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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第63話 荷物の行方

部屋に取り残されたシリルは、その場から動けずにいた。


「シリル。俺らの荷物頼む」


ゼインの言葉を思い出し、シリルは急いで窓から部屋を飛び出す。

良かったニャ。追いつけたニャ。

屋根を伝って、ゼイン達を連れて行く守り人を密かに尾行する。

すると、荷物を持った守り人だけ左の方向へと進み始める。

ゼイン達の無事を願いながら、シリルは頼まれた荷物の行方を追った。

街から外れた道を真っ直ぐ歩く。

どこまで行くんだニャ。

守り人は煙突付きの小屋に入った。煙突からは焦げ臭い煙が吐き出されていた。

窓からそっと中を覗くと、もう一人別の守り人がいた。

その男にゼインの荷物を渡す。


「これも焼却を頼む」

「分かった。次の時間に燃やしておく」


荷物燃やされちゃうニャ!?

どうしたらいいニャ…。それに見張りがいるから、簡単に忍び込めニャい。

荷物を運び込んで来た守り人は小屋から出ていく。

次燃やす時間って何時なのニャ…。


「次の焼却まであと二時間か…。書類整理でもしておくか」


あと二時間!

時間がないニャ。シリルじゃアイツを倒せニャいし…。

そうニャ!

誰かに荷物を取ってって頼めばいいニャ!

誰か手伝ってくれそうな人…。

街の人はダメそうニャ。あとは…そうニャ!レイムなら助けてくれるニャ!

そうと決まればレイムの所に行くニャ!

シリルはロムレスに向かって走り始める。

暫く進むと小さな川が見えてきた。

ここで水分補給していくニャ。

そのとき、焼き魚の良い匂いがしてくる。

匂いを辿っていくと、一人で魚を食べる男がいた。

美味しそうな匂いの中に、僅かだが人の血の匂いが混じっていた。

その手に血の匂いがこびりつくほど、彼は人をあやめている。

この男は危ない。シリルの本能が告げていた。

しかし、その目に映る魚を欲する自分もいた。

そのとき、切れ長の瞳がシリルを捉える。


「ん?野良のキャトリアか?珍しいな」


よだれを垂らして眺めるシリルを見かねて、焼いていたもう一匹の魚を差し出す。


「…食べるか?」

「いいのニャ!ありがとニャ!」

「うわっ!喋った!」

「シリルは喋れるニャよ」


シリルは夢中になって魚を食べ尽くすと、げぷっと満足そうに横になる。

悪い人じゃなかったニャ。良い人だったニャ。

前足を使って顔を洗っていると、男が尋ねる。


「シリルはどこから来たんだ?」

「ゲルダってところニャ」


答えてから我に返るシリル。

すっかり元の目的を忘れていた。


「ハッ!そうニャ!早くロムレスに行かなきゃニャ」

「ロムレスに?なんで?」

「ゼインの荷物が燃やされる前に、レイムに助けてもらうニャ!」

「レイムって、ロムレスの王子様の?知り合いなの?」

「そうニャ!レイムとは仲良しニャ」

「でも、次の焼却までに行って戻って来れないでしょ」


言われてみれば、ロムレスからここまで二週間以上経ってるニャ。

二時間で行って帰ってくるなんて無理だったニャ…。


「そういえばそうニャ…。どうしたらいいニャ」

「ゼインってのはシリルの飼い主?」

「違うニャ!むしろシリルがゼインの世話をしてあげてるニャ。代わりにご飯はもらってるけどニャ」


男はフッと笑う。

それは飼い主だと思ったが黙っておこう。


「なるほどね。俺が手伝ってあげてもいいけど」

「ニャ!?」

「代わりに俺の頼み聞いてくれる?」

「シリルにできることかニャ…?」

「もちろん。その肉球を触らせて」

「…そんなことでいいニャ?」

「ああ、一度キャトリアの肉球を触ってみたかったんだよね」


男はシリルを抱っこすると、その前足を優しく触る。


「おぉ!ぷにぷにしてる!気持ちいい…!」

「くすぐったいニャ」

「キャトリアをお迎えしたいって言ってた人の気持ちがようやく分かったよ。じゃあ、次は俺が頼みを聞く番だな」

「ありがとニャ!そういえば名前聞いてなかったニャ!」

「ああ、ごめん。俺はリクだ。よろしく」

「リク、よろしくニャ!場所、こっちニャ!」

「大丈夫、場所は知ってる」


そう言うと、リクは火の後始末を済ませる。

そして、シリルを肩に乗せる。


「ニャ?」

「乗せた方が速いからさ」


リクはシリルが来た道を迷わず走り始める。

は、速すぎるニャ!

シリルはリクの肩に必死にしがみつく。

あっという間に小屋まで戻ってきた。


「中に守り人が一人いるニャ」

「分かった」


リクは扉に小石を投げる。

不審に思った見張りが外に出てくる。

その背後に忍び寄ったリクが、守り人の首に手刀を叩き込む。

気絶した守り人を小屋の中に入れる。


「リク、強いニャ」

「まあ、それなりにはね。それで、ゼインの荷物ってどれ?」


棚の最上段にゼインのかばんと雷魔剣が置かれていた。


「あ、多分それニャ!」

「これね」


リクは鞄を取って、シリルに中身を見せる。


「これで合ってる?」

「合ってるニャ!」


鞄の中にあったテオスの欠片に目を見張る。

まさかこんな所にあるなんて。


「これ、どこで手に入れたか知ってる?」

「んーと、誰かから渡されたとか言ってたニャ」

「へえ。何か俺もゼインに会ってみたくなってきたよ」

「ニャ?」


笑みを浮かべるリクをシリルは不思議そうに眺める。

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