22 アタックアビリティ
「〈銃〉、〈大剣〉、〈小型剣〉、〈靴〉……なんだ、お前武装が多いな。チートでも使ってやがるのか」
ヴィティスは武装を〈双剣〉から〈銃〉へと切り替えた。その銃口を俺に向けながら他愛のない話をするかのように喋り続ける。
「ああ、いや、違うな。そうか、〈全武装〉だったか? セコイ能力積んでるよなぁ。デメリットでEP回復速度が低下するんだったか……つうかさ、こんなんで参ってんじゃねぇよ。もっと俺を楽しませろよ、ニセモノォ!」
ヴィティスが引き金を引いた。黒い弾丸が放たれる。
俺は斜め後方に跳んでそれをかわした。瞬間、ヴィティスが接近してくる。速い。これはただの〈疾走〉じゃない。上位種の〈疾風〉か?
数発の弾丸。俺は〈跳躍〉で天井まで跳んで、それをかわした。ヴィティスが俺に銃口を向けてくる。俺は天井に手を押しやって方向転換、再び襲いかかってきた弾丸をかわして、後ろへと下がる。
「何だ!? どうした!? この程度か!? つっまんねぇ野郎だな、オイ!」
ヴィティスが叫ぶ。同時、その〈銃〉が黒く輝いた。
まずい、攻撃能力か。俺は〈杖〉をジェネレート、それをヴィティスに向けて構えた。
「能力、〈煉獄十字放射〉!」
「グラファ・リウ・カイズルド!」
十字に放射された無数の炎の弾丸と、水属性のレベル6魔法、〈杖〉から放たれた水の女神が激突する。
すさまじい水蒸気が視界を覆った。ヴィティスの姿が見えなくなる。
瞬間、俺の目の前に強烈な閃光が走った。まただ。
「ぐ……っ! ヴィル・レ・ジゾルガ……ッ!」
俺は咄嗟に地属性のレベル5魔法を発動、白虎が俺の前に現れた。ヴィティス相手に出し惜しみはしていられない。
白虎が水蒸気の中へと襲いかかる。その瞬間。
「〈雷電砲〉!」
ヴィティスの声が、廊下に響いた。白虎が光輝く巨大な弾丸に激突し、消滅する。爆発が起こった。俺はその衝撃で、吹き飛ばされる。
俺はそのままの勢いで、地面に叩きつけられた。広い場所に出る。訓練に使っていた、ドーム状の場所だ。
俺はすぐさま起き上がり、〈銃〉をジェネレート。俺へと一直線に向かってくるヴィティスに対し、引き金を引いた。
弾丸がヴィティスの身体を貫く──だが、ヴィティスは止まらない。それどころか、歪んだ笑みを見せながら俺に突っ込んでくる。
ヴィティスが〈銃〉をバニッシュさせ、〈双剣〉をジェネレート。そして、叫んだ。
「しゃらくせぇんだよ! 〈亜空烈乱舞〉!」
〈双剣〉の刃が、俺の身体に突き刺さった。続けて斬撃。一撃、二撃、三撃、四撃……俺は激痛で意識を一瞬、ブラックアウト。その後、無理矢理意識を覚醒させて、〈靴〉を装備。〈疾走〉と〈跳躍〉を同時に使用し、その場から距離を取った。
激痛が全身を襲う。痛みが断続的に続いていた。止む気配がない。あれだけの攻撃を喰らったら、当然か。
だが……おかしい。何がって、ヴィティスの攻撃能力の数だ。
今さっきのが、六個目の攻撃能力。多すぎる。他のサポート系の能力も使用しているというのに、こいつは、まさか……
能力の制限が、無いのか?
「こんなもんか。ああ、これくらいだったらわざわざ俺が来る必要なかったな。その辺の雑魚にでも任しておきゃぁよかったぜ」
かったるそうな欠伸が聞こえてくる。
ダメだ、勝てない。
前に世良が言っていた通りだ。こいつは強い。〈オメガ〉内でも屈指のランカーだった理由も頷ける。しかも、能力の制限もないってことは、普通じゃ手におえない。
……使うしかない、か。
「能力、〈狂人化〉」
そして、俺の視界が赤く染まり始めた。




