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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第71話 密告 (2)

「正直に話せばお前だけは助けてやる」

「ちょ、ちょっと…!急に何なんですか!」

「ゼインの不審な行動を確認している。そして、お前がゼインと接触しているのは分かっている。正直に答えろ」


エンキの壁に押し当てる力がさらに強くなる。

コイツからは逃れられない。

しかし、仮に全てを話したところで助かる保証はない。

脱獄を企んだとして、殺される可能性だってある。


「俺を、絶対に助けてくれる保証はあるんですか…?」

「その言葉、『はい』と捉えていいな?」

「待ってください!その前に保証してくれないなら、俺は何も話せません」

「…いいだろう。素直に吐けば、お前をここから出してやる」


スタングは思わず目を見開く。

命の保証を約束させようと思っていたが、さらに上の望みを提供しようというのか。

でも、こいつの言うことを素直に鵜呑みにはできない。


「お前一人くらい出したところで問題ない。俺の名に於いて誓おう。お前をここから出してやる」


俺の心を見透かしたかのようにエンキは言葉を付け加えた。

ここまで言うってことは信じていいのだろうか。

全部話せば、ここから出れる…。

ゼインの作戦に乗っても、ここから出られる可能性は高くないだろう。

今、俺の目の前にその細い糸が俺の前に垂れている。

この糸を手繰たぐった先に確かな自由がある。


「さあ、本当のことを話してもらおうか」


エンキの問いかけにスタングはゆっくりと口を開いた。



鉢植えにまた葉が置かれていた。

ログは葉を持って、監房へと戻る。


「エフィ!ゼインから連絡来た!」

「ゼインは何て言ってきたんだ?」


くすねていた土を葉にまぶすと、ゼインからの伝言が書かれていた。


「『三日後に脱獄する。闘技場に来い』だって。闘技場ってどこにあるんだろう」


初めて聞く場所だ。

収容所なのに闘技場なんてあるのかな。

本を読みながら、エフィは小さく呟いた。


「そこなら知ってるぞ」

「え、そうなの?」

「ああ。金持ち達の道楽が行われてる場所だ」


その言葉は少し冷たく感じた。

闘技場。

その名前だけで多少は予想がつく。

どういう理由かは知らないが、囚人同士を戦わせているんじゃないだろうか。

エフィはさっきから顔を上げようとしない。

まだ迷ってるのかな。

僕は気になって彼女に問いかける。


「…エフィも来るよね?」

「そうだな。面白そうだから私も行こう」

「やった!」


ログが喜んでいる一方で、エフィの顔色は何一つ変わらなかった。



収容所の入口が見える位置を陣取ってから、数日が既に経過していた。

リクは寝転びながら大きな欠伸をする。


「リク、全然動かないニャ」

「まだその時じゃないからね」


空が夕闇に覆われた頃、再度入口に目を向ける。

守り人達の配置が変わり、人数も増えたことに気付く。

そろそろ頃合いか。


「行くよ」


リクはシリルを連れて、収容所入口付近まで近づく。

警備の守り人達の声が聞こえてくる。


「三日後に賭け試合が行われるらしいぞ」

「マジかよ。じゃあ、暫くはぶっ続けで警備になりそうだな」

「本当になあ。勘弁してほしいぜ」


リクがシリルに離れるぞと指で合図をする。

シリルはこくりと頷く。そして、彼の後を足音を立てないようについていく。

また元の位置まで戻ってくると、リクは話し始める。


「三日後に忍び込もう」

「何でニャ?警備が厳しくなるんじゃニャいの?」

「あそこは賭け試合を定期的に開催してるんだよ。そのとき、たくさんの貴族が参加する。そこに紛れた方が入りやすい」

「リク、凄い物知りニャ」

「まあね」


リクは座り込んで、懐から地図を取り出す。

いくつか目星をつけた場所の様子を見に行く。

出口として使えそうなのは二つくらいか。

今日はこんなところだな。


「さあ、もう寝るか」


廃屋の敷地をまたぐ。

リクと合流してからは、ずっとこの場所を使っている。埃をかぶってはいるが、それさえ取り除けば充分に使えた。

それに収容所から程近く、守り人達からも目をつけられていない。ここは拠点とするには都合の良い場所だった。

リクは椅子に腰掛けると、パンをかじる。

シリルもその半分をもらった。


「あ、そういえばゼインってどんな奴なの?聞いてなかったなと思って」

「ゼインは研究ばっかりしてるニャ」

「研究ってどんな?」

「シリルもよく分かんニャいけど、木の実とか魔物の素材使ってなんかやってるニャ」

「ふーん、なるほどね。他に仲間はいるの?」

「ログがいるニャ。ログはゼインの面倒を見てあげてるニャ」

「その子も何かスキル持ってるんだろ?どんなのか知ってる?」

「ログは記憶力が良いニャ」

「なるほどね。それは珍しい能力だね」


シリルはパンを食べるのを止め、不安そうに話す。


「ゼインとログ、助けられるかニャ…」

「大丈夫さ。俺がついてるんだから」

「自信満々ニャ」

「初めてじゃないからね」


リクが小さくこぼした言葉を聞き逃した。


「なんか言ったニャ?」

「いや、何でもないよ」


リクは寝転ぶと、今度はシリルに聞こえるように声を出した。


「さあ、明日は潜入までの経路を決めないとな」

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