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恋人の趣味は否定しません

今回のお話はちょっとだけ注意!

R指定つくほどじゃないけどね。

戦う戦士にとって休日は、すべての重装備を下ろす日だって思うのは私の考えすぎじゃないと思う。


(こう)ちゃん、砂糖少な目、ミルク大目ね。」

「わかってるって。」


私、早川音羽(はやかわおとは)は休日の今日、恋人の洸ちゃんこと荒谷洸三郎(あらやこうざぶろう)の家に遊びに来ていた。

というのも洸ちゃんがしつこくしつこく誘ってきたからだった。

重装備を降ろした変わりに、私が身に着けようと思っていたエプロンとゴム手袋は家で待機されていて今週は日の目を見ることは叶いそうにないと思う。


さて、しつこくしつこく洸ちゃんが私を誘っ理由はというと。

私がずっとみたいと言っていたアクション映画のDVDを昨日やっと借りられたから見にこいというお誘いだった。

でも今はそこまで見たいとは思ってない。

そのときはみたかっただけというのが正しい。

私と洸ちゃんは同じイベント会社に勤務しているのだけど、その映画が公開されていたころ、ちょうど私の企画したイベントが始動し始めたこともあって仕事が非常に忙しくて、ストレスフルな状態だった。

そんなとき仕事から帰ってきてつけたTVから流れていたアクション映画のCMを見て思ったのが、この映画をみればすっきりするんじゃないかという安易な発想から。

だから一時期の私は『観たい、観たい。』と言っていたというわけ。


それだけ聞くと、私のためにわざわざDVDを借りてきてくれたのね。なんて素敵な恋人なの!『ありがとう(ハートマーク)。』なんて感じだけど、もうあのころ私じゃない私とすれば、『もういいよ。』って感じでもある。


だから私は言ったの。

『洸ちゃんが家に来て一緒に観よう』って。

なのになぜかそれをかたくなに拒む洸ちゃん。

意味がわからない。

だって拒否理由が、『俺も掃除するから、ムリ。』の一言。


こっちだって、ムリって言ったのに。

お掃除グッズたちが私の装着を今か今かと待ちわびているのがわかってたからね。

理由としては、先週もドタキャンしちゃったから。

でっ、最終的にはしかたがないから今回は私がおれたというわけ。

もちろんランチを一回おごる約束を取り付けてやったけどね。

それから、ここに来る途中によったコンビニで二人で食べるお菓子を買ってきたわけだけど。

洸ちゃんの好きなおつまみ系のお菓子はパスして、私の好きなコンビにスイーツばかりを買ってきたりとプチ嫌がらせというオプションつきだったりする。

というわけで、洸ちゃんは今私おもてなししようと、ドリップ式コーヒーを作ってくれていて、私はお客様面して待機中というわけ。


「音羽、悪いけど先にDVDのセットしておいて。」

「はいはい。」

「ローボードの引き出しの中に入ってるから。」

「了解。」


洸ちゃんの私へのおもてなしはまだまだかかりそうそうということで、私はローボードの引き出しからDVDを取り出す。

有名レンタル店のバックから取り出したDVDをディスクにセットしようとして中にDVDのディスクが入ったままになっていることに気づいた。


『洸ちゃんどんなDVD見てたのかな?』

恋人の趣味を知りたいなんていうかわいい精神か、ただのやじ馬的精神かはわからないけど、ディスクを変えずに、私はそのまま再生ボタンを押した。


しばらくして、でてきたのはOL風なきれいなお姉さんがお仕事をしている様子。

はて、なんのドラマやら。

私には見覚えがない。

それとも○曜サスペンスとか?


そうこうしていると、お姉さんはコーヒーを持ってどこかの部屋にたどり着き、ノックした後部屋に入って行った。

なんじゃこりゃ。

おもしろそうには見えない。

出演している人も知らない人ばかり。

役者はみんな棒演技だし、これじゃあB級ドラマどころかC級ドラマもいいところ。


『洸ちゃん好きなドラマの趣味悪すぎ。』

なんて思いながら、面白くないので、停止ボタンを押そうとリモコンを手に取ろうとしたところで私の手は中に浮いたまま止ってしまった。


テレビに映された映像はあきらかに通常放送できない展開を繰り広げている。

『いけません、部長。』

なんて言いながら抵抗示す女とそれをものともせずに女に手を伸ばす部長と呼ばれた男。


なんじゃこら。

本日二度目のなんじゃこら。

だってそうとしか言いようがない。


『これってAVってやつだよね。』


停止しそびれたDVDはなおも進んでいく。

どうやらこのAVの設定としては、きれいなお姉さんに卑猥なことをする部長、上司と部下モノ。

ということらしい。

画面の中の女の人は『ダメです。』とい言いながら今や半裸状態。


これを見て私にどうしろと?感想とか求められるの?


『はっ。もしかして、洸ちゃんにもこんな願望があるとか!?』

こんなの観てるくらいだもん、あってもおかしくない。

そんでもってどうみたって色気不足な私じゃムリっていう無言のサイン!?

まさかこれを見て勉強しろなん言うためにデッキに入ったままだったの?

でも今のところ洸ちゃんは平社員で、役員職には就いてないから、先輩と後輩という絵図ら。

そうなってくると、洸ちゃんと誰か(当然私じゃない誰か)が、私の脳内に出現。

脳内の二人の距離があと少しというところで、


バタン。


トイレに行っていたらしい洸ちゃんが戻ってきて、ドアを閉めた音が聞こえた。

その音は私を現実に戻しただけじゃなくて、脳内の二人もなんとか静まったみたい。


なのに、洸ちゃんを振り返ってみることができない私。


「音羽?」

私を呼ぶ洸ちゃんの声が聞こえてやっと洸ちゃんを見た私。


「あっ!」

洸ちゃんは私のおかしな様子を漸く理解したらしく驚いている。


「洸ちゃん。」

私は洸ちゃんの名前を呼ぶことしかできないでいた。


「音羽。誤解しないでくれ、これは違うんだ。」

「なにが違うの?これっていわゆるAVってやつでしょ。」

「いや、そうなんだけど。ってそうじゃなくて、俺の物じゃないし、俺が借りてきたんじゃないんだ。」

「だったらどうして、こんなものが洸ちゃんの家のDVDデッキから出てくるの?」


『あぁ部長。』

『もっとぉ、もっとしてぇ。』

『いいです。』


洸ちゃんと私の会話を遮るように、それでもってこの場ににつかわしくない声がテレビから流れている。


「だからこれは、(みつる)の物で俺のじゃないんだ。」

「信じてくれ。」

「前に充が遊びに来たときに、俺が知らない間に置いて帰ったんだ。」


『あ~。』


洸ちゃんの言い訳と、テレビから流れてくる声。

『部長~。』


女性のあられもない姿が映し出されたときはさすがに顔を両手で覆っていた。


「音羽。」

名前を呼ばれて洸ちゃんを両手の人差し指と中指の隙間から見る。


その間にも男女二人のとんでもない映像は繰り広がられている。


『あ~。』


「信じてくれ、俺はこのDVDは見てない。それだけは神に誓って言える。」


物語なのか、二人の行為なのかわからないけれど、どうやらクライマックスに差し掛かっているようで。

それでもって、こちら現実の洸ちゃんの必死の弁解も白熱して、『神に誓う。』なんてことまで言い出した。

でも、今の私にしてみれば、それどころではない。

必死で弁解する洸ちゃんの言葉なんて素通り状態。

だってそれよりもすごい映像が目の前に流れていれば、自然とそちらに目が奪われてもしょうがないよね。


「洸ちゃんすごいね。」

「はっ?」

「だって×××してるよ。」

「あー今度はあんなことまで!」

「どっどうしよう、洸ちゃん。あんなことまでしゃちゃってもいいの!?」

指と指の隙間から見える映像を見ながら、洸ちゃんに実況中継を始めていた。


「おっ音羽?俺のこと怒ってないのか!?」

「怒る?なんで?」

聞きながらも人差し指と中指からは映像をちら見状態。


「このDVDを俺が見たと思ってたんだろう。だから怒ってたんじゃないのか?」

「怒ってなんかないよ。でも洸ちゃん好きなDVDの趣味悪いね。」

「えっ。」

「洸ちゃん、世の中にはまだまだ知らないことってたくさんあるんだね。」

「あっ、ああそうだな。でっ、音羽。これ俺のじゃないって言ってるんだけど…」

「わかってるって。みつさんの物なんでしょ。でも洸ちゃんこれ好きだから借りたってことだよね。」

「いやだからさ。」

「知識を増やすことは大切だし、幾つになっても探究心を忘れないっていう洸ちゃん素敵だと思うよ。うん。」

「おっおう、ありがとう?」

洸ちゃんは自分の趣味を私に否定されなかったことにほっとした様子。

洸ちゃんには内緒だけどさっきは棒演技って言ってごねんね。

演技は演技でも二人の絡みはA級だと思うよ、うん。

まぁ私的には洸ちゃんもみつさんも趣味悪いなって思うけどさ、だからって恋人の趣味を完全否定なんかしないのに。

人間だれにだって一つくらいそういうのあるよね。

画面の女の人のような色気は私にはないけど、洸ちゃんの人には言いにくい趣味も大きな気持ちで受けとめるから。


「ところで洸ちゃん。私へのおもてなしはどうなったの?」

もうとっくにコーヒーはできてるし、冷めちゃってると思うよ。


「悪い、今持ってくるから。」

「あっお皿も忘れないでね。」

「はいはい。」


テレビ画面には未だ男女の姿が映し出されている。


『それにしても洸ちゃんあんなに必死に謝ってたのに、だったらなんでテレビ止めなかったんだろう?』


まぁいいっか。

洸ちゃんも私公認で見れて満足そうだったし。


私は今度こそリモコンの停止ボタンを押した。


そういえば、

『戦う戦士にとって休日は、すべての重装備を下ろす日だって思うのは私の考えすぎじゃないと思う。』

なんて思ってたけど、もしかして洸ちゃんも普段着ているスーツを脱いで、開放的な気分に浸りたかったのかな。


なんて少々トンチンカンなことを思う音羽だった。


少しでも楽しんでいただけたでしょうか?

このシリーズはこんな感じで続きます。

次の洸ちゃん視点ですべては明らかに!?

ということで、最後まで読んでいただきありがとうございます。

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