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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第61話 女牢 (1)

指定の白服に着替えさせられ、檻が並べられている場所に連れてこられたログ。

こんな所で暮らすのか…。

どこの檻の中を見ても女性ばかりだ。

泣いてる人もいれば、寝てる人もいる。誰もいない檻もいくつかあった。

通り過ぎようとした檻から少女の声が聞こえてきた。


「おい、アイミー。暇だ。何か話でもしてくれ」

「エフィちゃん、ゴメンね。この子をお部屋に連れて行かないとだから。それに私、この後予定あるのよねー」

「なら、そいつを私の部屋に寄越せ」

「え、でもぉ…」

「代わりにお前が業務中にサボってることはエンキに言わないでおいてやる」

「もう、しょうがないなあ」


この物言い、この中にいる人の方がアイミーより偉いのかな?

ここは捕まえられた人の場所だと思ってたけど、そういうわけでもないのか。

中にいる人は何者なんだろう。

電灯の光が弱く、檻の中は薄暗い。そこにどんな人がいるか分からなかった。

アイミーが檻の扉を開ける。

中に入ると、暗闇の中に少女が浮かび上がってくる。

話しぶりからして、もっと大人の女性だと思ったけど、思ったより幼い。

銀髪の髪が暗がりの部屋で光って見えた。


「じゃあ、エフィちゃん。あと、よろしくー。ログちゃんもバイバイ」


そう言うとアイミーは手を振って立ち去った。

部屋はかなり狭い。

生活に必要な最低限の物が詰め込まれているが、ここで二人で過ごすにはかなり窮屈だろう。

エフィは小さな椅子に座って、あかい瞳でログを観察するように見つめる。


「私はエフィだ。君の名前は?」

「ログウェルです」

「ログウェルか。長いな。ログでいいか」

「あ、はい。そう呼ばれることの方が多いので」

「そうか、これからよろしく頼む。暫く人と話してなかったからな。無理言って来てもらって悪いな」


良かった。

ワガママな人なのかと思ったけど、思ったよりまともそうな人だ。


「今、思ったよりまともそうだって思ったな?」

「あ、いや…。そ、それよりここはどういう場所なんですか?」

「そうかしこまるな。敬称も敬語もいらない。ここがどういう場所か…。さあ、私も詳しく知らない。食事がタダで出てくる」

「それだけ…?」

「ああ、それだけだ」


至って真面目な顔でエフィは答える。

冗談で言ってるわけじゃなさそうだ。

でも、ここがそんな善良な施設には思えないけど…。


「エフィ…は、ここに来て長いの?」

「まあ、そうだな」

「いつからいるの?」

「さあ、もう覚えてないな」


小さい頃からここにいたってことかな。


「それより外の話を聞かせてくれ。アイミーは色恋の話しかしないし、前にいたのは無口な奴だったからな」


僕の前にも誰かいたのだろうか。

その人はここを出たってことか。頃合いをみて聞いてみよう。

それからは僕の生い立ちやベオロク様の試練のことをエフィに話した。


「やはり外の話は面白いな。本では得られないものだ」


エフィは大きな欠伸あくびをする。


「さて、そろそろ寝るか」

「あ、うん」


エフィは下段のベッドに潜り込んだ。

彼女のテンポはなかなか掴めないけど、悪い人ではなさそうだ。

ここがどういう場所なのかまだ分からないままだけど。

明日、ゼインと話せるかな。

完全に男女別だったらどうしよう。

ゼインならきっと一人でも外に出れる。

でも、僕は一人でここから脱出できる気がしない。

いやいや、弱気になっちゃダメだ。

試練の間からも脱出できたんだ。きっとどうにかなる。

ゼインだって同じように考えてるはずだ。

早く休んで明日に備えよう。

腹の虫が大きな声を上げる。お腹空いたなあ。

ベッドの下からはエフィのいびきが聞こえてきた。



「痛っ!」


ログは上段のベッドから勢いよく落ちる。その衝撃で目が覚めた。

顔を床につけたまま、あまりの痛みで起き上がれないログ。

それを見たエフィが呟いた。


「…今日から下で寝るか?」

「…ありがとう」


指定の時間になると、檻が開けられて食堂に行くことが許された。

食堂に行くと簡素な食事が配られた。

期待してなかったけど、素朴な内容だった。

それでも昨日からご飯をろくに食べていなかったから、空腹に優しい味が沁み渡る。

肉!?

巨大な肉の塊が目に入ってくる。配膳されていたのはエフィのお盆だった。

周りの人も羨ましそうな表情で眺めている。


「ログも食べるか?」


ログは生唾を飲み込む。

箸で簡単に切れるほどの柔らかい肉を口に含む。

肉汁が口いっぱいに広がり、その肉厚さに相反する柔らかさで、噛む間もなく溶けていってしまった。


「美味しい…!」


エフィはフォークを大胆に刺すと大きな口を開く。そして、次々と肉を口の中に放り込んでいった。

あっという間に完食し終えるエフィ。

丸く膨らんだお腹をさすりながら席を立つ。


「じゃあ、私は先に戻っている」

「あ、あの、自由時間の間にこの場所を案内してもらえない?」

「断る」


え…。

まさか断られるとは思わなかった。

目を丸くするログにエフィは言葉を付け足す。


「誤解がないように言っておくが、私はここと監房しか知らない。それ以外の場所に行くことはないからな」

「え、ずっと?」

「ああ、私は出不精でぶしょうなんだ」


しょうがない。

ログは一人食堂を出る。

出て右に曲がると医務室があった。

それ以外には武道場があるだけだった。

施設としてはあまり広くない。ほとんどの場所を監房地に割り当てているようだし、ここは地下なのだから当然か。

どうやら他の場所は出入り禁止らしい。

行動できる範囲はかなり狭い。

ゼインがいる場所には行けなさそうだ。

どうしよう。

今は八時半。

食事時間として、一時間は自由に行動していいらしい。あと三十分は時間がある。

でも、このまま一人でいても居心地が悪いし、ひとまず部屋に戻ろう。

もう少しエフィからここの話を聞きたい。

ログが戻ると、エフィは読んでいた本を閉じる。


「お、戻ってきたな」

「エフィ、この場所についてもっと教えて欲しいんだけど」

「その話は後だ。また外の話をしてくれ」


エフィは目を輝かせて、僕の話を待ち望んでいた。

うーん、仕方ない。

ログはゼインとの旅の話をし始めると、檻の前に守り人がやってきた。


「七〇六三番出ろ。お前、勤めを終えてないだろ」

「え、僕?」

「そうだ、早くしろ」


勤めって何だろう。

何か労働が義務付けられてるのか?

そんな説明受けてないけど、逆らうわけにもいかない。

ログが立ち上がろうとした時、エフィが口を開く。


「今、ログは私と話している」

「しかし…」

「何だ?私に口答えか?」

「も、申し訳ありません…!」


守り人は最初の威厳を忘れ、慌ただしく立ち去って行った。

どうやらエフィは特別な存在のようだ。

この子は一体何者なんだ?

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