたくなかったら、俺の言う通りにしてくれ。」
俺の訴えが通じたのか、彼女は何度もコクコクと頷いていた。
おそらくここの主なのだろう。ゴブリン達とは違い、異彩を放っていた。
ただ、ステータスを見た限り倒せない敵ではない。当たり前だ。俺はバリバリチートだからな。
ゆえに
倒すことに決めた。
「さて、異世界に来ての初戦が”たかが”トロルとは残念だが…。まあ、試したいことも色々あるんだ。悪いが……死んでもらうぞ!」
彼女が声を出せないからか必死に逃げようと目で合図してくるが、知ったことか。無視だ無視。ちゃんと約束を守って喋らないのは好感が持てるがな。
俺は呑気に巨体を見上げて、肉食獣の如き目つきでトロルを睨めつけていた。
スライムは岡部にとって戦闘に含まれないそうです。だいぶ長くなってしまいましたw
感想や違和感があればお聞かせ下さい。