はるかぜのように、はるいちばんのように
怒涛のように流れる状況、流される俺。
質の悪い変態に出会い、制裁を下し、疲労困憊這々の体で新居の扉を開けたら変態が居て、部屋を間違えたと思って隣の部屋を開けたら変態が居た。
これまでの状況を改めて並べる。並べてみると、句点が打てない。並んだ文章は分かり難いし、何故こんな事になったのか分からない。
こんな時は出来ることから一つ一つ解決しよう。このアパート、確か大家さんも住んでいた筈だ。
優しげで、可愛い感じの未亡人(60代)だと聞いている。出来れば、常識人でもいてほしい。
「大家さんの部屋は、103号室か・・・」
ポストを確認して、目的の部屋へ向かう。今にも大声で助けを求めたくなるが、心を落ち着かせて扉を叩く。
コンコン
「こんにちは~、越してきました雛井ですー。」
『はーい』
ドアの向こうから、間延びした声が聞こえる。
あぁ、なんだこの声。ひどく心が落ち着く。たった半日の間に俺はこんなにも(まともな)人恋しくなって居たのか。
そして、ドアが開く。
そこには、割烹着姿のお婆ちゃんがいた。
「ごんにぢわ、ごしでぎまじだびないてず。」
大家さんの包み込むような優しさオーラに当てられて、涙ながらに挨拶する俺だった。