12 オートマター
EPはもう空だ。出し切った。この後何があるかわからないから、あまり魔法の多用はしたくなかったんだけれど。
俺のセットしている特殊能力の〈全武装〉は、全十二種の武装全てが使える。だがそのデメリットとして、EPの回復速度が著しく低下するのだ。速度にして三分の一。つまり単純な魔法攻撃力は、三分の一、ということだ。
要は、短期決戦で決めてしまえばいい。それか、小出しにしていくかのどちらか。
俺は地面に倒れる二人を見た。生きているのか、死んでいるのか。どちらだろう。死んでいるとしたら、困る。
まあ、とにかく確かめよう。そう思って俺はナエの方へと歩きだし、そして。
殺気。
俺は背後からやってきた〈双剣〉の刃を、跳んでかわした。間一髪のところで、刃が空を切る。
俺はナロに身体を向け、距離を取った。
気がつけば、ナエが立ち上がっている。肩で息をしていた。ナロもそうだ。先ほどの一撃はそれなりに堪えているようだ。
「やるね……八雲周……」
「さすがだ……世良親醐が見込んだだけのことはある……」
途切れ途切れに、二人がそう言った。
「あいつのこと、俺の顔をしたあいつのことを、吐け」
そう、あいつ。
俺の顔をして俺と同じ名の、八雲周。
ヴィティスと言う名のアバターを持つ、あの男。 あいつは一体なんなのか。何故俺と同じ名前を、俺と同じ顔をしているのか。わからない。知りたい。いや、知らなくちゃならない。
数秒後、二人が口を開いた。
「いいよ……」
「話そう……」
「ただし……」
「これを切り抜けられたらだ……」
直後、地面が震えた。
何かが、来る。
俺の目の前、ドームの中のシャッターのうちの一つが独りでに開いた。その奥から金属のこすれる音と、モーターの駆動音が聞こえてくる。
それは、黒い巨大な甲羅を持った蟹に見えた。
でかい。胴体は二メートルほどの長さを持っていて、足はその数倍。それが今、俺に向かって歩いてくる。六つの足をせわしなく動かし、そしてドームの中へと入ってきた。
「これは……」
俺はその場から飛びのき、そいつから距離を取った。
金属に身体を覆われた蟹。いや、多足のロボット、と言うべきなのか。前方には大きな二つの鋏、そして背からは砲身が伸びている。
そう、それはまるで、戦闘兵器だとでも言うかのようで。
おかしい。
目の前のこれは、なんだ?
蟹型のロボット。そう、それはどうみてもフィクションの中でのモノ。こんなものが実用化されているなんて見たことがないし、聞いたこともない。
しかもそれが、なめらかに動いている。俺はどことなく〈オメガ〉のボスモンスターのことを思い出した。
確か、こんなのがいたような気もする。だけどそれは決して、リアルの存在じゃない。
黒い蟹が今、二つの鋏を器用に使ってナロとナエを持ち上げた。そして二人を自らの背に乗せる。
「さあ……どうだい八雲周?」
「君はこいつに……自動防衛機械に勝てるかい?」
傷だらけの二人が、俺を見下ろして、言った。




