表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼインは調合したい  作者: トウカ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/85

第64話 闘技場 (1)

殺すまで終われないって、こいつら正気かよ。

ここにいる連中は人の殺し合いを娯楽として楽しんでるってことなのか?

あげく俺達を賭けの対象にまでしやがって。


「両者まだ動きません!今の状況に理解が追いついてない模様です!いい加減早く戦え!」


実況に合わせて客席から「早くしろ」「殺せ」と罵声が飛び交う。

勝手なことばっかり言いやがって…!

今ここにいる連中の方を殺してやりたいくらいだ。

プージャは見るからに気弱そうな男だ。周囲の視線や声に怯えた表情を浮かべている。

でも、もしこのまま過ごしたらどうなるんだ?

このまま戦わなきゃどちらも死なない。

もしかして動かないのが一番正しいんじゃないか?


「相手が戸惑ってるうちが有利ですよー!生きて戻りたくないのかー!?」


実況がついに闘争を促すように煽り始める。

言葉を真に受けたプージャが大声を発しながら、地面を蹴り飛ばす。

十メートルは離れてたはずなのに、一気にすぐ傍まで距離を詰めてくる。

普通の跳躍力じゃない!

これがこいつのスキルか。

でも、動きは読みやすいし、目で追えない程の速さもない。

見た目通り、戦闘経験がないのだろう。

ゼインは一直線に迫るプージャの突進を躱す。

しかし、躱した俺を追いかけず素通りするプージャ。

どこへ行く?

プージャは壁際に落ちているナイフを拾う。

周囲をよく見ると、壁際には弓や剣等、様々な武器が置かれていた。


「言い忘れていましたが、周りに落ちている武器は自由に使っても問題ありません!」


それはもっと早く言えよ!と叫びたい気持ちを抑えるゼイン。

丸腰でプージャの動きに対処するのはかなり不利だ。

すぐさまスキルを使い、ゼインも壁際に落ちていた剣を拾う。

見たところ、どこにでもある普通の剣だな。稲妻を剣に纏わせるのは難しそうだ。

でも、今の動きで俺のスキルは奴と似たような移動系だと認識したはずだ。

剣に視線を向かせて、手刀でトドメを刺してやる。


「さあさあ!ようやく戦闘が始まりそうです!どちらも移動系のスキルのようなのは期待外れですが!生き残るのは果たしてゼインかプージャか!」


プージャが戦う気なら戦わないわけにはいかない。

お互い駆け出し、刃を何度か交える。


「おい、あんた!このまま戦わなきゃ俺達は死なない!だからテキトーに合わせて戦おうぜ!」

「君がその約束を守ってくれる保証はどこにあるんだ!」


そりゃあそうか。

こいつからしたら俺が裏切って殺すと思うのも仕方ない。

もう命のやり取りは始まってるんだ。


「故郷で家族が待っているんだ!君には悪いけど、僕は生きて帰りたい!」


…!

こいつには帰りを待ってる家族がいるのか。

俺は?

プージャはつたない剣技を補うようにスキルを使う。

おかげで動きが読み辛く、思ったより戦いにくい。

そうは言っても隙はいくつもある。

そこを攻めれば簡単に殺せそうだ。

だが、俺の中でまだ迷いが残っていた。

本当にこのままこいつを殺していいのか?

何の恨みもないのに。こいつには待ってくれてる家族もいるのに。

俺には誰もいない。

ログもシリルも成り行きで俺といるだけだ。待ってくれてるわけじゃない。

だけど、セイラに生きろと言われた。それにまだ調合もしたい。

大層な理由じゃないけど俺だって譲れない。

だから、俺がこいつを殺さないと…。

しかし、プージャには実力が、ゼインには決意が足りないまま時間だけが過ぎていく。

お互い息もあがり、動きも悪くなってきた。

もう周りから怒号も聞こえない。

俺達をさげすむような冷ややかな視線だけが向けられていた。



闘技場全体を見渡せる観覧席に座る太った男。


「はぁ。つまらん。エンキが活きがよさそうと言うから期待していたのに。後で、罰を与えねばな」

「ズック様、お待ち下さい…!」


ズックは不機嫌そうに飲んでいたワインを吹きかける。


「黙れ。()()を用意しろ」


従臣である守り人はしたたるワインにも全く動じることなく、丁寧に頭を下げる。


「かしこまりました」



「お集まりの皆様!さあ、このつまらない時間も終わりです!お詫びに特別ゲストをお呼びしましょう!」


特別ゲスト?

実況の合図と同時に闘技場の入口にある鉄柵が上がる。

そこから吐きそうなくらいの獣臭が漂ってくる。


「ズック様が飼われているペットのモモちゃんです!」


何だよ、こいつは…。

戦わないのが正解なんてわけないか。

戦っても戦わなくても決着がつかなければ、この化け物が全員ぶっ殺すってことか。

もはや恐怖を通り越して笑えてくる。

闘技場に現れたのは、三つの首を持つ大型魔獣だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ