表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/69

58 アルカディア・システム



 俺が引き金を引き、セラが光属性レベル3の魔法(エクストラ・アビリティ)を放つ。弾丸と雷球が、シデンへと突き進んでいった。しかしそれは、突如現れた黒い炎のような盾に阻まれてしまう。それは闇属性のレベル2魔法と似ていた。

 そして、シデンが俺達に向かい指を向ける。目標を定めるかのように。瞬間、俺達の周囲に大量の氷の矢が現れた。そして高速で向かってくる。

「そう簡単に捉えられてたまるかよ」

 セラが〈対魔法障壁(メタ・エクストラ)〉を発動し、それを防いだ。氷の矢の動きが止まる。その間に俺達は〈疾風(ストリーム)〉を発動、瞬時に移動し、氷の矢の射線上から逃れた。

 シデンの視線は俺達を向いていなかった。俺達の動きに反応しきれていないんだ。今なら、攻撃が当たるかもしれない、俺は引き金を引き、弾丸を放った。しかし、再びそれは黒の盾に阻まれてしまう。シデンその盾が現れたことで、俺達の居場所に気が付いたみたいだ。まさかあの盾は、シデンの意識に関係なくオートで現れるのか?

 瞬間、俺の背後から強い発光。俺が後ろへと視線を向けると、そこには無数の光の雷球が現れていた。そして、俺に一直線に向かってくる。

「グラファ・リウ・ダクズルド」

 セラが闇属性の魔法を唱えた。闇の力を纏った巨大なグリフォンが、一瞬で雷球を掻き消した。そのままグリフォンはシデンを捉え──

「甘いな」

 その声の直後、グリフォンが大量の光の矢に貫かれた。そして消滅。すると今度は、天井に大量の光の矢が現れた。そしてその矢が俺達に向かって降り注いでくる。

 俺達は同時に、〈対物理障壁(メタ・シールド)〉を発動した。上から降り注ぐ光の矢を、その盾で防いでいく。一瞬でも気を抜けば、突破されてしまいそうなほどの圧力だ。俺は〈対物理障壁〉の維持に神経を集中させる。そして。

 真横から、俺の腹部が金属の槍によって貫かれた。

「な……ッ」

 激痛が走る。〈対物理障壁〉の維持が弱まった。盾が崩壊し、俺の身体が光の矢によって貫かれてしまう。激痛が全身を駆け抜けた。

「周くん!」

 セラが魔法を放つ。光の矢がかき消されて俺の身体が自由になった。俺は自分の身体から槍を引き抜いて、〈回復・極〉を発動する。そしてその場から駈け出して、距離を取った。

「何でもありか、あれは……」

「そういうわけじゃなさそうだ。付け入る隙はあるさ」

 呼吸を整える俺に、セラが答えた。そしてセラはシデンを見つめ、叫ぶ。

「なあ、紫電。それ、まだ不完全なんだろ?」

「ほう、何故そう思う?」

 シデンが動きを止めた。セラの話を聞こうってのか。

「アルカディア・システム──それは今のところ、〈オメガ〉のデータを元にしたものしか具現化できない。違うか? さっきから魔法とか能力(アビリティ)ばかりを具現化しているからね。なるほど……お前はまだ思考の一体化を進められていないんだな?」

「さあ、それはどうだろうな」

「図星なんだろ? 素直になれよ」

「どういうことだ? 〈オメガ〉のデータだと?」

「あのアルカディア・システムは人間の脳を、その具現化能力を媒介にして機能している。香凜ちゃんの具現化能力(イマジネート)をメインに、そしてその他大勢をサポートとして動いているんだ。つまり、大勢の具現化能力を一つにして動いているわけ。そして、具現化能力とは意識の集中でもある。アルカディア・システムに使用されている脳全てが、具現化するものを一つに絞らなくちゃならない。そこにブレがあってはダメなんだ。例えば『本』と言うものを具現化するとしても、どんな本を思い浮かべるかはわからない。具体的な対象を思わなければならないんだ」

 ああ、そういうことか。

「……つまり、それをやりやすくするために〈オメガ〉魔法(エクストラ・アビリティ)を具体的な対象として指定しているということか?」

「そうだね。元々アルカディアやVRゲーム〈オメガ〉の存在意義は、具現化能力者(イマジネーター)の選別と共通意識の固定化にあった。それはまあ、紫電にとって、という意味だけど……まー、ようするに、今の紫電は魔法や能力(アビリティ)をぶっ放すことしかできないってことさ。大したことないよ」

「言ってくれるな、観測者(オブザーバー)

 シデンがこちらへと手のひらを向けた。そして、セラが笑う。

「まあ見せてやろうぜ。俺達はひたすらここまで戦い続けてきたんだ。後ろの方で偉そうに指示出してただけのおっさんに、負けてたまるかよ。だろ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいな、と思ったら「小説家になろう 勝手にランキング 」のクリックお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ