67 五蘊盛苦
俺は、道を歩いていた。ただ一人で。たった一人で。
みんな死んだ。
消えてしまった。
ヨシザカが死んで。
マセが死んで。
ツユクサが死んで。
レンゲが死んで。
アラガミが死んで。
シデンが死んで。
ヴィティスが死んで。
セラが死んで。
──カリンも、死んだ。
俺だけが生き残って。
たった一人で生き残って。
何もなくなった。
空を見上げた。星がある。大して綺麗でもない星だ。
けど……どこか懐かしい気がした。何故だろう? 何が懐かしいのか、思い出せない。
ああ……
もし一つ星を貰えるとしたらどうしよう。
何でそんなことを考えるのかはわからない。思い出がそれを呼び起こしたかのような気もするが、どうだろう。
そうだな……
もし星を貰えるなら、俺はそこに楽園を作りたい。
誰も泣かない、誰も悲しまない、誰も憎まない、誰も争わない世界。
そして、誰も死なない世界。
それはきっと、理想郷だ。あり得るはずのない、絵空事の世界だ。
でも……それを求めてしまう。あったらいいのにと、思ってしまう。
俺は前に、それを否定しなかったっけ? そんなこともあったような気がする。
否定しながらも、どこかで俺は、それを求めているのか。矛盾している。
ああ、神様。
何故この世界はこうも狂っているのか。
知ってるんだろ、神様。
だってこの世界は、あんたが創ったんだから。
俺達はどうすればいい?
どこへ行って、
どこへ向かって、
どこで何をして、
どこで息絶えて、
どこで死ねばいい?
教えてなんて、くれないか。
けど……
たとえこの世界が胡蝶の夢だとしても。
俺は今、ここに存在している。
それで、いいじゃないか。
それじゃ、ダメなのか?
……まあいいさ。そんなの知らなくたって、生きていける。
この俺の知らないリアルで、俺は、生きていくしかない。
──そうだ、あそこに行かなくちゃ。
ふと、そんなことを思った。
ここからは遠い。歩いて行けるだろうか。まあいいか。それはどっちでも。
俺は歩き出した。
空の上では星が輝いている。
ずっと変わらない、その星が。
俺が死んだって、輝き続けるだろう。
だから、前へ……
今は、未来へ……
了




