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57 ファイナルステージ



 真っ白な視界。そして雷音。次の瞬間、俺の身体を拘束するツタの締め付けが弱くなった。俺は強引にツタを引きちぎるようにして振り払い、拘束から逃れる。

 俺が地面に着地したころには、光は静まっていた。俺の目の前には、<魔法剣(エクストラ・ブレード)>を握った男が背を向けて立っている。そいつは俺を振り向いて厭味ったらしくにやつき、そして、言った。


「助けに来た、ってやつさ。ナイスな登場の仕方だったろ? たまには活躍しないとね」 

「誰かと思えば貴様か、世良新醐」

 突如現れたセラに向かい、シデンが言った。

「そうさ、僕だ。久しぶりだな、紫電。これまで好き放題やってくれちゃって。ああ……お前に言いたいことがありすぎて、何から言っていいかわからなくなるよ」

 きっと、さっきの光はセラの発動した魔法(エクストラ・アビリティ)なのだろう。雷音がしたから、光属性の魔法だろうか。

「……よくここまで来れたな、あんた」

「随分な言い草だね。折角死ぬ気で後続倒して、ここまで来たのに。もうちょっと感謝して欲しいなぁ」

「これは、何だ……?」

 俺は周囲のツタに視線を向け、言う。


「紫電光鸞と八雲戒の研究の集大成。具現化能力(イマジネート)の完成系。脳に描いたものを物質として具現化するシステムさ。創造できる範囲なら、大体のものが生み出せる。こいつが神に対する反逆の切り札だ。もっともこれは、補助として〈オメガ〉のシステムを強く反映しているみたいだけどね」

「物質の具現化? そんなことが可能なのか?」

「できるよ。アバター化の本質はそこだからね。ってか今、目の前にその結果があるじゃない。あのツタ、シデンが作り出したんだぜ。魔法(エクストラ・アビリティ)じゃない。創造による具現化だ」

「よく調べているじゃないか。さすが観測者(オブザーバー)と言ったところか?」

 シデンが口を開く。

「そりゃね、大体見当はついてたさ。そもそも僕は、お前がそれを造ろうとしてたからイカロスを設立したんだぜ? 許せるかよ、この世界を崩壊させかねないシステムだなんて」

「いいだろう……向かってくるがいい。貴様ら二人、アルカディア・システムの試験運転には丁度いい」


 低い音が聞こえてくる。コンピューターの駆動音に似た……いや、違う。まるで、何かの叫びのような、そんな音。うなりと言えばいいのか、そういった類の音が聞こえてくる。

 セラが軽く俺の背中を叩いた。そしてはっ、と笑う。

「これで最後の闘いだ。敵は紫電光鸞、世界の支配と改竄を目論む男。最終ステージっぽい敵じゃないか。燃えるだろう?」

 こんな時に、こいつは何を言ってるんだろう。

「別に……大事なのは、そこじゃない。あいつを殺せば、全て終わるってことだ」

「緊張の欠片もなさそうだ。それでこそさ。さあ、やろう。ここでケリをつけなきゃね」

 セラが〈魔法剣〉を構えた。俺も二丁の<銃>をジェネレートする。そして引き金に指を駆け、地面を蹴った。

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