はるいろだいらんとう
最悪のケースを想定しておけ。現実は何時もその斜め上を行く。
マンガの台詞にこんなのあったなぁ。
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彼、雛井兼定は大学構内のベンチで、絶望の淵にいた。
言わずもがな、強烈な存在感を伴って現れた二人の変態のせいである。
まず赤木。彼はホモである。
そこは、この際良いとしよう。
世の中には、自分と違った形の愛を求める人間だっている。
それは、認める。悪いとも思わない。
だが、赤木は雛井の理解を超える行動をとった。
雛井に好かれるために、自らの肉体を鍛えると
鋼鉄の鎧を、より頑強なものに磨き上げると。
赤木の筋肉フェチ(筋肉信仰)は、変態の域にまで昇華されていた。
そして、桃山。
多くは語るまい。真性の変態である。
あんな存在を、雛井は知らない。
出来れば、知りたくもなかった。
あれなら、エイリアンが「お友達になりましょう。」と眼の前に現れた方がずっとマシである。
さらに追い打ちをかけたのが、絡まれた時の状況だった。
目撃者多数。(現在のところ)弁明釈明の余地なし。
雛井は思った。「明日から俺の周りは空白地帯になるのではないか?」と。
憂鬱である。雛井兼定の憂鬱である。いや、鬱である。
大学への進学を果たし、新たな生活に期待を抱く雛井は
「可愛い子と知り合いになれたらいいな」くらいは考えていた。
だが遭遇した人間が、悪かった。
雛井兼定は絶望の淵に居た。
これからの生活を思うとそうせずには居られなかった。
そんな彼のもとに
優しい優しい春の木漏れ日のような声が二つ、届いた。
「兄様」「お兄様」
「「どうかされましたか?」」