春の色香に大きく乱れて闘(おど)りましょう。
「ハッ、ハッ、ハァッ!な、何で!」
何で俺は走っているんだ?何で追われてるんだ?何で、逃げているんだ?
一つづつ答えを探す。
指を落とされたくないから?
殺されそうだから。
死にたくはないから。
「ハッ、ハァッ!いや、おかしいから!」
前から後ろに景色と空気が流れて行く。
「兄様!痛くしないから待って!」
「お兄様!痛いだろうけど待って!」
「誰が待つかコノヤロウ!」
「「酷いわ!野郎だなんて」」
突っ込みのピントが、俺の感覚とずれてる!兎に角、逃げるんだ!捕まったら、終わってしまう!物語とか俺の人生とかが!
ふっ、と。風が流れた。影が、すれ違いに流れて行った。
「お兄様、とにかく、ちょっと待っごばぁ!」
影と入れ違いに聞こえてくる女の奇声。つい、足を止めて振り返ってしまう。
………謎の女の前で、追っ手が一人うずくまっていた。
「………キャー!!冬花!?」
「逃げろ!兼貞!ここは、私に任せろ!」
「ごふっ!夏花気を付けて、こいつ強いわ!」
「ほう、まだ立つか。なかなかどうしてやるようだな。」
そう言って、謎の女は少女2人に襲いかかった!
目の前で繰り広げられる怒濤の展開。ダメだ、ついて行けない!何で最初の2人が追ってくるのか。すれ違いざまに助けてくれた女性は何者なのか。それでどうしてこんな乱闘になっているのか。誰を恨めばいいのか。俺に安息は無いのか。神様は俺が嫌いなのか。
雛井兼貞の疑問と苦悩は尽きない。
更新が遅れました。ごめんなさい。